第37話

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2026/02/22 23:13 更新
Jungwong  side
ソヌ
ソヌ
ふぅふぅ
さっきのキスが苦しかったのを僕に悟られたくない
のか必死に隠すように肩で息をして、目を伏せながら
涙で濡れた睫毛の影を涙袋の上に落とす。

クシャクシャになった前髪とか、乱れた服とか、
下がった眉毛も、赤くなった頬も、その全てが。
僕が我慢していた欲求を何割増しにもしていく。

でも、まだ駄目だ。

こういうのは無理矢理してやる方がいい時と、
無理矢理は絶対ダメな時がある。今はダメだ。
今は心が砕けたばかりだから、甘やかさないと。

甘える相手を、この人に見つけさせなければいけない。
ジョンウォン
ジョンウォン
ほら、捕まってください。
ソヌ
ソヌ
……ふぅ…………、…ふぅ
ジョンウォン
ジョンウォン
ソヌヒョン。
ソヌヒョンは、頑なに僕に手を伸ばそうとしない。

それどころか顔を見てくれなくて、僕の中の苛立ちや
悲しみ、悔しさみたいな負の感情がふつふつと煮立つ。
まだ、心の中にニキが残ってるから、こうなるんだ。

ついに我慢出来なくなって、ソヌヒョンの手を勝手に
掴みあげてそのまま僕の首に回す。そのまま離れない
ように抱えあげて、ゆっくりベッドの上に下ろした。

そうして、そっとソヌヒョンのシャツに手を伸ばす。
首元から一つ一つ丁寧に下まで外している間も、
決してソヌヒョンの顔から目を離さないまま。

プツン、プツンと段階を経てどんどん無防備になる。
全て外し終わった後はすぐに脱がせるように、
ベルトも外して、ズボンのボタンを外して。

チャックも、下まできっちり下ろして。

自身も着ていたシャツを脱いで、
適当にベッドの下に放り投げて。
そうして獣みたいに、またソヌヒョンに覆い被さる。
ジョンウォン
ジョンウォン
…ソヌヒョン。
ソヌ
ソヌ
………。
何、その諦めたような顔。

どうして僕の顔を見ないの。
慰めてるんだよ、今、僕はアンタを。

アンタがどうしようもなくて、泣かされたりするから。
可哀想だねって振られたのに手を伸ばしてるんだよ。

なのにさ。
なんで。なんでなんだよ。

なんで、僕を見てくれないの。
あぁ、ムカつく。ムカつく。ムカつく。

思わず滲んで零れそうになった涙を隠すみたいに、
唇を重ねた。舌で口を開けるように催促すれば、
案外簡単に口を開いてくれて、すぐに深くなる。

お互い虚しいですね、僕達。
想いを寄せる人からの愛に飢えて、涙を流して。
慰め合っても満たされないのが、なお惨めで。

ほんと、どうしようもないですね、僕達は。
でも、どうしようもない者同士、助け合いましょう。
僕がきっと、貴方を満たしてあげますからね。
ジョンウォン
ジョンウォン
大好きです、ソヌヒョン。
首筋に、ちゅっと音を立てて赤く痕を残す。
白くて綺麗な肌に鮮やかな赤が映えて、綺麗だ。

以前、簡単に触れられていた時を思い出させる体温が
酷く心地よくて、思わずうっとりしてしまう。
体温に包まれたくて、必要以上に身体をくっつけて。

時折ソヌヒョンの顔を伺いながら、ゆっくりゆっくり
体に舌を滑らせる。
ソヌ
ソヌ
…、……ジョン、ウォンく…、
サラッと、不意に髪を撫でられる。

ぱっと顔をあげると笑ってもいない、泣いてもいない、
なんとも言えない顔で僕を見ていた。その表情は
不思議と僕にこのまま続けない方がいいかもしれないと
思わせる。

何を考えてるのか汲み取るために、呼ばれた名前に
反応した風に見せかけて、また顔をソヌヒョンの顔の
位置に合わせる。
ジョンウォン
ジョンウォン
なんですか、ソヌヒョン。
ソヌ
ソヌ
……僕、本当に捨てられたの?
そんなの、僕が知るわけないだろ。
なんでそんなことを僕に聞くんだよ。

純粋にそう思ってしまって、言葉が出ない。
ソヌヒョンは黙り込む僕の頬を撫でながら、
僕が答えるのを待っているようだった。

実際、ニキはソヌヒョンを置いて出ていった。
どこにいるのかも分からない、連絡もつかない。
それはもう、切られたも同然なんじゃないのか。

仮に捨てられていなかったとして、
こんな寂しがり屋の人を一人置いていく判断は、
ソヌヒョンの事を全く分かってない人間がする事だ。

こんな風に泣かしてるんじゃ、渡せない。
ジョンウォン
ジョンウォン
そうじゃなかったら、
今ここにいないと思いますよ。
ソヌ
ソヌ
……そうだよね。
ジョンウォン
ジョンウォン
まだニキの事、
考えてるんじゃないですよね?
ソヌ
ソヌ
……………。
ジョンウォン
ジョンウォン
いい加減にして下さい。
ついにずっと取り繕っていた仮面が外れてしまう。

