それって、もしかしなくても呪霊......でも、それなら何故僕は気付かなかった?そもそもどこから居たんだ?そもそも隣に居るっていうのは呪霊なのか?
赤い瞳に白髪。頭に浮かぶのは遙だけれど、遙が呪霊な訳が無い。だって遙は昨日まで僕の側に、人間として存在して笑っていたのだから。
でも、僕が気付かなかったということだけが引っかかる。仮にも呪術師だから、身近な人のでもない呪力に気付かないだなんて大問題だ。
...身近な人?
笑って誤魔化す。
本能が気付いてはいけないと警鐘を鳴らしている。
あおい君の嬉しそうな姿だとか、いちごの真っ赤さだとか、そういうものを目に入れた時、大きな嬉しさと少しの羨望と煩わしさが心に巣食う。
僕だって、何で、僕も。そんな言葉がじわじわと自身を蝕んでいくのを感じつつ、それに気付かないフリをする。
こんなの、昔の僕みたいじゃないか。二度と戻らないと思っていたのに。
あおい君の目に、僕は良いお兄ちゃんとして映れているだろうか。そうでなければいけない。こんな小さな子どもに、汚い嫉妬や悲しいことを見せてはいけない。知らせてはいけない。
幼い頃からこの世の汚いところを教えられることがその子の将来にどんな影響を与えるのかなんて、知らない訳がないから。
思考を遮るようにいちごを口に放り込む。
昔から東京校に行く度に畑で何かを貰って遙と一緒に食べていたから知ってはいるが、やはり美味しい。やはり新鮮だからだろうか。
そう言えば、昔遙と北海道への出張の時に行った時に入ったジンギスカンのお店の産地直送アスパラガス、美味しかったもんなあ。新鮮は正義なのかもしれない。