第77話

與那城奨side
2,164
2025/01/17 15:00 更新
川尻蓮
いつ襲われるかわかんない
川尻蓮
それが怖くて、どこにいても安心できなくて、人と会って話すのが怖くなった
川尻蓮
俺だって不本意だけどっ……っ、メンバーのことも、信じられなくて……っ
蓮が顔を抑えて俯く。


激しく上下する背中を優しくさすった。
與那城奨
よくここまで頑張ったな
與那城奨
お疲れさま
二十年という時間、蓮は本当のことが言えなかった。


その不安はどれだけ大きかったんだろう。


時間が経っても心が壊れるほどつらいのに、蓮はここまで耐え抜いてきたんだ。
與那城奨
なんかあっても、一緒に守るから
與那城奨
頑張れて偉かったな
川尻蓮
頑張ったっ……、ずっとずっと……頑張ってて……っ
こんなに頑張れる人が、ほかにどこにいるというんだろう。


こんな大きな壁を乗り越えた今日は、蓮にとってもきっと大きな成長になるだろう。
川尻蓮
みんなのこと不安にさせた自分が許せなくて、JO1になったことも、後悔した……っ
川尻蓮
色んな人の想い背負ってるのに仕事できないことも、情けなくてっ……
蓮がこんなに優しいのは、つらい経験をしてきたからなんだ。


苦しいことを苦しいと言えないのは、どれだけ苦しいんだろう。
與那城奨
……嫌いになるわけないよ
與那城奨
迷惑なんてかけたもん勝ちだよ?
今更掘り返すなって言われても、やっぱりちょっと心配。


これから蓮の身になにかある可能性だってあるわけだし。


ちゃんと守ってあげられる自信は正直あんまりなかった。
川尻蓮
でも……っ、戻れるなら、戻りたい
川尻蓮
生きたいって思わせてくれたみんなと、生きたいっ
長かった蓮の充電期間。


すごい苦しみを乗り越えて、ここまで来れたんだね。
川尻蓮
みんなが許せないって言うなら、仕方ない
川尻蓮
……でも、全部、謝るから……っ
川尻蓮
みんなが喧嘩する原因になったことも、俺を助けるために奨くん奪っちゃったのも、色々不安にさせたのも、全部……
與那城奨
蓮は、優しいんだな
ひたすら泣いている蓮を抱き寄せる。


ご飯もちょっとは食べられるようになるかな。


そしたら、元気出してくれるかな。
與那城奨
みんな同じだけ優しいから、大丈夫
與那城奨
11人で話せなくてもいい。一人ずつとでも、ちゃんと向き合っていこう
みんななら、蓮の言葉をちゃんと受けとめてくれるはず。


苦しかった毎日を見てたみんなだから。


生きたいって思う人の邪魔なんてしない。


蓮がみんなで生きたいなら、みんなで生きようよ。
川尻蓮
生きてたらつらいことって付きもののはずなのに……っ
川尻蓮
俺ばっかりその割り当てが重いような気がしてっっ
川尻蓮
なんでって、ずっと思ってた……。みんながどんな思いで生きてるか、わかってないのに……
大喧嘩したときのみんなが蘇ってきた。


いくらメンバーでも他人だから、完全に分かり合えることはきっとない。


でも、少しでも寄り添ってあげられたら、心も救われるかもしれない。
與那城奨
わかってなくていい
與那城奨
何がつらいのかは、人によって違くていい
蓮が頑張って耐えてきたのと同じ時間、俺だったら耐えられる気がしない。


途中でしんどくなったって、ここまで頑張って戻ってきたんじゃん。


幸せが人それぞれ違うのは個性として認められる。


好きなことや趣味だって、みんな違くたって間違いはない。


でもなぜか、つらさが人それぞれ違うのは悪いことみたいになる。


日常に溢れたことでつらくなることは、否定される。


こんなこともできないのか、そんなことで泣くのかって、自分だって自分のことを責める。
川尻蓮
絶対後悔なんてしない
川尻蓮
また、頑張ってみる……
川尻蓮
だからもう少しだけ、生きてみようかな
生きることだけは、絶対に諦めちゃいけない。


生きることから逃げたら、やり残したことは叶えられない。


何から逃げてもいい。


生きていることさえできれば、また飛ぶことができる。


何度海に足を突っ込んでも、息ができないくらい水に埋もれても。


ここからまた、みんなで飛ぼうよ。
與那城奨
一緒に生きよう
與那城奨
死にたくなったら、また教えてよ
綺麗な海を眺めて、飛び込みたいなぁなんて思っても。


飛び込んでほしくない人がいれば、それはきっと生きていなきゃいけない証。
與那城奨
蓮のこと、みんな待ってるよ
與那城奨
もっと自分のこと、大事にしてあげな
蓮が椅子から崩れ落ちた。


大号泣で、床に蹲っている。


苦しかったからこそあふれた涙。


安心したのかな。


もう大丈夫って、思えたかな。
與那城奨
生きててくれて、ありがとう
それしか伝えたいことはなかった。


蓮が生きててくれれば、俺らはまた11人になれる。



Next   河野純喜side

プリ小説オーディオドラマ