ーデスシップ・とある一室ー
ーラテ・sideー
皆が出ていってから、早1日が経過しようとしている。
先程、カーラさんが鬼のような形相でこの部屋の横切っていった。
怖すぎて話しかけられなかったが…。
もしかすると、この件も佳境なのかもしれない。
手のひらを合わせ、ぎゅっと握り締める。
そこには、大切な人の無事を願う祈りと。
失っていまうかもしれないという恐怖。
その両方を孕んでいた。
…しかし、俯く訳にはいかない。
私が信じずに、誰が信じるのか。
その場で強く頷き、私は立ち上がる。
そして、この子に話し掛けた。
少し前からいる、マジェルと名乗る少年。
ルカさんが誘拐…?してきた子らしいが…。
…そのルカさん曰く、「極度のビビり」らしい。
小さく、プルプルと震えている。
いや、そりゃ怯えるよね。
だって、マフィアの拠点だよ?
あのマフィアだよ?
おまけに、この子はまだ9歳。
怖いに決まっている。
今、あたかも長い事住み着いているベテランみたいな質問をした訳だが…。
脱獄して、ここに来てから1ヶ月も経っていない。
なので、ぶっちゃけこの子と変わらないのである。
同じ境遇の人がいて安心したのだろうか。
マジェルくんの顔色が、次第に良くなっていく。
そして、再び目の前の窓へ顔を向けた。
外では、真っ白な雪が宙を舞っていた。
吹雪と言うほど強くもなく。
ただし、粉雪と言うほど弱くもない。
そんな、中途半端な降雪。
気まずそうにこちらを見た後…。
マジェルくんは、寂しそうに語り始めた。
話には聞いていた。
ここには昔、「マジェステック」という国があったことを。
…その国が、クルーエルに滅ぼされたことを。
この子は、強い。
失ったものを受け止めつつ。
残されたものを、しっかりと覚えている。
私達は、しばらく他愛の無い話を続けた。
いつもより、会話が弾んでいる気がする。
言葉が、口から次々に飛び出す。
その理由は、もう分かっていた。
このどうしょうもない不安を。
どうにかして、紛らわせたかったのである。
その時だった。
マジェルくんが、窓の方を向いて指をさす。
外は、相変わらず降雪が続いている。
心無しか、さっきより強くなっているような…。
マジェルくんには、一体何が見えているのか。
舞い続ける雪と、一面を覆い尽くす銀世界。
私の目には、それしか入ってこない。
目を細め、雪の中を覗き込む。
すると…。
宙を舞う、謎の飛行物体を発見したのだ。
いや、偶々ってレベルじゃないでしょ。
…と、心の中でツッコむ。
私とて、昔は自然の中で育った身。
目の良さには自信がある方だ。
それでも、凝視しなければ見つける事すらできなかった。
この子、異常なまでの視力を持っているのかも…。
本当によく見えるなぁ…。
私では、フォルムなんてまるで分からない。
「モルス」のシンボルは、言わずもがな大きな「M」である。
これはヒナさんから聞いた話だが…。
メメント・モリさんは、メンバーへこのような命令をしているらしい。
「モルス」の所有物には、必ずこのシンボルを入れるように…と。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!