蓮が顔を抑えて俯く。
激しく上下する背中を優しくさすった。
二十年という時間、蓮は本当のことが言えなかった。
その不安はどれだけ大きかったんだろう。
時間が経っても心が壊れるほどつらいのに、蓮はここまで耐え抜いてきたんだ。
こんなに頑張れる人が、ほかにどこにいるというんだろう。
こんな大きな壁を乗り越えた今日は、蓮にとってもきっと大きな成長になるだろう。
蓮がこんなに優しいのは、つらい経験をしてきたからなんだ。
苦しいことを苦しいと言えないのは、どれだけ苦しいんだろう。
今更掘り返すなって言われても、やっぱりちょっと心配。
これから蓮の身になにかある可能性だってあるわけだし。
ちゃんと守ってあげられる自信は正直あんまりなかった。
長かった蓮の充電期間。
すごい苦しみを乗り越えて、ここまで来れたんだね。
ひたすら泣いている蓮を抱き寄せる。
ご飯もちょっとは食べられるようになるかな。
そしたら、元気出してくれるかな。
みんななら、蓮の言葉をちゃんと受けとめてくれるはず。
苦しかった毎日を見てたみんなだから。
生きたいって思う人の邪魔なんてしない。
蓮がみんなで生きたいなら、みんなで生きようよ。
大喧嘩したときのみんなが蘇ってきた。
いくらメンバーでも他人だから、完全に分かり合えることはきっとない。
でも、少しでも寄り添ってあげられたら、心も救われるかもしれない。
蓮が頑張って耐えてきたのと同じ時間、俺だったら耐えられる気がしない。
途中でしんどくなったって、ここまで頑張って戻ってきたんじゃん。
幸せが人それぞれ違うのは個性として認められる。
好きなことや趣味だって、みんな違くたって間違いはない。
でもなぜか、つらさが人それぞれ違うのは悪いことみたいになる。
日常に溢れたことでつらくなることは、否定される。
こんなこともできないのか、そんなことで泣くのかって、自分だって自分のことを責める。
生きることだけは、絶対に諦めちゃいけない。
生きることから逃げたら、やり残したことは叶えられない。
何から逃げてもいい。
生きていることさえできれば、また飛ぶことができる。
何度海に足を突っ込んでも、息ができないくらい水に埋もれても。
ここからまた、みんなで飛ぼうよ。
綺麗な海を眺めて、飛び込みたいなぁなんて思っても。
飛び込んでほしくない人がいれば、それはきっと生きていなきゃいけない証。
蓮が椅子から崩れ落ちた。
大号泣で、床に蹲っている。
苦しかったからこそあふれた涙。
安心したのかな。
もう大丈夫って、思えたかな。
それしか伝えたいことはなかった。
蓮が生きててくれれば、俺らはまた11人になれる。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!