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第1話

006後 衛拓
106
2025/11/23 10:59 更新
…時は、15年続いた人工天体の人類と、フトゥールムの戦争を終結させた今。
オレはもしも、あなたには大切な人がいるのか。と聞かれたら、こう答える。
"オレに関わってくれた人、全てです"、と。
蒼月 衛人
拓海クン、もう書類は全部書き終わったのかな?
澄野 拓海
あ、蒼月…それは…まあ…
蒼月 衛人
もう、拓海クンは相変わらず醜くて鈍臭いなあ。合意文書はまだ山積みだよ?
澄野 拓海
それを今片付けてるんだよ…
 
澄野は特防隊のリーダーとして、あらゆる仕事をこなさなければいけない。
そうカミュンに言われてから、仕事の量が著しく増えた。
でも全部、オレに押し付けてるだけに過ぎないんだよな…。と思いながら、ハンコを押す、押す、押す。
 
蒼月 衛人
…ねえ、拓海クン。
澄野 拓海
なんだ?
蒼月 衛人
あの日、シオンの異血を吸収した日から、キミのことが___
その時、バンッと勢いよくオレの部屋の扉を開ける音が聞こえた。
雫原 比留子
澄野、大変よ…!!
澄野 拓海
どうした、雫原?
雫原 比留子
人工天体から不審な信号を感知したわ…!もしかしたら、また人類が襲ってくるかもしれない!
澄野 拓海
何ッ!こっちはまだ各地の合意文書を処理してる途中なのに…!
澄野 拓海
蒼月、作戦室に行くぞ!
蒼月 衛人
う、うん!
作戦室に急行すると、そこにはオレ、蒼月、雫原の他に川奈と厄師寺がいた。
厄師寺 猛丸
おっ、澄野、来たか!おせーぞ!
川奈 つばさ
澄野、雫原さんからは聞いてると思うけど、大変なんだよ〜!
澄野 拓海
ご、ごめん…書類を整理してて
蒼月 衛人
でさ、人類が攻めてくるのはいつ頃になりそう?
川奈 つばさ
予想だとあと2日後…!時間ないよ!
澄野 拓海
それは困ったな…
澄野 拓海
まず、今日のうちにフトゥールムの民を地下シェルターへ避難させよう
雫原 比留子
ええ、そうね。残りのメンバーに任せておくわ
澄野 拓海
そして戦略などはオレがカミュンと相談する。食料は…

拓海クンは15年前と変わって心が凛々しく、立派に成長している。だが、ボクはどこが成長しているのだろう。
認識障害もシオンの異血で緩和されているとはいえ、まだ肉塊が人型に成形されたぐらいだ。
人類に対する憎悪も、偽物だったとしてもそれはボクの中で変わらぬ憎悪がある。
そんなボクと違って拓海クンは色々な困難を乗り越えて成長している。そんなキミが眩しくて、強く憧れて…。
…ボクは拓海クンを嫉妬しているのかな?
蒼月 衛人
教えてほしいよ…拓海クン…
そして、2日後。やはり人類は大勢の戦闘用生物を引き連れてやってきた。
澄野 拓海
川奈、迎撃ミサイルを!
川奈 つばさ
うん、今やるね…うっぷ。
川奈 つばさ
3...2...1...発射!
ミサイルはやがて放物線を描いて、空に浮かぶ戦闘機をまとめて倒した。
澄野 拓海
いいぞ!川奈、ありがとう!
その時。

ガキィン!
蒼月 衛人
……ッ!
澄野 拓海
蒼月!って、血が…!
蒼月は突然来た戦闘用生物から澄野を庇った。
蒼月 衛人
ううん、これくらい、大丈夫…だよ…
澄野 拓海
全然大丈夫に見えないぞ!?あ、包帯持ってるから待ってろよ!
蒼月 衛人
うん…でもボクに構わずに、どんどん敵を処理しておいてよ…。
澄野が振り返る先には、まだわらわらと戦闘用生物が待ち構えている。
澄野 拓海
…ごめん、蒼月。
澄野は敵の方向へと走り去っていった。
蒼月 衛人
…はぁ…
蒼月 衛人
血、いっぱい出ちゃってるな…。止血しないと

でも、もしこのまま全部終わりだったら、終わりを迎えられたら、終わりが来たら、どれだけ楽だっただろう。
実は、シオンの異血を吸収した時から、拓海クンの顔だけが少し見えてくるようになってきたんだ。
目は、透き通った紫がかった群青色に、赤いアクセント。まつ毛は両目まっすぐに2本ずつ。それしか見えなかった。
でもそれだけ…それだけ見えるのなら、大きな進歩だ。
蒼月 衛人
このまま目を閉じて、安らかに…死ねたらな…。
澄野 拓海
蒼月!大丈夫か!
澄野 拓海
やっぱり大丈夫じゃないな…!包帯はとりあえず巻いたから、ほら、行くぞ!
と、拓海クンはしゃがんでこちらに背を向けて、おんぶの姿勢を作った。
蒼月 衛人
…!
澄野 拓海
ほら、早く乗れよ。おぶってやるからさ。
蒼月 衛人
うん…
そしてボクは人型の肉塊の拓海クンの背中に乗った。