だってもう我慢できない。僕は散々、散々我慢した。
貴方の幸せを願って、ぽっと出のお坊ちゃんに取られ
ようが我慢して、背中を押して、サポートまでした。

なのに結果がこれなら、もういいじゃないか。
もう僕が我慢する理由が分からないし、アンタも
それでもニキにこだわる意味がわからない。

全部、分からないんだよ。
どうでもいいから、僕のものになって。

もはやアンタの気持ちとかどうでもいい。
今後がどうとか、ニキがどうとか、心底どうでもいい。

僕は、今すぐアンタが欲しい。

怒ってるんですか。僕が可愛い隣人でいないから。
僕が丸め込もうとしてる事に怒ってるんですか。

どうして焦らすんですか。
どうしてそんな目で僕を見るんですか。

どうして。どうして。
ジョンウォン
ジョンウォン
ニキは、もう来ません。
アンタなんてどうでもいいんです。
ジョンウォン
ジョンウォン
分かってるくせに、希望を持つから
そうやってボロボロに傷付くんですよ。
ジョンウォン
ジョンウォン
もういいでしょう?
ソヌ
ソヌ
ジョンウォン君。
ジョンウォン
ジョンウォン
今アンタを好きなのは僕だけだ!!
ジョンウォン
ジョンウォン
アンタの寂しさも欲も、
全部埋められるのは僕だ!
ジョンウォン
ジョンウォン
だから、受け入れて…!
ジョンウォン
ジョンウォン
僕と一緒になって!!
あぁ、本当に虚しいな。
僕って、多分世界一虚しい人間だ。

僕の言葉を聞いたソヌヒョンは、納得したような顔で
じっと僕の顔を見つめて、そっと僕の首に腕を回す。

涙が我慢出来なくて、ソヌヒョンの頬に落ちる。
ソヌヒョンが涙を拭ってくれて、そのままグイッと
引き寄せられる。

我慢していた色んなことが涙になって、
ボロボロと枕を濡らしていった。
ソヌ
ソヌ
そんなこと、
別に言いたくなかったよね。
ソヌ
ソヌ
僕が馬鹿で間抜けだから、
そんな事言わせちゃったんだよね。
ソヌ
ソヌ
ごめんね、ジョンウォン君。
ソヌ
ソヌ
本当に、ごめんね。
ジョンウォン
ジョンウォン
…っ……グスッ
あぁ、惨めだ。惨めだ。
これはソヌヒョンの慈悲だ。

結局、ソヌヒョンの愛は手に入らない。
僕もそれはずっと分かってる事だった。

なのに足掻いてしまった。欲してしまった。
どうしても、貴方が欲しくて。

貴方の、心が欲しかった。

すっとできた数センチの隙間でお互い見つめ合う。
そうしてソヌヒョンからすっと僕の顔を引き寄せて、
今日で一番優しいキスを交わした。
ソヌ
ソヌ
ねぇでもさ?こんなの、僕達らしくない。
僕たちはもっと、柔らかい関係だよ。
ソヌ
ソヌ
ジョンウォン君の言う通り、もうニキ君は
いないし、来てもくれないと思う。
ソヌ
ソヌ
だから、もう僕達二人だ、ずっと。
ソヌ
ソヌ
ゆっくり進んでいこう?
ジョンウォン君、きっと後悔するから。
ジョンウォン
ジョンウォン
……………離れませんか。
ソヌ
ソヌ
うん。
ジョンウォン
ジョンウォン
もう、どこにも行かない?


ソヌ
ソヌ
うん。



嘘つき。

それでも嬉しくて、また涙が溢れる。
そうして僕からも強く強く抱きしめて、
束の間のこの人の体温を頭に焼き付けた。
Sunoo   side
ジョンウォン
ジョンウォン
首、痕付けちゃいました。
そう言って申し訳なさそうに僕の首を撫でた。

ベッドを降りて、すぐ隣に座り込み、
シャツのボタンを留め直す僕の顔色を伺っている。

悪いことしちゃった猫ちゃんみたい、可愛いな。

僕が知ってるジョンウォン君の影が薄らと戻ってきて、
ようやく上がっていた気持ちが落ち着いてくる。
ソヌ
ソヌ
いいよ、痕くらい。
すぐ消えるよ、大丈夫。
ジョンウォン
ジョンウォン
…………。
ジョンウォン
ジョンウォン
じゃあ、
消えたらまた付けていいですか?
ソヌ
ソヌ
え?
ジョンウォン
ジョンウォン
すぐ消えるんでしょう?
そう言って、ムッと不機嫌そうな空気を醸し出す。
その様子も、なんだかすごく可愛く感じて思わず頭に
手を伸ばすと、サッと素早く僕の手を避けた。
ソヌ
ソヌ
あーっ、なんで避けるの?
ジョンウォン
ジョンウォン
……お腹空きました。ご飯作ります。
ソヌ
ソヌ
答えになってなくない?
ジョンウォン君は僕の言葉を無視して立ち上がり、
キッチンに入って、冷蔵庫を開けた。中を物色する
背中がやっぱりいつも通りで、酷く安心する。
ソヌ
ソヌ
………………。
ニキ君は、もういない。

誰が見たってそれはもう明白。
僕は捨てられたんだ。もう、僕はいらない。

酷い遊びだった、全く。
振り回されて振り回されて、大変だった。

それでも、甘い恋愛だった。
甘くて溶けちゃうような経験だった。

いい、経験だった。

次ジェイヒョンに会った時にでも、
出会わせてくれてありがとうの意を込めて、
美味しいお菓子でも渡してみようかな。

あぁ、本当に。
ソヌ
ソヌ
僕も手伝うよ。



最悪な恋愛だった。

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