結局、自分が家を出る時間になっても母は起きてこなかった。
あまり心配はしていない。様子も確認していない。
まぁ、よくある事だ。
電車に乗り込み、スマホをぼーっとながめる。
なんのアプリも起動していない、なんなら電源も入れていないスマホを、だ。
そして、ふと今朝の夢のことが頭をよぎった。
なんだっけ…前見たやつと同じような…
前、とは言っても昨日…?一昨日かな?の事だ。
記憶力の悪さが出てしまった。
記憶の限りでは、電車にいると自覚して、その直後に海へ落ちた。
そして…また、海の中に沈んだ…。
まるで沈むことを望んでいたかのように、気持ちよく目を閉じた気がする。
…と、そこまで考えて、やめた。
なんだよ、別にそんな死にたくなるようなことなんて無いじゃないか。
なんなら、今の生活ができてるだけ幸せじゃないか。
これ以上、何を求める。
だって、私が特別な人間になったら、幸せというものに気づけそうにない。
やめよう、こんなの、考えたって無駄だ。
自分が、というか、家族自体、悲観主義なところがある。
おかげでこんな事を定期的に考えてしまう。
人に流される、変なとこで頑固になる、飽きっぽい、負けず嫌い、めんとくさがり………などなど
余計なところばかりを受け継いでいる気がする。
短所を教えてくださいと言われたら、かなりの数が出てきそうだ。
何だかんだ、学校の最寄り駅までの時間をくだらない想像で使い果たした。
一度、こんなことを考え出すと、まるまる1日、ネガティブモードになってしまう。
やめよう、やめよう、何度そう思ったことか。
しかし、そう思うのはいつもネガティブモードの時だ。
どうせ無理だと諦める、この繰り返し。
友達にもそっけない対応をしてしまう。
まるで子供だ。
変わらないねぇ…。
今日もまた直すことができず、放課後ですよ。
あぁ、御崎くんか。
ぼーっとしていたから、すぐに反応できなかった。
周りを見れば、教室の電気も消されている。
私達を照らしていたのは、窓から差し込む夕陽だけだった。
そりゃ、表向きの顔ですから。しっかりしてるように見せてるだけだ。
裏では悲観主義の頭がおかしいやつですよ、なんて皮肉ったが口には出さない。
自然と一緒に帰る流れになった。
御崎くんと話して、さらには途中までだが一緒に帰るのも、周りの人がいないから気にせずにすんだ。
歩き出す。
廊下には二人分の足音が響く。
この人、勘違いしてたけど嫌いじゃないかもな。
無意識かどうかは分からないが、他人の事情を深くまで聞いてこないし、無駄に心配もしない。
歩きながらなんとなく、窓の外に視線をやった。
夕陽が煌めき、きれいで、眩しかった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。