拍手に包まれながら、俺らは舞台から降りた。
夢のような、時間だった。
みんながみんな、息切れをして、汗を大量にかいて。それでもこれまでに無いくらい、笑ってて。
そう呟くと京介も笑って、本当にな、と言った。
楽器を持ったまま余韻が抜けずごちゃごちゃと感想を語り合う。_ような時間はなく。
次の次の先輩たちのバンドが次々と入ってくるので俺らは早く袖から出ないとなあ、なんて考えていた。
あ、でも…
俺は2人の方を見る。
なんとなくぎこちないけど、あともうちょっとというところだ。
雄大は泣きそうになりながら威尊を見つめる。
威尊はふっと微笑んで雄大を見つめた。
2人の視線が交差する。
どく、どく、と心臓の音が大きく聞こえた。
その視線を打ち切ったのは匠海だった。
雄大はぶーぶーと匠海に言っていたが、威尊が、言ってることは正しいからなあ、なんて雄大を説得していた。
でも、場が一気に崩れて、雄大と威尊は顔を見合わせて思わず笑っていた。その笑顔は、緊張してた分だけ柔らかくて、なんだか眩しいくらいだった。
俺らの会話や先輩たちのリハーサルの音でざわざわとする中ギターとアンプ、そして威尊のドラムの一部を持ち、俺らは部室に帰っていった。
部室に楽器を置き、一息ついたところで校内放送が鳴った。
『あと1時間で後夜祭が始まります。終了20分前になりましたら保護者の皆様や観覧に来てくださった近所の方々はお足元にお気をつけてお帰りください。
生徒は荷物を学校から出し、後夜祭が終わったらそのまま帰られるように準備をしておいて下さい。』
みんなでしみじみと感傷に浸る。
そんな時申し訳なさそうに京介が口を開いた。
…そんな。
彼と回るのを少し楽しみにしていたところはあった。とても残念だが…仕方がない。心残りではあるが。心残りしかないが。
心の中がずんと重くなる。彼は俺の様子を見て笑っていた。
咄嗟にへこんでねーし!という言い訳が口をつく。サクッと嘘をついたがバレバレだったようだ。
かわいい。
その言葉を聞いた途端なぜか俺は動揺する。
彼を前にすると何も言えない。モヤモヤしたよく分からない気持ちを抱えているといつの間にか京介はちょっと時間やばいから帰るわ。じゃあねと言ってすっと帰っていった。
なんだこの、やり場のない気持ちは。
京介が帰っていった後、匠海が2対2で分かれて回るのはどうかと提案した。後夜祭ではほんの少し、小規模だが花火があがる。そこで花火大会のリベンジをしたらいい。そう匠海は2人に説明する。
そう言うと2人は照れながらありがとうと笑った。
幸せそうな笑顔だ。
俺ら2人は荷物を持って部室を出た。
そんな彼に俺は首を横に振った。
首を傾げる彼を半ば強引に引き連れて俺は階段を登った。
屋上のドアを開けると温いような涼しいような風が俺を包む。いつもご飯を食べている屋上は今、薄暗くていつもとはまるきり雰囲気が違って見えた。
そう言って匠海は笑う。
空元気を出す彼に俺は少し話をしよう、と言った。
少々現実的なことを口にした。
少し、残酷すぎることかもしれなかった。
それでも、話そう。彼が苦しそうで見てられないから。
彼の顔が、醜く歪んだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!