図書室に通う日々が、ゆっくりと、でも確実に日常に溶け込んでいった。
気がつけば私は、授業の終わるチャイムが鳴るたびに、自然と机の上を片づけていた。
行き先は、あの静かな部屋――そして、御影 湊の隣。
図書室のドアを開けると、彼はすでに椅子に座っていて、こちらを見ていた。
彼は少し笑ってそう言ったけど、なんとなく目元が曇って見えた。
……気のせい、だと思った。
唐突な質問。けれど、私はすぐに答えられなかった。
なにになりたい、だなんて。
私には、もう“その先”が、ほとんど残っていない。
彼はそれ以上、なにも聞かなかった。
いつものように、無理に笑い飛ばすわけでもなく、ただ静かにうなずいた。
――それが、少しだけ、嬉しかった。
私が言わなかったことを、無理に引き出そうとはしない。
黙っていても、そこにいてくれる。
そういう優しさに、私は慣れていなかった。
彼は苦笑いしながらも、鞄から何かを取り出した。
それは、1枚の写真だった。
そこに写っていたのは、ふわふわの長毛種の白猫。少し眠たそうな目をしていた。
ぽつりと漏らした言葉に、彼が目を見開く。
くだらない。けれど、どこか心があたたかくなる。
その瞬間、私は少しだけ“生きていたい”と思った。
あと一年しかない命でも――
この人と笑い合えるなら、もう少しだけ、時間が欲しいと願ってしまった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。