次の日。肌寒い冬の朝。
目覚めてすぐ隣を見ると、阿部ちゃんの姿がなかった。
彼を探しに、昨日舘様と一緒にいたダイニングルームへ向かった。
ガチャ
皆の分の朝ごはんを作っているのだろう。
包丁のトントン、という音が鳴っていた。
舘様は話し相手の心を察するのが上手く、手元の料理に集中しながら聞いてきた。
なぜか舘様は知っているような表情をしながら、空を仰いだ。
これは何か阿部ちゃんに言われているんだろうな。
俺はそう思い、もう一度聞くが、やっぱり答えることは同じ。
寝起きでふわふわしたふっかさんがダイニングに入ってくる。
「おはようございます」と返すと、知ってるはずもないが、とりあえず幼馴染ってことだから、知ってるはずじゃないかと思って、彼にも聞いてみる。
聞き返して、数秒ほど経った。
だけど、数秒後には舘様と同じ答え、「知らないなぁ」。
やっぱり、何か隠していることがあるのだろうか?
俺がそこまで言うと、舘様が諦めたように口を開いた。
その時、口を噤む彼。
ちらちらと彼が見ているのは、ふっかさん。
ふっかさんは考えることにまた数秒費やし、やっと口を開いた。
微笑むように俺を見ると、「じゃ、行こっか。」と言い、舘様にお礼を言ったかと思うと、身を翻した。
ふっかさんに続いて、廊下を進む。玄関に近い空き部屋に二人で入り、ふっかさんが部屋の電気スイッチを押した。
俺がこくりと頷くと、ふっかさんの顔は深刻そうな顔に変わり、重々しく口を開いた。
そこで一旦、息を整えたふっかさんは、真剣な声色で、俺をまっすぐに見つめた。
返事をしようと息を吸うと、玄関から「ただいまー」と一番会いたい人の声がした。
ふっかさんを見ると、彼は「行ってこい。」とでも言うように目配せをし、俺はドアを開いた。
声をかけると、一瞬にして笑顔から眉をひそめた阿部ちゃん。
ふっかさんが俺のことをフォローする。
阿部ちゃんはマフラーを外しながら俺を睨んだ。
ふっかさんがどう言おうと、全く俺と二人きりで話すことを許してくれない阿部ちゃん。
そうやって真剣に彼を見つめた俺に圧倒され、息を呑んだ阿部ちゃんは渋々「夜に。」と了承してくれた。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。