前の話
一覧へ
次の話

第10話

10話
29
2021/04/24 04:29 更新
僕は…全てが…何もかも遅いんだ。
なぜ気づかなかったんだ…。

だけど、彼女へこの想いは伝えられない。
だって…っ
神様
彼女は…あの世界にいるのだろうか
あの、琥珀のように透き通る綺麗な世界に君はいるのだろうか…。

もう、今じゃ、戦争とかいう戦いはないんだろうな。
そして、どこもかしこも「ヒト」だらけなのだろう。
そんな中に君はいるかい…?
僕、君のことが好きだよ。
でももう伝えることはできないのかな…。
僕は空を見上げていると、1羽の小鳥が大木(身体)に止まった。
神様
君の羽は、どこの世界にも
飛んでいけるだな…
…僕も鳥になったら、彼女に
逢いに行けるのかな
「ちゅん」と鳴いて、飛び立っていった。
人間
──〜〜!
神様
っ?!
そんな時だった。
“人間の声”が聞こえた。

人間がここに来ることはなかった。
何故だ…
人間
…〜…はは…
神様
どうしてだ…
そして、声がする方をずっと向いていると、1人の男がやってきた。

頭にはタオルを巻いていて、手には…
神様
っ?!
名前は知らないが、手には見る方に“凶器”を持っていた。
鋭い刃がこちらを向いている。
人間
ふぅぅ…ここか
そうして見上げた先は──僕だ。
男はもう一度息を吐き、その鋭い刃が付いている機械のようなものを動かした。

だけど、僕が聞こえてる音は機械音ではなく、僕の心臓の音だった。
怖い

今から何をされるか分からない。

とても怖い

誰か

嫌だよ

怖い

怖い
恐怖心だけが僕の感情を支配する。

今からそれで僕は“死ぬの”?
そうして、男はその凶器を、僕の心臓を貫いた。
神様
っ…くっ
痛い…

痛いってこういうことなんだ。

あぁ…僕の身体が切られていく。
そこで僕は確信した。
もう死ぬんだ。
神様
…はは、神様も死ぬんだな…はは
はぁ…痛いな
悲しい。
痛い。

そんな感情が込み上げてきたが、“生きていたい”とも思わなかった。

涙が頬を伝う。
何故だか、望んでもいない死に方で、痛い思いをしているというのに、最後の最後まで頭に残るものは
“君”だった。
そして脆い身体は、地面へと崩れ落ちていった。
神様
もし僕に来世があるのだとしたら
その時は…



──人間でありますように。

プリ小説オーディオドラマ