第19話

倦怠期 今井文也
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2026/06/30 12:09 更新
あなたside
付き合って3年。季節が巡るたびに「当たり前」が増えていく一方で、いつの間にか心の距離は少しずつ開いてしまっていた。
リビングに漂う空気は、凍りつくように冷たい。文也の帰りは遅くなり、帰ってきてもスマホの画面を見つめたまま、ソファの定位置から動かない。
あなた
ねぇ……文也くん
​呼びかけても、返ってくるのは生返事か、あるいは微かな溜息だけ。3年前、私が声優の仕事で悩んでいた時、優しく頭を撫でてくれたあの温もりは、どこへ消えてしまったのだろう。
あなた
今日、仕事終わるの早かったんだから、少しは話そうよ
今井文也
今井文也
……疲れてるんだ。明日も早いし、静かにしててくれ
​その背中に向かって、溜まっていた苛立ちが爆発した。
あなた
疲れてるのはお互い様だよ!最近、私なんて空気みたいじゃない。話しかけてもスマホ、ご飯作っても『ふーん』だけ。……私、もう限界だよ
彼がゆっくりと立ち上がり、冷ややかな瞳でこちらを見た。
今井文也
今井文也
……なら、もういいよ。そんなに不満なら、好きにすれば
その投げやりな言葉に、胸がえぐられるような音がした。私は震える手で鞄を掴み、そのまま玄関へと走った。
文也side
勢いよく閉まったドアの音が、やけに心に響く。
あなたが飛び出していってから、3時間が経過した。
​スマホの通知画面を何度も指先でなぞる。送ろうとしては消し、また打つ。
素っ気ない態度をとっていたのは、甘えていたからだ。彼女なら、俺が何をしても受け止めてくれる。そんな慢心が、一番大切にすべき関係を壊しかけていたことに、今更ながら気づく。

(……馬鹿だな、俺は)
​俺はジャケットを掴み、飛び出した。
あなたside
​街の明かりが、滲んで見える。
あんなこと言わなきゃよかった、という後悔と、やっぱり別れるべきなのかもしれないという不安。
今井文也
今井文也
……あなた
​不意に、名前を呼ばれた。
見上げると、息を切らした大好きな人文也くんがそこに立っていた。
あなた
どうして……
今井文也
今井文也
……探したんだ。電話も出ないし、不安で……
彼​は、私の隣に座ると、視線を落としたまま、震える声で話し始めた。
今井文也
今井文也
ごめん。素っ気なくして……仕事が上手くいかない苛立ちを、一番近いお前にぶつけてた。……お前が空気みたいだったんじゃない。あなたが隣にいることが当たり前すぎて、大事にするっていう努力を忘れてたんだ
​私は、溢れそうになる涙を堪えながら、彼の目を見つめた。
あなた
……文也くん、私、ずっと寂しかった。このまま離れていくのが怖くて、必死に話しかけてたんだよ
今井文也
今井文也
わかってる。……本当にごめん。もう二度と、あんな顔させないから
​彼がゆっくりと手を伸ばし、私の手を取った。その手は、冷えていた私を包み込むように熱かった。
今井文也
今井文也
……帰ろう。二人で、もう一度やり直そう
あなた
……うん。帰ろ、文也くん
タクシーを拾い、また二人で過ごす部屋へ向かう。
3年という歳月は短くない。けれど、この喧嘩のおかげで、また一つ大切なことに気づけた気がした。明日からは、もう少しだけ、お互いの言葉を丁寧に拾い上げていこう。
初めての今井さん!By主

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