出会って一ヶ月。
瀬戸山くんは、私の飲んでいたいちごオレを
勝手に奪って一口飲むと、眉間にシワを寄せた。
彼はわざと意地悪く、
いちごオレを持った腕を上げる。
私が必死に手を伸ばしても、それには全然届かない。
私が真顔で返すと、瀬戸山くんは
今日一番の楽しそうな声で笑った。
私はぷいっと横を向いたけど、
奪われたイチゴオレを「間接キスじゃん」
なんて指摘する余裕すらない。
一ヶ月前はあんなにも彼の事が気に食わなかったのに
今はこうして、世界で一番大嫌いな彼と笑い合っている。
瀬戸山くんはそう言うと、
購買のメロンパンを私の膝の上にドサッと投げ置いた。
私は文句を言いながらも、
彼が勝手に買ってきたパンの袋を開ける。
一ヶ月前。最初は彼の目つきが怖くて、
言葉にトゲがあって、仲良くなれるなんて
一ミリも思ってなかった。
でも今はこうして呼吸を合わせるように
くだらない事を言い合って、
私の好きなパンを、彼が何も言わずに買ってくる。
思わず聞き返した私に、
瀬戸山くんは「は?」と心底面倒くさそうな顔をした。
1000日間のうち、これが30日目。
瀬戸山くんはそう吐き捨てて
自分の教室へ戻っていったけど、
去り際に耳が少しだけ赤くなっていたのを
私は見逃さなかった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。