夜
夕食を終えて、
丁度屋敷の近くにいた
太陽に凶一郎の昔の服を持ってきてもらって
(現在の凶一郎は筋肉が増えたから
昔の凶一郎にとってはかなり服が緩い)
完璧に昔の姿になった夫に…
飲みかけていた水を
キッチンに思い切り吹き出す
額が広い=ハゲへの第1歩
それを示唆されて、
奏一が家族写真を撮りに
寝室の方に向かった時、凶一郎は
耐えきれず床に蹲り
全身を震わせて大笑いする
17歳凶一郎の前で最後に大爆笑したのは
学生時代に凶一郎が
プールのシャワーで転んだ時以来かもしれない
⬆️ 他人の不幸は蜜の味
泣きべそかきかけている
旦那に笑いながら
背中を叩きに行った頃には
奏一が家族写真を取ってきた
奏一に抱きついて肩を震わせる
肩を揺さぶられて、余計にツボった
普段は大爆笑なんて余程のこと
(凶一郎が失敗した時以外)ではしない奏は
ツボが大体数時間は長引くので
睡眠薬で寝させないと
笑う時に使う筋肉を痛めてしまう
その為、さっさと飲ませて寝かせる
自身の横に、奏一くんが腰掛ける
自然と、この子の前では
口調が柔らかくなっていく
奏本人にも、妹弟たちにも
ドン引かれた例えを
理解して笑ってくれる
少年の柔らかい髪を撫でる
柔らかさは奏によく似てる
奏はどう見ても…「あの日」の
後のことをはぐらかしていた
きっと…何か嫌な事しか
起きなかったからだろう
うつらうつらと
瞼が閉じてきた奏一くんが、
俺の膝を枕にして寝転がる
無言で抱き上げる
六美にしたのと同じように
背中を一定の間隔で叩けば
奏と同じ寝息が聞こえてきた
暖かい、子供の体温
…眠ることが、ひどく恐ろしい
目が覚めたら…ふたりとも
消えているんじゃないか
愛しいと思うふたりが消えて…
自分は、あの火の海にいるんじゃ…
奏は……もう…
自身の腕から奏一くんを
そっと抱き上げようとした奏は、
突然、ピタリと静止した
……無意識に、強く抱き締めていた
そう言われて、導かれるままに抱きつく
震える夫の体を抱きしめて、
奏一を寝かしつけるのと
同じ宥め方をしたら
1分くらいしてようやく、眠りについた
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!