第9話

王子と姫と、壊れた祈り 9
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2026/03/06 12:22 更新
揺れは、すぐには形にならなかった。
それでも確かに、城の中の何かが、少しずつ狂い始めていた。
翌朝。
六つの玉を安置する間で、
見張りの兵が眉をひそめる。
ナイゼル
ナイゼル
……昨日より、光が弱い?
気のせいだと笑われ、記録にも残らなかった。
玉は揃っている。
国は平和だ。
それ以上、考える理由はなかった。
だが、ホルミナ姫の部屋では、
確実に「昨日までとは違う朝」が訪れていた。
ホルミナ
ホルミナ
……
彼女の胸が、ゆっくりと上下する。
そのリズムは、以前よりも不規則だった。
夢は、もうあの声に満ちた場所ではなかった。
暗い水の底。
沈んでいく感覚。
けれど今回は、苦しくない。
――祈らなくていい。
誰かが、そう言った気がした。
目覚めは、音もなくやってきた。
ホルミナ姫は、
「起きよう」と思った。
それだけで、世界が揺れた。
まぶたが重い。
身体は、思い通りにならない。
けれど、意識ははっきりしている。
――私は、生きている。
それは、初めて「誰のためでもない」実感だった。

同じ頃、
ナイゼル王子は謁見の場で、重臣の報告を聞いていた。
MOB
国境付近で、小さな不調が出ています
MOB
作物の育ちが、わずかに遅れていると
ナイゼル
ナイゼル
……わずか、か
彼は指を組む。
六つの玉は健在。
凶兆と呼ぶには、あまりにも弱い。
ナイゼル
ナイゼル
様子を見ろ
その判断が、正しいかどうか。
彼自身、確信は持てなかった。

ユリウス王子は、
その日も鍵の前に立っていた。

開くはずのない扉。
それでも、毎日ここに来てしまう。
ユリウス
ユリウス
……おはよう
返事はない。
それでも、今日は何かが違う気がした。

空気が、張りつめている。
ユリウス
ユリウス
……?
そのとき、扉の向こうから、
かすかな音がした。
布が擦れる音。
人が、身じろぎする気配。
ユリウス
ユリウス
ホルミナ?
思わず、名を呼ぶ。

答えはなかった。
だが、その沈黙は、
これまでとは決定的に違っていた。

――「いない」のではない。
――「いる」。

その確信が、胸を締めつける。

その夜、
イフリス王子は剣を振るのをやめ、
六つの玉の前に立っていた。
ユリウス
ユリウス
……なあ
誰に向けたでもない声。
ユリウス
ユリウス
本当に、これでよかったのか
玉は答えない。
だが、一つだけ、
ごくわずかに、音を立てた。

――ピシ。

亀裂が、確かに広がった。

同時に、
ホルミナ姫の部屋で、
小さな声が生まれた。
ホルミナ
ホルミナ
……さむい
掠れ、途切れ、
それでも、確かな言葉。

祈りではない。
願いですらない。

ただの、独り言。

それを聞く者は、まだ誰もいなかった。

世界は、相変わらず回っている。
人々は、平和だと思っている。

だが、
祈りを失った姫が、
祈らないまま目覚めつつある今。

この国が問われるのは、
奇跡の有無ではない。

――祈れなくなった者を、
――役目を失った存在を、
――それでも「生きていい」と、言えるのか。

静かな崩壊は、
もう止まらないところまで、進んでいた。

そして次に壊れるのは、
玉か、
国か、
それとも――
「正しい選択」を信じ続けてきた、人の心だった。
むい(主)
むい(主)
どお?結構書いたよ
むい(主)
むい(主)
もし、良かったら入ってください🙇‍♀️!
ライブ参戦予定じゃなくても入ってもらえると嬉しいです

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