目覚めた瞬間、
天国にきてしまったのかと、
そう思った。
自分が天国などいけるはずもないのに。
あまりにも美しいその姿が、
この世のものとは思えなくて。
真っ赤な花畑の中を、
あなたがゆっくりと歩いている。
小さく口を動かしながら
儚くて、泣きたくなるような歌声を紡いで。
何が起きているのか分からなかった。
自分にあったはずの傷は
すっかりなくなっていた。
周りを見渡せば
あんなにいたはずのXはみんな倒れていて。
まるで世界が眠ってしまったような。
そんな感覚に陥る。
あなたが手がジョンハニヒョンに触れる。
その瞬間、ヒョンの体から傷が消えて。
代わりにあなたの服に
じんわりと血が滲む。
そうやって、みんなに触れていくあなた。
最後にこちらにやってくる。
あなたの手が伸びた先には、
もう息もしていないミンギュの体があった。
俺は止めなければいけなかった。
だって、もうあなたはボロボロで
服は真っ赤に染まっていたから。
だけど、だめだとは言えなかった。
だってミンギュが。
このままじゃ本当に死んでしまう。
だけどあなたは何の躊躇もなく、
ミンギュの傷に触れた。
ミンギュの傷が一瞬にして消える。
その光景は
美しくて、どこか不気味で。
その瞬間、あなたの歌声がふっと止んだ。
力が抜けたように、
体が崩れ落ちていく。
咄嗟に体を抱き止める。
先まで何ともなさそうに見えていたあなたは、
役目を終えて、
一気に痛みを背負ったみたいにぐったりとしていて。
咳をした拍子に
小さな口から血が溢れる。
俺の腕の中でか細く息を繰り返すその体が、
あまりにも軽くて。
罪悪感が膨らんでいく。
こんなことさせるべきじゃなかったのに。
俺たちの傷をあなたが
引き受ける必要なんてどこにもなかった。
ごめん、あなた。
ごめんね。
傷が消えて目を覚ましたみんなが
あなたの周りに集まってくる。
みんな見ていたわけじゃないけど
分かっていた。
あなたが俺たちを助けてくれたんだって。
もう誰も、あなたが裏切ったなんて
思えなかった。
ぐったりとした体から
とめどなく血が溢れ出る。
必死に傷口を押さえる。
小さな体には耐えきれないほどの傷だった。
もう助からないのでは、と
考えてしまうほど。
スングァンが震える手で傷を確認して、
止血しようとするけど。
対して意味をなさないそれに、
スングァンの目から
涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
耐えきれなくなったスニョアが
逃げ出そうとしていた父親を捕まえて
殴りかかった。
今にも殺す勢いの形相を見た父親は
それでも笑っていた。
まるで当たり前だと言うような口調に
怒りと、後悔が混ざって。
空気が冷えていくのが分かった。
俺たちはどこかで安心していたんだ。
あなたが自分は死なないと言ったことに、
怪我をして傷ついても、
出会ったときのように
そのうち血が止まって、
きっと大丈夫になるって、勝手に。
スニョアの声が低く響く。
その目には
明らかな殺意が宿っていた。
死ぬ、という言葉に理性を失うのがわかった。
父親に刃が降りおろされる。
その瞬間、
クプスヒョンの声が
スニョアの動きを止めた。
その声を聞けば、
ヒョンがどんな思いで
そう言ったのか分かった。
悔しくて、もどかしいけど。
今はこうするしかないんだ。
父親の後ろに回り込んでいた
ジュナが父親を気絶させる。
ジュナが泣きそうな顔で
俺の腕の中のあなたを見る。
俺はあなたの体温を確かめるように
ぎゅっと抱きしめる。
白かった服は真っ赤に染まって。
手にべっとりと血がつく。
どんな手を使っても、
絶対に助けるから。
だからもう少しだけ耐えていて、あなた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。