DINO side
第一陣と合流し、送り主はわからないが正確な道案内付きの地図のもと、ヒョンのもとへと向かう。
一体、誰がこの地図を僕達に渡したのだろうか。
こんなにも正確な地図は、内部の人間くらいしか作れないだろう。
そして、ただの構成員ではなく、きっとボスなどの上層部に近しい人でないと、ヒョンのいる部屋は見つけられないはずだ。前捕まえた構成員のこともあって、butterも学んでいる。
先頭を進むホシヒョンと僕。
しかし、次の曲がり角を見た時、違和感を感じた。
…いや、何か気配を感じた、と言ったほうが正しいのかもしれない。
「…ホシヒョン、止まって。多分、角を曲がったら誰かいる」
小声でヒョンに静止をかける
ヒョンは少し驚いた顔をしたが、すぐに後ろのみんなにも伝えてくれる。
ドギョミヒョンだけはどこか納得したような顔だったが、他のみんなは一瞬だが、驚いた顔をする。
僕はその時、同時に頭をすばやく回転させていた。
第一陣への対応には当たらなかった人物?
でも、第二陣の情報では、この道に人はいなかったはず。
じゃあ、防犯カメラを擬装できる機械をもっていた?でも、広い範囲において行うことは難しい。
となると…?
誰だ
誰が当てはまる?誰が……
「こら、ディノ。頭を冷やせ」
考え込んでいたら、クプスヒョンに頭をこつん、と拳で軽く叩かれた。
ヒョンの顔は、怒っているわけでもなく、ただ安心できる、頼もしいリーダーとしての威厳があった。
「…ごめんなさい。1人で突っ走っちゃいました」
素直に謝ると、ヒョンたちの空気も少し和らぐ。
「ディノや。多分、向こうにいる人。信用していいんじゃないかな」
すると、急にドギョミヒョンがそんなことを言い出した。
みんながヒョンのほうを振り向く。
「多分だけど、あんまり人間らしくない気配だよね?クローンとかそこらへん。てなると、僕的には、向こうにいる人こそ、地図をくれた人だと思ってるんだけど」
はっとした。
確かに、クローンなら、どこか人間離れしているところもあるがゆえに、できることは幅広い。
そして気配を読み取りにくい。
…え、でもまって?
butterってクローンがいるの?
「クローンって…なんで?」
僕の疑問を、ミョンホヒョンが代弁してくれる。
ドギョミヒョンは目を丸くさせて、ああ、と言うふうに斜め上を見つめる。
…このヒョン、誤魔化すつもりだな?
「…ミンギュヒョン、クプスヒョン!」
力の強いヒョンたちを動員してドギョミヒョンに情報を吐かせようとする。
「え、あ、ちょ、馬鹿力コンビはダメじゃないかな!?あ〜〜〜〜!」
「おいこら、吐けよ。クローンについて。なあドギョマ。俺たち同い年だろ?」
「リーダー権限だ。命令。吐け」
…ちょっと後悔。怖いね。
まあ、吐かせられるのならいいか。と思い、他のヒョンたちと共にドギョミヒョンの行末を見守る。
「…っていうか!クローンにはみんな会ったことあるし、知ってると思うけど」
…え、爆弾発言をここでした。
さっきまでよりも強く捕まえられている。かわいそうに。
でも、会ったことがある?一体誰だろう?
あの機械みたいな人?それとも、パンって人?
…あれ、もしかして、
「…SEVENTEENの皆様ですね。お待ちしていました」
背後から、あのパンという人の声が聞こえた。
全員が青い顔で振り返る。
…でも、お待ちしていました?
今までとは打って変わり、なんと言うか…感情が抜け落ちた?感じになっている。
…この人がクローンなんだ……
「…お前が、俺たちに地図を送った、クローン、なのか?」
クプスヒョンが慎重に聞いた。
その言葉に、彼は何も言わない。…ただ、首を縦に振るだけ。
「なんで急に?お前はある程度はいい地位にいたんじゃ…」
ウジヒョンも質問をした。
彼をじっとヒョンを見つめる。ヒョンはその何も写さない瞳にたじろいだ。
「…いいえ。地位が高いのはありえませんよ。クローンは、所詮奴隷です」
静かに、けれどもしっかりと言葉を発していく。
「…ジョンハンさんに、食事を運ぶ役割を担っていましたので、ここからの道のりもわかります。…信じていただけるのなら、安全にお連れいたします」
一息で言い終え、僕達の返事を待つ。
でも、ウジヒョンは簡単には引き下がらなかった。
「だから、なんで俺たちに協力することにしたのかが聞きたいんだ」
「正直、お前にとってのメリットはないはずだ。ここでの居場所も失い、不安定になり…。今まで以上に酷い扱いになる可能性だってあるだろう?」
彼は俯いて、静かに口を開いた。
「…なんでもいいから、すがりたかった」
「結局は私は失敗作で、上手く情報を読み込んで模倣したから、どうにか生き残っている落ちこぼれ。…なにも、救いなんてない」
「ただ、クローンということを隠して、自分がまるで人間のように振る舞う時だけは、気持ちがよかったんです」
「…自分も、1人の人間なんだと。自立した生き物なのだと…思うことができたのです」
「でも、彼が戻ってきてしまって、無力化された今、もう私たちクローンはおしまいです」
「…最近は減っていた更新が、また来てしまう」
「そうやって落ち込んで、いっそのこと死ねたらいいのに、と思っていました」
「…でも、彼は私を救いあげた」
『…俺が、お前たちを助けてあげようか』
『俺が、上手く情報を使わせなければいい。使えないような情報だけを、意図的に残せばいい』
『そして、お前たちクローンを、一時的に封じてしまおうか。外にでも出して』
『そうやって、俺にヘイトを向かわせて、俺が全部背負うよ。だから、お前たちは逃げて』
『特に君なんかなら、簡単に人間として社会に溶け込めるよ』
『大丈夫。俺も、もともとそっち側だから、何も考えずに自由になって』
パンが言う話は、僕たちにはかなりの衝撃を与えた。
まさか、ヒョンが意図的にクローンを逃すなんて…。
「待って。ヒョンが無力化されたって、どういうこと?あのヒョンが、そんなに動けない理由は何?」
沈黙を突き破り、ドギョミヒョンがそう質問した。
僕は単純に抵抗しても意味がないからだと思っていたけれど…。まさか、他にも理由があるのか?
質問に、パンはかなり苦い顔をする。
そして、迷いが見えた。これを伝えるべきか、否か。というような迷いが。
そんな彼の心情を察して、クプスヒョンが言った。
「どんなことがあろうと、俺たちがあいつを助けに行くのには変わりないし、俺たちだって、もっと知りたいんだ。…だから、教えてくれないか」
その通りだ。どんなに酷い理由であっても、僕達は絶対に止まらないだろう。
そのヒョンの言葉に、パンは閉じていた口をゆっくりと開き、
「………彼の…親、が、殺されたのですよ。……目の前で」












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。