フードを被って街を放浪する
私は今ある本屋を探している
現在の所持品は
ポケットに入ったタバコ1カートンとライター
それと一冊の古びた本
家に引きこもっていた時クソ兄貴が私のためにと言って
勝手に本屋からレンタルしてきた本である
せっかく家を出るんだから、街の探索がてらこの本を返却してやろうと思ったのだ
タバコは、まぁ…ストレスを解消するために月1の楽しみとしてこっそりと吸っていた代物だ
吸った後は速攻シャワーを浴び、苦手な香水まで付け匂いを消した。
そうまでしないと本当の自分を見失ってしまいそうで怖かった、それをかき消すように喫煙した
未成年のくせにと思われるかもしれないが、今は立派なニコチン中毒者になった今更手放せない
タバコの煙をふかせながら例の本屋に向う
先程近隣住民から本屋の場所を教えてもらったのだ
『ここか』
タバコを地面に落とし足で踏みつけた
本を片手に本屋に入ると
扉の鳴り鈴が凛とした音をたてる
紙と少し埃っぽい匂いがした
カウンターに目を向けると1人の老人が椅子に腰掛けていた
『本、返しに来たんだけど』
「その本は…!シャルロッ__」
カウンターにバンッ__と手を叩き置き老人の言葉を遮った
『私はシャルロット家の使だ、変わりに返却に来た。いいからさっさと受け取れ。次その名を口に出したら殴る』
老人は目をむき出し狼狽え恐る恐るといった様子で口を開いた
「申し訳ありません…ですが、わたしくめは今腰を悪くしておりまして…ご自分で返却していただければと…」
『……だったら最初からそう言えジジィ』
人差し指で本をクルクル回しながら店内を周回した
『自分で返却しろと言ったけど場所わかんないし』
適当でいっかと思いスペースが空いていた場所に本を入れようとした時
パシッ__と誰かに手首を掴まれた
『ん…?』
「この本の場所はここじゃない」
振り向けば若い男がいた
黒髪にバンダナのような物を付けていてよく見たら大き目のピアスを付けている
その男は私から本を取り上げ、そのまま隣の本棚に本をしまった
男は人の良さそうな笑みをうかべる
私はその猫をかぶったような笑顔にクソ兄貴の笑顔が重なってしまい顔をしかめた
「オレはクロロ。君は?」
『あなた』
ふーん…とクロロは零しあなたか…と私の名前を復唱した
顎に手を当て考え込むように黙ったのでその場を離れ
店を出るためクロロを横切ろうとした
すると再度名前を呼ばれる
「君って香水とか付けてる?」
香水?
『タバコ吸ってるからその匂い消しに付けるくらいだな』
「今は付けてる?」
コイツ香水のマニアなのか??
『今は付けてない。香水兄貴の物だからさ』
そういうとそっか。とニッコリ笑った
脳内にハテナを浮かべながら私は本屋を後にした
__シャルロット家の香水。
店内に残ったクロロは1人考える
あのあなたとか言う娘からかすかに香るのは
確かにあの香水だった。
シャルロット家の香水はオーダーメイドで世界に1つしかない特別な香りがする香水だ
クロロも盗賊である以上"世界に1つだけ"とつくものはどうしても気になってしまう
直接シャルロット家との面識はないもののその香水だけはオーダーを受けた香水店に侵入し
盗みをし香りを知っていたのだ
その香水の香りが何故先程の娘から香ったのか
__シャルロット家の幻の長女。
どうやらこの噂は本当だったらしい
シャルロット家が頑なに表に出そうとせずに
存在を隠し続けた長女
ソレにはいったいどんな秘密があるのか
クロロの盗賊の本能があなた=シャルロットに興味を示す
「少し探ってみるか」
不敵に笑ったクロロの瞳は
まるで獲物を見つけた野獣のようにギラついた













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。