葛葉は思わずおうむ返しをした。
言葉の規模が大きくて、何が何だかわからない。
ただ確かなのは、ダイヤモンドが誰よりも強い、
いわゆる『最強』と呼ばれるような人物であることだった。
____何か一つに視点を当てて、その一点を特化させる為に一生をかけたのに、だ。
少女は顔を顰めた。眉を寄せ、頬を膨らませて、動作から不機嫌が感じられるような、そんな動きをした。
でも、少女の紡ぐ言葉の音の高さや吐息の量一つ一つには、どうしようもない慈愛が感じられた。
ダイヤモンドが行った行為は、いわば相手を失脚させているのと同義だ。価値を示さなければゴミ箱行きの地獄に、『なんでもできるもの』が生まれてしまえば、『何か一つが特出しているもの』は必要ない。
ましては『何か一つが特出しているもの』の〝何か〟を『なんでもできるもの』が軽々超越したのであれば、言うまでもなく。
完璧が完璧すぎるあまり、十分に強いのにも関わらず〝欠陥品〟の印を押される。
欠陥品は即処分。焼却炉でも、シュレッダーでも、何行きかは知らないが、必ず殺される。
___完璧の、せいで。
___さて、そんな理不尽を、少女は愛した。
憎まず、恨まず、心の奥底から慈しんだ。
それはきっと、簡単なことじゃない。
突然笑いだした少女に、カチンと体が硬直した。先ほどからの変わりように葛葉はひどく困惑したが、口を大きく開けてきゃっきゃと年相応に笑う少女を見て、口が閉じる。
少女は思わず破顔した。ああ、おかしい、可笑しい、おかしい!
___人間だなんて、どんな堕落だ。
決して口には出さないけど、本当にありえないものを見るような、そんな顔をして少女は笑った。
嘲笑ではなかった。あざ笑っているわけではないのだ。可笑しいと思っているけれど、ありえないと思っているけれど、それはある意味〝理にかなっていた〟から。
懐かしむように、慈しむように。
少女はぽつりぽつりと言葉を落としていく。
葛葉はただそれを拾った。返すことはしなかった。
なんとなく、少女は自分の言葉を、返事を望んでいるのではないだろうと思ったのだ。
だから、目を細めながら、この少女の紡ぐ言葉をただ受け取った。
宝石人形の原本は誕生石だ。
1月から12月まで、12体の運用が予定されていた。
研究所には順位制度というものがある。
宝石人形になるには__生き残るには、無数の幼児の屍を踏み台に、研究所の中で選ばれし12体の1体にならなければならない。
そのために、12位以内に収まるために、私たちは身を削りあってきた。『順位争い』というものは、死に抗う私たちの行動そのものだった。
一対一の殺し合いを毎日毎日させられると、『合わない相手』は出てくる。
銃と剣は、攻撃範囲が全く違うように。
近距離と遠距離の殺し合いは、どちらが先に動けたかで決まるように。
一呼吸違えばたちまち戦況が一変するため、順位は毎日目まぐるしく変化する。
それがセオリー。当然、そうであるはず。
絶対というものは、あるのだ。少女は、ダイヤモンドを見てそれを知った。
どんな相手であっても、どんな状況であっても、彼女の勝利は約束されたものだ。
それこそ、絶対。絶対、何があっても、ダイヤモンドは負けない。
あの子の馬鹿げた力を表すのに、〝人〟という言葉は似合わなかった。
カミサマ、悪魔、天使、化け物。そんな言葉がよく似合ったし、彼女は私たちにも大人にもそう呼ばれていた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!