辰哉side
家の留守は翔太達に任せて、俺と照はあなたの下の名前の捜索へ
何かあってはダメだからと警察の方から「行動するなら二人でお願いします」「何かあればすぐに連絡を」と告げられた
あなたの下の名前が誘拐されて早半日
もし発作でも起こしてしまっていたら確実に命が危ない
近くの自販機で買ったコーヒーを投げてきた照
二人とも目の下に薄い隈をつくっていた
俺たちは一気にコーヒーを飲み干して缶を捨て、近くの空き家を手当たり次第探した
ここにいなかったらもう探すあてはない
缶コーヒーを飲んだのは朝方だったのに、もう陽は紅に燃えて沈みかけていた
足跡を立てないように壊れた玄関を進む
ギィィ
廊下…オンボロかよ…
空き家だから当たり前だけどさ…
ガコンッ
人がいる!
音を聞いた照はすぐに外へ出て警察に連絡していた
ボロボロに壊れた家の中で、一つだけ頑丈にに閉ざされた扉があった
ここか…
照とアイコンタクトで「開けるぞ」と合図を送る
キィィ…
不快な音がして開いたその扉
中は窓ひとつない真っ白な部屋だった
他の部屋や廊下などからは想像できないほど綺麗だった
俺の目に真っ先に入ったのは遠くの方で虚な目をして意識を飛ばしかけている彼女の姿とそれを見てほくそ笑んでいるガタイのいい男の姿だった
そう呼び止めた時にはもうあなたの下の名前は意識を失っていて、男は愛おしそうにあなたの下の名前の頬をなぞった
狂ってる…
俺が警察と話している間、照はあなたの下の名前の元を離れなかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。