澄野 拓海
こういうの、前の100日間にもあったなー…
蒼月 衛人
え?どんな時なの?
澄野 拓海
お前が外に出て迷子になって、侵攻生に襲われそうなところをオレらが助けてお前のこと、オレがおぶっていったんだ。
蒼月 衛人
へー…そうなんだ…
澄野 拓海
ところでさ、2日前の蒼月が言いたかったことって、なんだったんだ?
蒼月 衛人
あっ…それは、
蒼月 衛人
いや…なんでもない!
澄野 拓海
ふーん。なんかモヤモヤするけど…
澄野 拓海
…お前は、今、オレのこと、どう見えてるんだ?
蒼月 衛人
え…?
澄野 拓海
だから、お前は今、オレがどんなふうに見えてるんだ?肉塊か?
蒼月 衛人
…うーん…
蒼月 衛人
…拓海クンだけ人型の肉塊で、目だけ見えるようになったよ。シオンの異血のおかげかもしれないね
澄野 拓海
そ、そうなんだ…!うれしい?って言っていいのかな…
蒼月 衛人
ふふふ、それはボクの前だけで言ってね
拓海クンがぱっと笑うと、自分も少し心がふわっと、持ち上げられたような、気持ちがいい感覚になる。
拓海クンはボクの中で太陽みたいな存在だ。
ボクが月なら、拓海クンは太陽。太陽の光があるから、月は光がある。拓海クンが照らしてくれるおかげで、今のボクがある。
蒼月 衛人
拓海クン…ボク、拓海クンのこと…
澄野 拓海
おっ!ついたぞ!学園だ!
澄野 拓海
じゃあここで一旦下ろすな…あとは行けるか?
蒼月 衛人
…うん、行けるよ。ありがとう。
澄野 拓海
これくらい礼には及ばないぞ、じゃあ、お大事に。
蒼月 衛人
じゃあね、拓海クン…。
蒼月 衛人
……
戦いの終わった日から一日後、またオレは事務作業を繰り返す。
ハンコを押す、ハンコを押す、ハンコを押す。作業の繰り返しだ。
今日は隣に蒼月がいない。いつもいたんだけどな…。

澄野 拓海
…ぐあッ!
澄野 拓海
ああ…あああああ…
あの時がフラッシュバックする。カミュンと霧藤が重傷を負ってしまった時。運命の選択の時。
オレは…霧藤…彼女を……
澄野 拓海
はぁ、はぁ、はぁ…
頭がかち割れるように痛い。意識が遠のく。
霧藤 希?
なんで澄野くんは私を助けてくれなかったの?ねえ、ねえ、ねえ。
霧藤 希?
痛いよ、苦しいよ。助けてよ、澄野くん。
霧藤 希?
ねえ、ねえ、
霧藤 希?
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて

澄野 拓海
…っはぁ!
蒼月 衛人
拓海クン、大丈夫?汗びっしょりだよ?
澄野 拓海
蒼月…?傷はどうした?
蒼月 衛人
ああ、結構思ったより軽傷みたいだったよ、だから心配しないで
澄野 拓海
そうか、よかった…
蒼月 衛人
拓海クンさっきからうなされてたけど、あれ何事?
澄野 拓海
ああ、その、霧藤がさ…あの光景が、夢に出てきて
蒼月 衛人
そうか…
蒼月 衛人
希さんはさ、あの時、カミュンを助けてって言ってたよね?だから、そんなに気負う必要はないと思うんだ
澄野 拓海
でも…っ!霧藤を間接的に殺したのはオレなんだぞ…!許されるわけがないだろう!
蒼月 衛人
だから、希さんは多分、自分が助けてもらうことじゃなくて、ボクたちが本当の平和を築くことを望んでるんじゃないかな…。そうじゃなかったらあんなこと言えないよ。
蒼月 衛人
拓海クンが希さんを想う気持ちはわかる。だけど、ボク…ボクたちもいるよ。だから、みんなで背負おうよ。この罪は
本に頼らないありのままの言葉。そう。ボクたちはみな共犯者。共犯者だから___________。
澄野 拓海
……
蒼月 衛人
…拓海クン、涙脆いなあ。32歳になって涙腺が弱くなったのか?
澄野 拓海
うるさい…
澄野 拓海
…あおつき。ん
そういうと、拓海クンはボクに両腕を差し伸べてきた。
そして、ボクはその体をそっと抱きしめた…。
澄野 拓海
やっぱり蒼月、あったかいな…。
太陽は夕方になると沈む。夜に上がるのは月だ。昼間の温かくてやさしい太陽とは違って、とても綺麗で美しい月。
ボクと拓海クンは月と太陽だと言っても、いいんじゃないかな。
蒼月 衛人
ボクもあったかいよ、拓海クン。
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