第2話

一目惚れ
1,601
2023/02/15 09:17
 
秘書
紫耀様。
こちらが今回のお見合い相手です。
平野紫耀
平野紫耀
全部断っといて。
秘書
かしこまりました。


今日もいつもの様にお見合い相手の写真を見ずに断りを入れる。そんな俺のことを分かっている秘書さんはなにも言わず、すぐに退室していく。
秘書さんには申し訳ない気持ちはあるけれどこちらにも譲れないものはある。

平野紫耀
平野紫耀
結婚相手は自分で決めるっての·····。


母が「もうあなたも結婚できる歳でしょ?そろそろお見合いでもしてみたらどう?」と、言ったのが始まりだ。
それからは毎日のように知らない女性の写真を見せられている。ほぼ日常化したそれに嫌気がさしてくる。なにがよくて知らない女性の写真を見ないといけないのか。

平野紫耀
平野紫耀
俺は外見より内面を見るんですよーっだ!
秘書
紫耀様。
そろそろお時間です。
平野紫耀
平野紫耀
ん、はーい。


秘書さんに呼ばれて仕事場に向かう。
今日はある企業との打ち合わせ。
そこまで大事な話でもないから行きたくないのだけれど、俺がいかないと向こうの社長の機嫌を損ねてしまう。母に迷惑をかけるわけにもいかないため、仕方なしに打ち合わせに向かう。

平野紫耀
平野紫耀
今日のスケジュールってどうなってんの?
秘書
今日はこの打ち合わせ1本だけです。
平野紫耀
平野紫耀
じゃあそれが終わったら俺行きたいところあるから先に帰ってて。秘書さんもたまには休んでよ。
秘書
かしこまりました。
お気遣い感謝致します。
平野紫耀
平野紫耀
んーん、お礼を言うのは俺の方だよ。
秘書
仕事ですので。
平野紫耀
平野紫耀
ありがとう。
秘書
素敵なお相手に出会えるといいですね。
平野紫耀
平野紫耀
·····うん。


秘書さんは唯一俺の味方をしてくれる人。
いつも俺の体を気にかけてくれて色々話をしてくれる。小さい頃からお世話になっているから俺も接しやすい。
お見合いの件も俺が自分で相手を決めたいと知っているため、変に口出しをせずに見守っていてくれる。
本当にこの人が秘書さんでよかったなと思う。

 
秘書
では、私は先に帰らせて頂きます。
なにかありましたらすぐに連絡をください。
平野紫耀
平野紫耀
うん、ありがとう。
気をつけて帰ってね。


企業さんたちとの打ち合わせを終えて、今日の仕事は終わった。ほぼ雑談のようなものだったから居眠りをしそうになったのはここだけの話。

秘書さんを帰して、俺は適当に歩き回る。
少々小腹が空いたから適当に食べようと思い、ふと目に入った雰囲気のいいカフェに入る。



カランカラン

岸優太
岸優太
いらっしゃいませ。
平野紫耀
平野紫耀
え·····。


俺を接客してくれたのは1人の男。
その人を見た瞬間、ドクンと心臓が鳴った。

岸優太
岸優太
あの〜?
平野紫耀
平野紫耀
え、あ、はい!?
岸優太
岸優太
1名様ですか?
平野紫耀
平野紫耀
は、はい·····。
岸優太
岸優太
かしこまりました。
こちらへどうぞ。


案内された席に座る。

岸優太
岸優太
ご注文がお決まりになりましたらベルでお呼びください。
では、ごゆっくり。


ニコッと笑って彼は接客に戻っていった。
まだ心臓がドキドキしている。こんな感覚を味わったのは初めてだ。



俺はこのドキドキに気づかないようにメニュー表を開いた。写真付きでオシャレなスイーツやご飯が載っていてどれも美味しそうだ。
そこでふと目に入った旬のフルーツがのったパンケーキというものに視線がいく。このお店のNo.1メニューらしく、お客さんだけでなく店員さんからも人気なようだ。

平野紫耀
平野紫耀
これでいっか。


ピンポーン

岸優太
岸優太
ご注文はお決まりですか?
平野紫耀
平野紫耀
はい、えっと。
この旬のフルーツのパンケーキを1つ。
岸優太
岸優太
かしこまりました。
少々お待ちください。




パンケーキが来るのを待っている間に、接客をしているお兄さんを観察する。
お客さんに対してニコニコとした笑顔を向け、丁寧に接客している。時にコップに水を注ぎにいったりと休憩をする暇もなく動き回っている。
そんな姿がまるでハムスターのように見えてくる。

平野紫耀
平野紫耀
かわいいなぁ·····。


無意識に思ったことを口にする。

今までこんなことなかったのに、しかも男が男に対して可愛いと思うなんて思ってもいなかった。
でも、自覚すれば早かった。

平野紫耀
平野紫耀
ほしい·····。


彼が欲しくてたまらない。
自分のものにしたい。
俺を見てほしい。

そんな欲求が次から次へと溢れてくる。

岸優太
岸優太
お待たせしました。
パンケーキです!


自分の欲求が爆発しそうになったところで注文していたパンケーキがきた。

平野紫耀
平野紫耀
あ、ありがとうございます。
岸優太
岸優太
では、ごゆっくりどうぞ。
平野紫耀
平野紫耀
あの!
岸優太
岸優太
はい?


自覚をしてしまえばもう止まることはできない。

平野紫耀
平野紫耀
お兄さん、お名前なんて言うの?
岸優太
岸優太
岸優太って言います!
平野紫耀
平野紫耀
岸くんか·····。
ふふ、俺君のこと気に入っちゃった。
岸優太
岸優太
本当っすか?ありがとうございます!


彼は俺が言っている意味がわかっていないのだろうか?ていうか、普通に名前教えちゃっているけど。危機感ないのかな·····なんて思ってしまう。

平野紫耀
平野紫耀
今日は君に出会えてよかったよ。
また来るからね、岸くん。
岸優太
岸優太
はい!ありがとうございます!
では、ごゆっくり!


彼がいなくなって、俺はパンケーキを口にした。

平野紫耀
平野紫耀
ん、うまい。


美味しいパンケーキと運命の彼との奇跡の出会いをした。

秘書さん、俺見つけたよ。
結婚したい相手。
難しいと思うけど、絶対俺のものにするから。

だって、

彼がいいから。

 

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