第5話

誕生日
9
2024/05/25 15:00
梵天
付き合ってます
解釈違いを起こしたらバックしてください







『兄貴誕生日おめでと』

5月26日0時丁度にピコンと音を鳴らし震えたスマホの画面を見てみると、竜胆からお祝いのメッセージが届いていた。

『ありがと』

とだけ返す。俺が何故こんな時間まで起きているのか。自分の誕生日だから?皆からメッセージが届くのを楽しみにしているから?違う。いや完全に違う訳でもないけれど。
理由は1つ。恋人からのメッセージを待っているのだ。俺の恋人は三途春千夜、梵天のNo.2だ。春千夜と付き合ってから初めての俺の誕生日。本当は一緒に過ごしたかったが、誘う前に春千夜の出張が決まってしまったので誘えなかった。

00:01

スマホのデジタル時計が動く。
…連絡、こないな。




「…なんっでこねぇんだよ!」

時計はもう午前1時を指していた。
1時間待った。1時間も待ったのだ、俺が。普通恋人にメッセージとか送らないか?今日職場で会えるならまだしも、会えないんだよ?

「チッ、もう寝よ」

スマホをベッドサイドに置いて、布団に潜る。
何なんだよ、期待して損した。確かに、連絡くれだなんて言ってないし、誕生日なんて拘る歳でもないけれど。でも、期待くらいするじゃんか。付き合ってから初めての誕生日なんだし。

ブー ブー  ブー ブー

「ッ誰だよ。こんな時間に」

誰からか電話が掛かってきた。苛立ちながら布団から出る。九井か?だったら仕事か、誰かに投げようかな。そう思いながら画面を見た。

「!!」

画面には『三途春千夜』と書いてあった。急いで電話を取る。

『も「もしもし」しもし』

嬉しすぎるあまり言葉を被せてしまった。ヤバイ、恥ずかしい。

「…」

『…蘭?』

「なに」

少し言い方がキツくなったが仕方がない。

『誕生日おめでと』

「…ありがと」

2秒程間を空けてから返事をする。すると、どうやら俺の不機嫌を察したらしい春千夜が聞いてくる。

『今日、てか昨日か。何かあったのか?』

「別に」

『いや絶対なんかあっただろ』

「ないって」

少しイライラしてしまう。20秒程前は喜んでいたのに。

『じゃあ何でそんな不機嫌なんだよ』

「そんな大した理由じゃないよ」

『ふーん…まぁお前が話したくないなら別にいい』

「ん」

コイツがしつこく聞いてくる人間じゃなくてよかった。あと2回聞かれてたらぶちギレてた。

『…寝てると思った』

「寝ようとしてたところにお前が電話掛けてきたんだろ」

『そうだったのか?悪いな、寝るとこ邪魔して』

「全くだよ」

寝てると思ってたのに電話掛けてきてくれたのか、なんて少し嬉しくなった。

『本当は0時丁度に電話掛けようと思ったんだけどよ、取引先のジジイが中々帰らしてくれなくてよ』

「…そうだったの?」

『おう。んで今やっとホテル着いたからお前に電話した』

「ふーん。そっか…ははっ、そっか!」

何だ、そうだったのか。本当は0時丁度にって、思ってたんだ。…嬉しい。誕生日とか記念日とかに興味なさそうな春千夜が、誕生日を祝おうと。

『どうした急に』

「んー?べっつにー?」

『んだよ、俺が連絡しなかったらから拗ねてたのかよ?』

「はぁ?別にそう言う訳じゃないし!」

『へぇ?ま、いいよ』

図星を突かれて思わず咄嗟に言い返してしまった。これでは、はいそうですと言っているようなもんなのに。案の定面白がってるような声で返事されたし。

「本当にそう言うのじゃないからな」

『はっ、可愛いなぁ。帰ったら夜にたくさん愛してやるよ』

「…夜だけかよ」

夜だけなのかよ。朝と昼は愛してくれねえのか、このケチ。

『……今日の夕方には帰る』

「え」

ちょっと待って、本来帰ってくるのって明後日だよな?それを今日??無理じゃね?

『夜、準備しとけ。あと覚悟もしとけ。俺の家で。それじゃあ』

「おい、まっ」

ツーツーと電話が切れた音が俺の耳が拾う。え?まじで帰ってくるの?てか俺墓穴掘った??嘘だろ、本気で言ってんの?頭が軽くパニック状態になっている俺に、スマホがピコンと連絡を知らせる。
見てみると春千夜からだった。

『今日、明日と明後日休むって九井に言っとけ』

あ…終わったわ




終わり

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