僕はうつ伏せになっている青髪の肩を揺らしながら叫ぶ。
すぅすぅと気持ちの良さそうな寝息を立てる彼はきっといい夢を見ているのだろう。
しかし、幸せを遮るように僕は飽きずに呼びかける。
授業中は寝てはダメ、と言うことはきっと小学一年生でもわかるだろう。
そんな当たり前を覆すかのように彼は寝ているのだ。
そんなのいけないと僕は思い、今必死で彼の肩を揺さぶり叫んでいると言うわけである。
僕は言葉を止める。
彼の顔はみるみる青ざめていった。
きり、と歯を鳴らし、シワのできるほど目を硬く瞑る。
様子が変だ。
僕でもその事実はわかった。
控えめに問う。
当然、聞こえない。
すると、目の前の翔くんの背中がびくりと大きく震えた。
彼は立ち上がって、机に向かって叫んだ。
途端に空調の音が聞こえるほど静まり返り、彼は派手に咳き込んだ。
僕は背中をさする。
どうやら、息を止めていたようだ。
翔くんは無理やり咳き込むのを止めようと唾を飲み込み、荒く息をする。
彼が立ち上がった衝撃で倒れた椅子の音が遠くに聞こえた。
力無く呟く。
机を見つめたままだった。
僕が言葉を返しても、翔くんは下を向いたまま言い訳を探すようにふらふらと彷徨っていた。
背中をゆっくりと、さする。
心臓の反対側でも、その鼓動の速さは伝わった。
予鈴が鳴る。
1時間目が始まる。
僕は予鈴がなり終わるギリギリまで、翔くんの背中を撫でていた。
3枚のプリントが配られる。
1枚目には『めろん中学校へようこそ!』と言う文字がデカデカと書かれていた。
そのほかのプリントには学校での過ごし方、ルール、掃除の仕方、制服の着方、休み時間の過ごし方など基本的なのがつらつらと綴られている。
1番最後には『楽しく充実した中学生活を送ろう!』と言う謳い文句が書かれていた。
その内容を担任の若い女の先生はひとつひとつ丁寧に話していく。
僕はふと、翔くんに目を向けた。
彼はまた気持ちよさそうにすやすや寝ている。
僕はピンと立てた背中を少しだけ丸め、じっと見つめていた先生とプリントから目を離して呟く。
当たり前だが、その小さな声は彼に届かなかった。
僕はなんだか面白くなってみんなのばれないところで「ふふ」と静かに笑った。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。