美優の仲裁に反論するのは、犬猿の仲の優斗と悠真。
こうして、勇気も喧嘩に混ざることが多い。
裕亜は別に老け顔というわけではないのだが、荒ぶった感情の彼らはそんなこと知ったこっちゃない。
美優が先ほどまでとは打って変わった冷え切った声を出す。彼女の後ろでは穂乃果が、四人の怒りのオーラと美優の冷たい怒りのオーラをモロに受けて、いつもよりかなりオロオロしていた。
途端に挙動不審になる四人。
起こった美優が怖いことが幸いか、それとも全員美優に嫌われたくない気持ちが強すぎることが幸いか。
突然『My』と、美優たちのチーム名を口に出した男。
美優はその男の方を一瞬見るが、すぐに視線を戻して歩き出した。
それを見た男は、美優に殴りかかる。
だが美優はその男を避け、足を引っ掛けて転ばせる。彼女の本気はまだまだこんなものじゃないが、人としてやり過ぎないという常識は持っているので、とりあえずはこのくらいにしているのだ。
Myはよく、こういう奴らに絡まれる。
…十中八九、美優がきっかけだ。
結果はいつも通り、Myの圧勝。
相手はみんなボロボロなのに美優たちはかすり傷ひとつないので、さすがと言える。
裕亜が悠真のピアスを確認し、悠真はその結果に安心した。つけなければいいのではないか、という勇気の意見には優しく話す悠真。
優斗と話す時とは大違いだ。
悠真の『あいつ』発言が気になったものは多かったが、右耳の赤いタッセルピアスをどこか悲しそうな目で見つめながら触る悠真を見て、誰も何も言えなかった。
その静寂を破ったのは優斗だった。
その言葉は、優斗なりの気遣いだったのか。
いずれにせよ、空気は軽くなった。
その後は何だかわちゃわちゃと過ごしたMyなのだった。
悠真のそのつぶやきには、誰も気づかなかった。
街のどこか。一人の男は空を見上げ、顔をしかめた。
彼の名は『京也』。
その時の光景を思い出しているのか、彼はどこか遠くを見るような目をしていた。
そう言いながらも彼は、『あいつ』が死んだとは思っていなかった。
彼にだって家はある。だが心の底では家だと思えなかった。
彼はため息をひとつつくと、手に持っていた空き缶をゴミ箱に捨てた。
彼は虚空に問いかける。返事はないと知っていながら。
イクゾー、ユーマ、そして京也。この3人があの空を見たものたちなのだろう。
京也はそのまま、闇の中に消えていった。彼の左耳には悠真のピアスとよく似た赤いタッセルピアスが揺れていた。
悠真のその小さな声は、誰も聞いていなかった。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!