第6話

chapter 5
515
2024/05/10 14:55 更新

そして迎えた球技大会当日。
朝から学校中が凄く浮ついてる。
みんなメガホンを作ったり、私達みたいにうちわを作ったり。
男女関係なしに“行くぞー!!!”なんて円陣を組んじゃったりして。

開会式が終わり、それぞれの種目へと別れてく。
バレーは第1体育館、バスケとドッジボールは第2体育館、サッカーは第1グラウンド。
開会式は第1体育館だったから、私たちは体育館を出て運動用の白靴に足を通した。

Mayura
いやぁ、楽しみだねぇ!!

まゆらちゃんはそう言いながら、うちわにもう一度目を通した。

あなた
このうちわ超可愛いよー…!
Mayura
でしょでしょ!

何回見ても可愛い。
この青とピンクのコントラストが特に。

……裏側を除けば。

裏側の“魔除け”を見ながら、前の男の子の背中を少しだけ睨み付けてみた。
……そう。その背中の正体は、紛れもない。
私に“魔除け”のプリクラを貼り付けたさとみくん本人である。

Mayura
あ、今あなたがさとみくんにガン飛ばした
あなた
え、まゆらちゃん!?!?

まゆらちゃんは少し笑いながら、からかうように大きめの声で話す。
その声はやっぱり本人にも聞こえちゃったようで。
さとみくんは、“誰だよ、俺にガン飛ばしたやつ”なんて言いながら後ろを振り返ってくる。

あなた
…あ、

言葉を失った。
そういえば、今日さとみくんを正面から見ていなかった気がする。
ずっとまゆらちゃんと話していたり、4人で行動する時も私はさとみくんの背中をこうやって、追いかけるように見ていた。

その振り向いた時の彼のセンターで分けられた前髪。
遊ばれた彼の癖毛。
軽く香る、香水の匂い。

Mayura
なにさとみくん、今日張り切ってるじゃん!髪型超いい!
Satomi
あー、まじ?ありがと

少し照れたようにニヤリと笑う彼。
申し分ないはずなのに、私はまゆらちゃんの様に声を掛けることが出来なかった。







そのまま私だけなんだか気まずいような空気が流れながら、第2体育館へと足を運んでく。
さとみくんやころんくんたちとお別れをし、最終の競技説明を受けて。
1試合目から早速私たちのクラスだから急いで準備をして。

そして、始まりの合図の笛の音。
一気に緊迫感が高まり、1試合目だからか観客の目線も鋭い。

ジャンプボールから始まり、うちのクラスは1番背の高い170cmの子、別クラスの子は特別身長が高いって言う訳でもないが、華奢で綺麗なゆる巻きポニーテールの可愛い子。多分160cmくらい。
その子のジャンプ力は、想像以上に高かった。
身長差は凡そ10cm程度なのに、負けず劣らずなその運動神経の良さ。
“あはは、ごめーん!”なんて笑い、すぐさま真剣になるその綺麗な顔立ち。
うちのクラスのボールだったはずなのに、いとも簡単にボールをキャッチし、それを勢いのあるスピードで投げた。
ピッと笛がなり、うちのクラスは1人減る。
その一瞬の迫力に、緊張感が張られていた体育館内はすぐさま歓声が響き渡り、大盛り上がり。
その子はやった!と言いながらはしゃぎ、跳ね返ってきたボールを取り外野へと投げた。


Mayura
あの子やばくない!?
あなた
可愛いし上手いとか何事なの…!?

ボールを持っている外野の子から離れながら、まゆらちゃんと小声で話す。
やっぱり、何度も思うけれど私は運動が得意な訳では無い。
けれど、あの子は運動もできるし可愛いし、愛嬌がある。
多分あんな感じの子が、私の思い描く“お姫様”なのかな。
ボールから逃げながら考える。

あの子だったらどんなロマンティックな恋をするんだろ。
やっぱり王道系?
うーん、アラジンとジャスミンみたいに、魔法の絨毯に乗って広い世界を見ていそうな感じもする。

いいなぁ。

私もあんな風だったらいいのにな。
そう思っていた束の間。




















あなた
…ぁ、!?





強く顔面に衝撃を受けた。
目の前が見えなくなって、目を開けられない。
鼻の辺りがだんだんとジンジンしてきて、熱くなる。

遠くから、“大丈夫!?”なんて声が聞こえる。
頷きたいはずなのに、頷くことが出来なかった。



そして、そのまま流されるようにコートの外へと引っ張られ、身体が浮く感覚がした。

痛さで何も考えられなかった。
その時の私は、まさか自分がいつも憧れていた、お姫様抱っこをされているなんて気づかなかった。





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