…時は、15年続いた人工天体の人類と、フトゥールムの戦争を終結させた今。
オレはもしも、あなたには大切な人がいるのか。と聞かれたら、こう答える。
"オレに関わってくれた人、全てです"、と。
澄野は特防隊のリーダーとして、あらゆる仕事をこなさなければいけない。
そうカミュンに言われてから、仕事の量が著しく増えた。
でも全部、オレに押し付けてるだけに過ぎないんだよな…。と思いながら、ハンコを押す、押す、押す。
その時、バンッと勢いよくオレの部屋の扉を開ける音が聞こえた。
作戦室に急行すると、そこにはオレ、蒼月、雫原の他に川奈と厄師寺がいた。
拓海クンは15年前と変わって心が凛々しく、立派に成長している。だが、ボクはどこが成長しているのだろう。
認識障害もシオンの異血で緩和されているとはいえ、まだ肉塊が人型に成形されたぐらいだ。
人類に対する憎悪も、偽物だったとしてもそれはボクの中で変わらぬ憎悪がある。
そんなボクと違って拓海クンは色々な困難を乗り越えて成長している。そんなキミが眩しくて、強く憧れて…。
…ボクは拓海クンを嫉妬しているのかな?
そして、2日後。やはり人類は大勢の戦闘用生物を引き連れてやってきた。
ミサイルはやがて放物線を描いて、空に浮かぶ戦闘機をまとめて倒した。
その時。
ガキィン!
蒼月は突然来た戦闘用生物から澄野を庇った。
澄野が振り返る先には、まだわらわらと戦闘用生物が待ち構えている。
澄野は敵の方向へと走り去っていった。
でも、もしこのまま全部終わりだったら、終わりを迎えられたら、終わりが来たら、どれだけ楽だっただろう。
実は、シオンの異血を吸収した時から、拓海クンの顔だけが少し見えてくるようになってきたんだ。
目は、透き通った紫がかった群青色に、赤いアクセント。まつ毛は両目まっすぐに2本ずつ。それしか見えなかった。
でもそれだけ…それだけ見えるのなら、大きな進歩だ。
と、拓海クンはしゃがんでこちらに背を向けて、おんぶの姿勢を作った。
そしてボクは人型の肉塊の拓海クンの背中に乗った。
拓海クンがぱっと笑うと、自分も少し心がふわっと、持ち上げられたような、気持ちがいい感覚になる。
拓海クンはボクの中で太陽みたいな存在だ。
ボクが月なら、拓海クンは太陽。太陽の光があるから、月は光がある。拓海クンが照らしてくれるおかげで、今のボクがある。
戦いの終わった日から一日後、またオレは事務作業を繰り返す。
ハンコを押す、ハンコを押す、ハンコを押す。作業の繰り返しだ。
今日は隣に蒼月がいない。いつもいたんだけどな…。
あの時がフラッシュバックする。カミュンと霧藤が重傷を負ってしまった時。運命の選択の時。
オレは…霧藤…彼女を……
頭がかち割れるように痛い。意識が遠のく。
本に頼らないありのままの言葉。そう。ボクたちはみな共犯者。共犯者だから___________。
そういうと、拓海クンはボクに両腕を差し伸べてきた。
そして、ボクはその体をそっと抱きしめた…。
太陽は夕方になると沈む。夜に上がるのは月だ。昼間の温かくてやさしい太陽とは違って、とても綺麗で美しい月。
ボクと拓海クンは月と太陽だと言っても、いいんじゃないかな。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。