第80話

白岩瑠姫side
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2025/01/18 15:00 更新
拗らせた風邪がやっと回復して久しぶりに行った仕事。


午前中は病院行ってたから、午後から参加。


途中参加にはなるけど、久しぶりだからみんな会うのを楽しみにしてくれていた。


みんなが待つ楽屋に入ったら……。
白岩瑠姫
えっ!?
みんなに囲まれて笑う蓮くん。


最近調子良いとは聞いてたけど、まさかみんなと話せるまでになってたとは……。
川尻蓮
あ、瑠姫!久しぶり!
白岩瑠姫
え、あ、お久しぶり、です……
川尻蓮
なんか急に距離感じるなぁ笑
蓮くんが、笑ってる……?


あんなに苦しそうだった蓮くんが……?
大平祥生
るっくん、表情管理して笑
いやいやいやいや……もはやパニック。


また咳がぶり返しそうなほどのパニック。
白岩瑠姫
いつの間に……
川尻蓮
瑠姫が今日から復活だから、俺もそこに合わせてきた
蓮くんがにこっと笑う。


前より細くはなってるけど、病的かと言われればそんなことない。


俺と並べば違和感はない笑
川尻蓮
じゃあ、改めまして、みんな、本っ当にお待たせしました
川尻蓮
話したいこと準備してきたけん、聞いてほしい
川尻蓮
泣いて話せんくなったらごめんね笑
豆原一成
ゆっくりでいいですよ
鶴房汐恩
とりあえず、最後まで聞きます
川尻蓮
……ありがと
それぞれバラバラに座りながらも蓮くんの方を向く。


蓮くんは2回深呼吸してから、話し出した。
川尻蓮
活動休止してから今日まで、たくさん支えてくれてありがとう。数えきれない迷惑かけたけど、それでも待っててくれて嬉しかったよ。
大ごとにしたくないからまだ詳しくは言えない。でも、みんなを傷つけるのが怖かったんだ。

実は、俺は家出して行方不明、とかじゃなくて、誘拐されてた。その犯人から連絡が来るようになって、怖くなって。俺のせいで傷つけるのが嫌で、みんなと話したくなくなっちゃったんだ。
身勝手な理由で傷つけて本当にごめんなさい。でも、あのときの俺は必死だった。みんなのこと守ってあげられる自信がなかった。

しんどいトラウマ持ってたけど、俺はそれでもオーディションに参加した。それくらい叶えたい夢だった。でもね、今更それを放棄するのはずるいでしょ?……五年前掲げてた目標が、今となっては俺の重荷にしかならなかった。こんな仕事しなきゃよかったって思いながら、自分の本音は無視して頑張ることしかしなかったら、急に限界がきちゃった。
言いたいけど言えない過去があっても、メンバーみんなが心の支えだった。みんながいてくれたから、ちゃんと毎日生きて、明日も頑張ろうって思えたんだ。

台風の中マンション抜け出したとき、転んで冠水した道路に突っ込んだの。そのとき、飛べるからに歌詞が蘇ってきた。

『無理に馴染まなくっていい、虹は自然にかかるよ 水溜まり飛び越えた無邪気な目で、同じ夢描けるって信じてた』

冠水した道路は水溜まりじゃないから飛び越えられるわけがない。大雨を降らす空に虹はかかりそうになかった。でも、みんなからしたら、俺だけ離脱しちゃって、悲しいよね。一緒だと思ってた人がいなくなるなんて、悔しいよね。ずっと、最初からいなかったことにしてほしかった。俺なんて存在しなかったことにすれば、みんな幸せだと思ってた。

でもずっと、みんな俺のことを死なせてくれなかった。会えなくても、心は近くで見守ってくれた。そのおかげで、つらくて長くてどうしようもない夜を、乗り越えられたんだと思う。
海も冠水した道路と同じでさ、飛び越えられないじゃん?空が飛べたら超えられるのにね。この間、死にたくなって、純喜と瑠姫と奨くんと四人で、海に行ったんだ。そのとき、海を見て思った。生きたい。みんなとなら、一緒になら、空も飛べるって、思った。
生きてる限り、俺の人生は終わらない。終われない。なかったことになんて、できない。
だから……、頑張らないと、もったいない。どうせ生きるなら、みんなで青空の下を進みたい。……俺が飛ぶ準備ができるまで、待っててほしい。だから、みんなはいつでも飛べる準備してて。

こんな俺とだけど、一緒に、生きてください
蓮くんは大号泣ながらも、最後まで言い切った。


俺はこれでやっと、心の底から安心の涙が流れた。



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