悠斗の部屋は、六畳一間のアパートだった。
大学進学を控えた春、家庭の事情で一人暮らしを始めたばかりだ。贅沢はできないが、自分の居場所としては十分だった。
その夜、梨玖は悠斗のベッドの端で丸まって寝ていた。角と尻尾は、薄い布団からほんの少しはみ出している。
悠斗は、勉強机に向かいながら、ふと少年に目を向けた。
段ボールの中にいた少年の身体には、小さな痣がいくつもあった。明らかに「捨てられた」存在だった。
なぜそんなことが平然と行われるのか。
なぜ、人外というだけで、命の価値が下がるのか。
悠斗には、どうしても納得がいかなかった。
眠っていたはずの少年が目を開けた。
お風呂に入り、温かいご飯を食べていると、少年が話しだした。
その言葉、少年が悠斗を信用するためには充分な言葉だった。
自分の存在を認め、名前まで付けてくれた悠斗に少年…梨玖は心を開いたのか嬉しそうな笑みを浮かべた。
次の日、二人は簡単なルールを決めた。
・学校や近所には梨玖の存在を隠すこと
・名前を出さない、顔を見せない
それは、まるで逃亡者のような日々の始まりだった。
けれど、それでも――
世界に背を向けながらも、二人の間には、確かに温もりがあった。
そして悠斗は気づき始めていた。
自分が温もりを与えているつもりでいて、実は――
温もりを与えられているのは、自分の方かもしれないと。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。