突然だが、私の仕事とは何だろうか。
雑用?マネージャー業務?
……いいや、
呪術師だ。
ところがどうだろう。私は今何をしているだろうか。
病んでる奴のメンタルケアである。
メンタルケアと言っても、まだ何もしていないが。
ダメだ。廃人のように成り果ててる。
たまに聞こえる呟きは、「凪」という言葉だけ。
可哀想に、何かに執着した人間はこうも無様に廃れていくのか。
遡ること数十分前、私は見た。
凪が潔と共にチームを組み、御影を捨てたところを。
……否、本人は捨てたつもりはないだろう。
「強くなって、また会おう」そういう意図があって、だ。
しかし言葉が無いと伝わらない。
見事、御影は凪に捨てられたと信じ込み……今こうして廃れている。
話しかけてくんなオーラがすごい。
でもこのままだとなぁ…
溜息が出る。ほんと、最悪。
やっぱりコイツらは面倒だ、こうやって拗れて…
”呪い”と”憎悪”が大きくなるんだから。
そしてそれは、”呪霊”へと変わる。
一番最初、ブルーロックに来る前。
コイツらは”約束”をし、それは両者の体質により”呪い”へと変わった。
この呪いは、お互いが破るつもりのない約束、縛りによるもの。
だが、今この瞬間…凪誠士郎は、この縛りを断ち切った。つまりは、”呪い”に歯向かったのだ。
御影玲王の”呪い体質”は加速し、”呪い”を呪霊へと変えた。強大な力を持って。
それが今、私には視えている。
漸く返事が返ってくる。
顔は伏せられたまま。暫く動くつもりはなさそうだ。
呪霊も今のところは大丈夫そう、だが…
何だか嫌な予感がする。この先、更に大変なことになる、と。
心の底から変な感情が湧いてくる。
気が付けば、私は鋭い言葉を投げていた。
ビクリと肩を揺らし 少しだけ顔が上がる御影。
逃さないように、私は続けた。
言い出したら止まらない。
御影は黙ったまま、私の言葉を受け止めている気がした。
何でこんなに熱くなっているんだろう。
何が私を動かしているんだろう。
ああ、わかった。
私はコイツに _____
”落胆” したんだ。
吐き捨てるように呟き、背を向ける。
ぱっと顔を上げた御影が 言葉にならない声を出した。
落胆。それは、裏を返すとコイツに”期待”していたということ。
きっと私は、コイツがサッカーを楽しんでいる事を”羨んでいた”。
凪という信頼出来る相手を持っている事も。
目指すものがある事も。
全部全部、羨ましかった。
コイツだけじゃない。ブルーロックに来る奴らは皆、サッカーに夢中。それが羨ましかった。
コイツらを見ていたら…私にも、そういうものが出来るんじゃないかって。変われるんじゃないかって、思った。
だから。サッカーへの情熱を失った御影が、どうしようもなく廃れて見えて。
落胆、したんだろう。
ただの保護対象だったのに。
いつの間にか、心を動かされるようになってしまった。これは、私の弱さなんだろうか。
……馬鹿馬鹿しい。
タブレットを持ち直し、一歩を踏み出そうとした。
御影に呼び止められる。
仕方なく、私は足を止めた。
仕事が山積みなんだ。足止めを食らってる暇なんてないのに。
ゆっくり、ゆっくり。
口を開き 言葉を紡いでいる御影は、話しながら気持ちを整理しているようだった。
素直に、喜べなかった。
言葉にはならなかったものの、そう思っている事がありありと伝わる。
”怖くて、寂しくて”
御影が呟き、頭を抱える。
私は振り向き、その姿を見下ろした。
ぽたぽたと小さな雫が落ちる。
それはやがて、大きな雫へと変わっていった。
静かに、大粒の涙を零す目の前の人。
その姿は選手ではなく、御曹司でもなく……”御影玲王”そのものだった。
宝物を奪られたような、子供っぽい姿。
ただの男子高校生で、ただの人間の、御影玲王。
何の謝罪だろうか。泣いていること?
無理矢理涙を止めようと拭っている手を掴む。
大きな瞳から、更に涙が零れる。
思う存分泣かないと、溜め込む奴はいる。
例えば、アホ教師みたいに。
手を握りながら、呪力を送り込む。
このまま弱い心でいると、呪霊に飲み込まれるから。
ふう、と息を吐く。
凪も存外分かりやすいと、私は思う。本人たちは気付いていないみたいだが。
目を伏せ、考えるような素振りを見せる御影。
その手を私は離し、立ち上がった。
……きっと、もう大丈夫。
なんだそれ。
突っ込みたくなる気持ちを抑え、私は頷いた。
…少しは応援してやろうか。
にっ、と御影が笑う。
調子が戻ってきたようだ。…待っている奴も居るみたいだし、私はそろそろ引こう。
くるりと振り返り、私は今度こそ足を動かした。
次ステージに進む選手の群れに進みながら、ちらりと此方を見ていた奴らに声を掛ける。
ひらひらと手を振り、私は業務へと戻った。
カウンセリング成功。完全に立ち直るには時間がいるだろうが…前を向かせることはできた、だろう。
給料上げても良いんだよキノコ。私の働きぶり、見事だっただろ。
話している千切、國神、御影を見る。
私の心も、どこか軽くなったような気がした。
𝙉𝙚𝙭𝙩
長い。ごめんなさい!
毎度温かいコメント有難う御座います、
とても嬉しいです♪ 返信頑張ります!
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前にも宣伝した気がするけど。bllです!













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。