ふと、恵が私を離して名前を呼ぶ。
彼の美しい翡翠色の瞳は、悲しみに染まっていた。
…ように見えた。
ならもっと一緒にいられるな。
そう言った恵は、ノソノソと同じベッドに入ってくる。
恵の髪が、私の首あたりでもぞもぞと動く。
それからはしばらく、二人でくっつきながら他愛もない話をしていた。
野薔薇が寂しがっていること。
悠二が心配していること。
真希が以前より一年の教室に来るようになったこと。
パンダが異様にもふもふを迫ってくること。
棘がしゅんとしていること。
悟がソワソワしていること。
傑がよく一年の教室に来ること。
硝子の隈が濃くなったこと。
この2日間で起きた、高専の変化。
その言葉と同時に、3限終了のチャイムが鳴る。
私達はベッドから出て、お互いに支度を始めた。
保健室を出る直前、恵はこんなことを言った。
それを聞くと、荒れていた心が落ち着くのを感じた。
そう言って、私は恵に微笑む。
恵は私にキスを落として、任務へと向かった。
私は教室へと向かう。
その途中でチャイムが鳴ったが…まぁ、気にしない。
その言葉には返事をせず、席に座る。
…私は五条あなただ。
最強の妹、特級術師。
大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。
前の席の八百万が心配そうに尋ねる。
授業は受けなくても分かるため、適当に受けているふりをしながら外を眺めた。
そこでチャイムが鳴る。
すると、緑のもじゃもじゃに話しかけられた。
えーっと確か…。
まぁ、情報も大事か。
彼はそう言って私の手を引っ張りながら麗日と飯田のもとへ行く。
歩いてではなく走って。
…病弱なの忘れたかな?
ま、別にいいんだけどね。
それからは他愛もない話をしながら食堂に向かう。
…何、その話題。
話さなきゃ、いけない感じ?
そう言いながらこちらを見る三人の顔は、好奇心に満ち溢れていた。
少し震えた声で尋ねると、三人はぽかんとする。
…良かった。
震えていたことに、気づいていないみたいだ。
…右手、震えてる。
慌てて左手で隠すけど、意味がなかった。
だって、左手も震えていたから
無個性無個性、うるさい…ッ
そんなに無個性は悪いこと?
感情が昂りそうになった時、私のスマホが震えた。
そう冷たく言い放ち、私は食堂を出て空き教室に入った。
そう言った野薔薇の声は、少し震えていた。
愛しい仲間の声を聞けたからか、心が落ち着いていく。
そう言った野薔薇の声は名残惜しそうだった。
ふふ、可愛いなぁ野薔薇は。
通話が終了して一息つく。
…そういえば、弁当も一緒に持ってきちゃったんだ。
拒絶、かな。
すると、突然扉が開いた。

























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。