はる蘭
春千夜BIRTHDAY
7/3 誕生日おめでとう!!
最後の世界線
解釈違いの方はそっと閉じてください
1ヶ月後に恋人の誕生日がある。そしてその贈り物について俺はとても悩んでいた。
あいつって何がほしいんだろう?マイキーの写真しか思い付かない。だって春千夜は身に付けるものは決まっているし、それが使えなくなるまで使う。
そもそもあまり物に欲がないので、あれ欲しいこれ欲しいとかを聞かない。食べ物はまだ春千夜の基準が分からないので却下だし…
2週間後
三途宅
「ねぇ、誕生日何欲しい?」
「それ本人に聞くか?」
何時間、何日考えても分からなかった俺は直接本人に聞くことにした。
「だって何あげたらいいか分からないから」
「…そうだなぁ」
「…」
「特にないな」
「はぁ~?」
やっぱりか。予想通りの答えに肩をおとす。
「分かってはいたけど…ないの?本当に?」
「んなこと言われても、ねぇもんはねぇし」
「ん~」
本人がいらないって言ってるんだから別にあげなくてもいいんじゃ?そう思うも、いややっぱり何かはあげたいなと思い直す。
「プレゼントは俺?」
「無理」
「無理は酷くね」
冗談で言ったが顔に皺を寄せて拒否された。普通に傷付いた。取り敢えず思い付いたこと全部言おう。
「手作りマフラー」
「お前作れるの?」
「いや?」
「駄目じゃねぇか」
「プロテイン」
「俺は竜胆でも鶴蝶でもない」
「マイキーの写真!」
「ッ、、もう俺が撮ってるのが山程ある」
「キモ」
「は?」
思ったことを言ったら凄い怖い顔でこちらを見つめてくる。何だよ、盗撮キモいだろ。しかもコイツ絶対マイキーの写真だけで1000枚以上は持ってるだろ。キモ。
「んー、他は…」
もう思い付くことがない。どうしたらいいか…。
「…じゃあ」
「?」
「ーーーーーーー」
「!!」
誕生日当日
「誕生日おめでとう」
「あんがと」
「これで良かったのかよ、本当に」
「満足だ」
春千夜があの時言ったもの、それは俺の手作り料理だった。
ーーー
「手作り料理ぃ?」
「あぁ」
「本当に?そんなんでいいの?」
「そんなんって言えるくらいお前料理できんのか?」
「お米なら炊けるよ」
「それ以外は?」
「ない」
「だろ」
フッ、とバカにした笑いをこぼし、水を飲んでいるコイツに腹が立ったので脇腹をツンと指で突いてみた。
「!、お、まえ、危ねぇだろ!もうちょっとで水溢すところだったんだぞ!」
「お前が馬鹿にするからだろ」
「事実だろ」
股間に手を伸ばしぎゅっと軽く握ってやる。
「い、!お、ま、え、!まじでっ!」
「で、何で俺の手作り料理なんか食べたいの?」
「このまま話し続けるつもりかよ」
俺は春千夜の股関に手を握ったまま話しかける。
「で?」
「はぁ…。食べたいだろ。好きなやつの作った料理」
「…そんな理由?」
「悪かったな」
「いや、そうじゃなくて…」
可愛いい、そう思った。何だよ。好きなやつの作った料理食べたいって。それならいくらでも作ってやるよ。けど
「でも、俺が料理したらキッチンが悲惨なことになるし、食材は食材だったものになるよ?」
料理したことは何度かあるがその度に竜胆に、兄ちゃん料理するの禁止!!とキッチンから追い出されてしまっていたので、基本竜胆が作るか、配達で頼むかだった。
春千夜と暮らし始めてからも料理は春千夜の担当だったので、俺はキッチンに立ったことがない。
「レシピ見たら作れるだろ」
「どうだろ。まぁ頑張る」
「ん。楽しみにしとく」
ーーー
てな感じで俺が手作り料理を振る舞うことになったのだ。
一緒に椅子に座って手を合わせる
「「いただきます」」
「…ん!美味しい」
今まで指で数えれるくらいでしか見たことのない、優しく微笑んでいる顔で言われ、あぁ作ってよかったな、と俺も自然と笑顔になった。
「「ご馳走さまでした」」
綺麗に全部食べてくれた春千夜を見て嬉しく思いながら、食器を片付ける。
「片付けまでさせて悪い」
「誕生日なんだしいいんだよ」
仕事ではイキり散らかしてよく炎上とかしてるけど、プライベートではわりと優しい春千夜。付き合う前はマイキー狂いの頭のおかしい奴だと思ってたけどな。
「蘭、今日はありがとな」
「…ふ、どういたしまして」
来年は何を作ってやろうかな。
終わり
蘭が何を作ったかは皆さんのご想像にお任せします。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。