Na side 🍪
____ 友達 、 だから 。 ____
放課後の教室は、オレンジ色に染まっていた。
窓際の席で、のあは ぼんやりと外を見つめている。
グラウンドから聞こえてくる掛け声と、吹き抜ける春の風。
その全部が、どこか遠く感じた。
部屋のドアに もたれながら、
えと が 顔を覗かせる 。
即答だった 。
のあが 顔を上げると 、 えとは 当然みたいな顔で
腕を組んでいる 。
少し拗ねたような声を出した えとに
のあは、 思わず笑った 。
えとは そう言いながら、
のあの隣の席に 勝手に座る。
距離が 近い。
近すぎる 。
私の気持ちも 知らないから、 こんなことできるんだ 。
好きなのに ____
つくえに頬杖をついて、 えとは じっと のあを見つめる 。
二人の間に、 沈黙が流れる。
時が止まったかのように 。
私は 何を言おうと したんだろうか 。
何を言うのが 正解なのだろうか 。
のあは、 我に返り、冷静さを取り戻す 。
そして、 のあは 自分の言葉を グッとのみ込む 。
口に出した瞬間、 胸の奥が酷く痛んだ 。
違う 。
本当は そんなことを言いたかった訳じゃない 。
けれど、 それ以外の言葉を 選ぶ勇気もなかった。
えとは 悲しそうに 顔を 濁らせたかのように見えた。
が、 すぐにいつもの笑顔に 戻った 。
たったそれだけの ことばなのに
妙に あっさりしていて。
それが逆に、 のあの心を ざわつかせた 。
頷きながら、 視線を逸らす。
これ以上、えとの表情を見てしまったら 、
自分の顔に出てしまいそうだから 。
沈黙が 落ちる 。
さっきまで 普通に話していたはずなのに、
今は 空気が少しだけ 重い 。
不意に えとが 明るい 声を 出した 。
その言い方が、 いつもより 少しだけ 強がって聞こえた 。
本当は そんな言い方を させたくなかったのに 。
廊下を並んで 歩く。
肩が 触れそうな 距離なのに、 さっきより 遠く感じるのは、 きっと気のせいじゃない 。
靴箱の前で、 えとがしゃがみこむ 。
靴紐を結びながら、 ぽつりと呟いた。
えとは、 顔をあげないまま 続ける 。
その言葉に 、 喉が詰まった 。
何を返せばいいのか、 分からないまま、 ただ 立ち尽くす。
えとは、 立ち上がって、 いつもの笑顔を作った 。
「 ま、 いっか 。 帰ろ 〜 .ᐟ 」
そのいつもの 笑顔が 、 今日は 少しだけ 遠く見えた 。
__ 正解 なんて、 結局 分からないまま 。
___ 君に 、 届け 。 ___
校門を 出たあとも、 2人は並んで 歩いていた。
のあは 前を見たまま 、 小さく返した 。
さっき、 自分が言った 言葉が、 ずっと頭の中で 反響している。
__ 友達、 だから 。
本当は 、 そんなこと 思ってないのに 。
その瞬間、 曇っていた空から、のあの 真っ暗な気持ちを 表してるかのように、
小雨が 降ってきた 。
ザァザァ と 音が鳴り響く 。
えとが 隣から 顔を覗き込んでくる 。
むしろ、 怒ってるのは 自分に対してだ 。
言えなかった 自分 。
逃げた 自分 。
このままじゃ、 また 同じことを 繰り返す …
もう、 一生 言えないかもしれない 。
のあは 足を止めた 。
えとも つられて 立ち止まる。
その無防備な顔を見た 瞬間 、 怖くなる 。
でも、 ここで逃げたら 、 もう言えない 。
喉が乾く 。
緊張して、 怖くて、 不安で 、
声が 出ない 。
雨の音が 響き渡る 。
そっと …
えとは、 のあの 手に 触れた 。
あぁ、 こういうところだ 。
鈍感で、 何も気付いてない。
だけど 受け止めてくれる 。
私の気持ちを 。
そーいうとこが …
えとは、 首を傾げる。
本当に、 ただの 確認みたいな 返事だった。
深い意味なんて 考えてない顔 。
だからこそ、 言わなきゃ いけないと 思った 。
一瞬 、 えとの 表情 が 止まる 。
のあは、 ぎゅっとスカートの 裾を握りしめた 。
そこまでは 、 本当 。
嘘じゃ … なぃ ッ 。
言い切ったあと、
心臓が痛いくらいに 鳴り出した 。
えと は、 数秒 、 何も言わなくなった 。
それから 、 ぽつりと 呟く。
のあは 、 逃げ場をなくすように 、 えとの目を
まっすぐ見た 。
風が強く 吹いて、 二人の間を 通り抜ける 。
えとは 完全に 固まっていた 。
その反応が あまりにも えとらしくて 。
緊張していたはずなのに、 のあは 少しだけ
笑ってしまう 。
えとは 顔を赤くしたまま、 何度も瞬きをする 。
えとは 両手で頭をかかえて、 その場でぐるぐるし始める 。
えとは、 さっきから それしか 言葉を発しない 。
のあは 思わず 笑ってしまう 。
えとは 顔を真っ赤に したまま、 のあを見た 。
今度はのあが 固まる番だった 。
えとは、 視線を逸らしながら、 ボソッと続ける 。
頬をかきながら、 照れたように 笑う 。
その言い方が あまりにも えとらしくて 。
のあの 胸の奥が、 じんわり 温かくなる 。
えとの驚き方に 、 もう一度笑ってしまう 。
沈黙のあと、 えとが 少しだけ 近づいてきた 。
確認するように聞くその顔は 、 まだ少し不安そうで 。
のあは 小さく 頷いた 。
その瞬間、 えとの顔が 一気に明るくなる 。
ぽつりと呟いてから、 えとは 急に照れたように 笑った 。
二人で顔を見合わせて、同時に笑う。
帰り道の空気は、さっきまでとまるで 違っていた。
___ 友達、だから。
そう言って逃げた 自分が、
少し前のことみたいに 遠く感じる。
その代わりに、今はただ。
隣にいるえとの存在が、
やけに近くて、温かかった。
君に、 届けと 願った この 気持ちは
一生忘れることのない 、
甘い 夕日に 溶け込んで行った 。
_ その後 _
雨が 止み、 さっきとは 違う、 ピンクと オレンジの イロが 重なり合った 空色に なった 。
のあは 少し考え、
えとに近づく 。
のあは 、 えとの言葉を 遮るかのように、
えとを 優しく抱きしめた 。
のあは 揶揄うように 笑いつつ、
幸せかのような 笑みをこぼす 。
2人の 関係を祝福するかのように
桜の花弁を纏った 爽やかな風邪が 、
2人の 周りに吹くのであった 。
【 🍪 ✖︎ 🍫 ー naet ー 】
友達 、 だから 。 / 君に 、 届け 。
( Fin )













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!