あなたside
付き合って3年。季節が巡るたびに「当たり前」が増えていく一方で、いつの間にか心の距離は少しずつ開いてしまっていた。
リビングに漂う空気は、凍りつくように冷たい。文也の帰りは遅くなり、帰ってきてもスマホの画面を見つめたまま、ソファの定位置から動かない。
呼びかけても、返ってくるのは生返事か、あるいは微かな溜息だけ。3年前、私が声優の仕事で悩んでいた時、優しく頭を撫でてくれたあの温もりは、どこへ消えてしまったのだろう。
その背中に向かって、溜まっていた苛立ちが爆発した。
彼がゆっくりと立ち上がり、冷ややかな瞳でこちらを見た。
その投げやりな言葉に、胸がえぐられるような音がした。私は震える手で鞄を掴み、そのまま玄関へと走った。
文也side
勢いよく閉まったドアの音が、やけに心に響く。
あなたが飛び出していってから、3時間が経過した。
スマホの通知画面を何度も指先でなぞる。送ろうとしては消し、また打つ。
素っ気ない態度をとっていたのは、甘えていたからだ。彼女なら、俺が何をしても受け止めてくれる。そんな慢心が、一番大切にすべき関係を壊しかけていたことに、今更ながら気づく。
(……馬鹿だな、俺は)
俺はジャケットを掴み、飛び出した。
あなたside
街の明かりが、滲んで見える。
あんなこと言わなきゃよかった、という後悔と、やっぱり別れるべきなのかもしれないという不安。
不意に、名前を呼ばれた。
見上げると、息を切らした大好きな人がそこに立っていた。
彼は、私の隣に座ると、視線を落としたまま、震える声で話し始めた。
私は、溢れそうになる涙を堪えながら、彼の目を見つめた。
彼がゆっくりと手を伸ばし、私の手を取った。その手は、冷えていた私を包み込むように熱かった。
タクシーを拾い、また二人で過ごす部屋へ向かう。
3年という歳月は短くない。けれど、この喧嘩のおかげで、また一つ大切なことに気づけた気がした。明日からは、もう少しだけ、お互いの言葉を丁寧に拾い上げていこう。
初めての今井さん!By主









![# 攻略対象より悪役に惚れました . [ 冬司ver ]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/463Ienje96SMnaxqeg7tvIaFh9p1/cover/01K566339R5TNCGP01WCWNSK9G_resized_240x340.jpg)



編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。