僕達が来ることは現当主に伝えてあるそうだが、屋敷前に居る門番達に確認のため引き止められる。
直後、屋敷の二階から一が響いた。
門番曰く、音がした方には現当主の部屋があるらしい。
ファインダー達を置いて僕とリナリーは門番の真上を飛び込み、二階のバルコニーへと素早く移動した。
バルコニーのドアは換気の為か開いており、部屋の中に入ることが出来た。部屋には白髭を生やした老人が棚上に敷かれた布を掴んで床に倒れていて、棚に飾られていただろう壺が幾つか床に落ちて割れている。
老人の傍には車椅子が置いてあり、状況から察するに車椅子から落ちたのだと分かる。
布は転んだ際に咄嗟に掴んでしまったのだろう。
リナリーが現当主の傍に駆け寄れば、「だ、誰だ……」と聞いてくるので、「こんな場所から失礼します。黒の教団です」とリナリーが簡単に挨拶を済ます。
現当主に怪我がないか確認した後、リナリーに話し相手を任せ、何故倒れていたのかを尋ねた。
現当主は立てない訳では無いが足腰が悪く、日常的に車椅子を使用しているのだとか。
そして、自分で車椅子に座ろうとしたものの、上手く座れずに重心が前にきてしまい、床に転んでしまったのだという。
他の皆も屋敷へ通してもらい、談話室へと集まって暫くすると「父上!」と言一人の若い男性がやって来た。
現当主が次期当主であり、明後日結婚するという息子の紹介をすると、息子は警戒の眼差しをこちらに向けた。
ファインダーの男とリナリー達とで話が始まり、僕は静かに会話に耳を傾ける。
ネックレスに関しての噂は事前に聞いた通り。
現当主である父親はネックレスにまつわる噂を多少信じているようだが、息子は真逆。
噂がデタラメであると証明する為、花嫁を一族の一人として迎える為、披露宴でネックレスを贈る予定だと言う。とはいえ、家宝なので式が終われば預かり、保管するようだ。
運ばれて来た小さな箱が開かれれば、中には宝石が散りばめられた煌びやかな銀のネックレスが入っていた。中心にはエメラルド色の楕円形の宝石が嵌め込まれている。ネックレスを見た瞬間、現当主が何処と無く沈んだ顔をした。
ピリついた空気が流れ始め、僕は溜め息をついた。次期当主と話す気は無かったが、このままでは埒が明かないので僕はゴーレムを使って会話をする事にした。
ゴーレムから声が流れれば、貴族親子はギョッとした顔をする。そんな彼等をスルーし、僕は言葉を続けた。
僕がそこまで言うと、次期当主は物言いたげな顔をしながら渋々ネックレスを自分の首につけ、壁の前に立った。僕が右手の手袋をさり気取っていると、リナリーやウォーカー、ファインダー達が「何をする気なんだ?」という不安気な顔でこちらを見つめてくる。
取った手袋を団服のポケットに入れた後、僕は右の拳で次期当主の顔面横を狙い、壁を殴った。
拳は僅かに次期当主の顔横をかすり、部屋にドンッ!!という衝撃音が響く。
全員が驚きポカンとしている最中、次期当主は口をパクパクさせ硬直している。
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フルーレside
────────宿にて。
先程、貴族の屋敷にいた俺達は主様の意外な一面を見てしまった
主様曰く、“あらゆる災いから守るという噂の通りならば、ネックレスが今の拳からも守ってくれたはずだ”とのこと。
しかし、主様の拳は僅かに次期当主の頬をかすった。つまり、“加護の力は働かなかった”。
その事に次期当主は「当然だ!今ので分かっただろう!」と怒っていたが、現当主は何処か驚いた様子だった。
去り際、アレンが「やっぱり無駄だったんですかね……?」と弱気になると、主様は「……いや、無駄ではなかったようだ」と言って黙ってしまった。そして──────────現在。
宿で食事をしながらアレンが残念そうにすると、リナリーが「どうかしらね……。加護の力の発動条件が変わったのかもしれないし、あなたがエクソシストだから力が発揮されなかった可能性もあるし……。とにかく、情報が少ないのよね」と苦笑いする。
ベリアンさんが辺りを見回すと、リナリーが「あなたならさっき“出かける”と言って何処か行っちゃったわ」と答える。
リナリーの言葉に俺達が反応すると、リナリーは「ううん、なんでもない」と笑顔で誤魔化した。
俺達が起きている間に主様が帰ってくることはなく、俺達は先に眠ることにした。
そして、いつも通り元の世界で目を覚まし、夜になって眠れば夢の世界で目を覚ます。
不思議と身体に疲れは残っておらず、今の所眠気もない。
男性ファインダーから調査の続きを行う、と言われて急いで支度を済ました後は、宿の外でアレンやリナリーと合流する。けれど主様とイトの姿は無い。
テディさんが尋ねると、男性ファインダーは「実は、印のついた地図だけ渡されまして……。自分もどういった場所までかは……」と困った顔をする。
男性ファインダーの後について行き、暫くすると調査を行う場所に着く。そこがどんな場所かを知った俺達は目を丸くして立ち止まった。
主様が何を考えて居るのか、リナリー達も俺達にも分からず立ち尽くしていると、「皆さんおはようございます!」とイトが挨拶しながらこちらに走ってくる。
イトに案内されて辿り着いたのは、誰かの墓の前。傍には主様が静かに佇んでいた。
アレンが墓石を確認すれば、そこにはあの貴族親子と同じ姓で女性の名が掘られてあった。隣には、同じ姓の男性の名が掘られたお墓が。
ロノが疑問を抱くのも無理はない。何なら、ロノだけでなく俺達もよく分かっていない。
祖父母のお墓が今回の任務と何か関係あるのだろうか。
真横に立つ木に視線を向ければ、シャベルが幾つか用意されていた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。