俺は震える手で、自分の胸についた手形に触れた。
汚い? いや、美しい。
これは彼女が俺に触れた証拠だ。
俺は無意識に口走っていた。
声が震えていないか心配だったけれど、意外にも低く、落ち着いた声が出た。
彼女は目を丸くして驚いている。
分かってない。シャツの話なんかしてない。
君は今、俺の心臓に直接、名前を書いたんだ。
俺は嘘をついて笑った。
彼女が安心したように「もう、驚かせないでよー!」と笑う。
そう言って、彼女はゴヌが消えた方向へ走っていった。
その後ろ姿を見送りながら、俺は胸元の手形を愛おしそうに撫でた。
このシャツはもう洗わない。
いや、洗えない。
彼女が俺を捕まえた証拠だから。
あなた、あなた。
君が俺に印をつけたんだ。君が俺を汚したんだ。
だったら、君にも責任があるよね?
俺の世界は、この日、この瞬間から、君のためだけに回り始めた。
君がどんなに嫌がっても、俺はこの刻印を背負って、死ぬまで君につきまとう。
だってこれは君が俺にかけた、「愛」という名の呪いなんだから。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!