神奈川分校に着くと、珍しく校長が出迎えて下さった。
校長...雨宮さんはお若い。勿論僕よりは年上だが、五条先生の3つ下だ。
先代の校長が急遽亡くなったこともあるが、それにしてもこの年齢で校長というのは異例の事態だ。そして、それ相応の力を持っていらっしゃる。
それなのに謙虚で、誰に対しても礼儀と思いやりを欠かさず、いつも敬語だ。多少の距離感は感じるが、呪術師という職業上、人と仲良くなりすぎるのも良くない。いつ置いて逝くか置いて逝かれるか分からないのだから。そう考えると、合理的な行動なのかもしれない。
微笑んでいる雨宮さんの後ろに小さい影が近付いてきたと思ったら、こちらへ駆け寄って飛びついて来た。
にぱっと太陽のように笑うあおい君は、雨宮さんが引き取った子だ。小学1年生で、元々は児童養護施設に居たのだが、呪術の才能を買われて2年前にここに来た。
僕がここに入学したのは1ヶ月前だが、小学生の頃に遙と一緒に先代校長に拾われて、それからずっとここで暮らしているから、あおい君や雨宮さんとは長い付き合いだ。
珍しい。あおい君が雨宮さんを拒否した。
珍しいこの現象に雨宮さんもショックを受けている。仕方ない。雨宮さんは親バカなところがある。可哀想に。
少し復活したらしい雨宮さんが僕に問う。無理をしていないか、ということだろうか。本当に疲れてはいないし、遙と僕でも食べきれない程の量の果物や野菜があるから、どうせなら食べて貰おう。
話しながら部屋に移動し、果物を切ってお皿に乗せる。そこまで器用ではないから大変だったし、指もたくさん切ったが何とかなった。血が付いたものは僕が食べよう。
危ないから包丁を置いて振り返る。
あおい君の視線は、僕から少しずれたところに注がれていた。