潔 世一 side
次の日に、千切からあなたの様子を聞いた。
潔「千切、あなた、どうだった?」
千切「…」
潔「ちぎ、り…?」
千切「何もなかったかのように笑ってた」
潔「笑って、た… ?」
聞くところによると、彼女は純真無垢な少女のように
にこやかに笑っており、ときおり見た陰も全てなかった
と言う。
千切「あいつ、逃げるためにブルーロックに来たって言ってたんだ…でもあんな無垢な笑顔の裏に何があるのか、知りたくなくて…聞けなかった」
確かにあなたは試合中でも冷静で、あんま熱くは
ならなくて。でもその内にはとてつもない陰が潜んでた
ようだった。
千切「俺たちが見なかったあの数時間で、あいつの心境に何か変化があったのは間違いない。でも…」
苦しみを堪えたような顔に、心がキュ、となる。
つらそうだった。
潔「つらいこと思い出させてごめんな。またあなたと話、してみようと思う」
千切「あぁ…」
そう言ってた千切は少しだけ震えてた。
俺があなたのところに行っていたら、一体、
どうなっていたんだろう…純真無垢に笑う彼女に、
なんて言葉をかけたんだろ…
そうすると、ノックの音が響いて、部屋に、誰かが
入ったきた。
千切「…っ」
あなた「久しぶり、みんな。試合お疲れ様」
そう言って微笑んでいたのは、他の誰でもない。
あなただった。でも千切の話とは少しだけ違う。
“純真無垢な少女”とは見えなかった。
普通の、何も変わらない。15歳の高校1年生。
まるで、前の陰がありつつ輝いていた彼女から
陰を、全て取り除いたような、そんなかんじがした。
瞳は太陽のように輝いており、下ろしていた黒髪も
ポニーテールになっている。微笑みも、柔いものでは
なく、はつらつとした、元気な微笑み。
國神「もう大丈夫なのか…」
あなた「大丈夫だよ。それより」
そう言うと彼女はバッと、頭を下げた。
あなた「みんなの試合、最後まで見届けられなくて本当にごめんなさい」
昨日、千切の前では1度も出てこなかったという、
俺たちへの謝罪。千切を見ると、その紅い瞳が少しだけ
震えている。混乱しているのだろうか。
今村「全然!しかも、あなたちゃん、前より明るくなってね?俺タイプかもー!連絡先教えて!!」
あなた「、えっと…?」
國神「おい、やめろよ。困ってるだろ」
多少の変化に、みんなも気がついているようだった。
千切「っ…」
千切の顔がまた歪む。もうつらい顔は見たくない。
知りたい。そう思った、1日。
潔世一 side end.
あなたside
その瞬間、モニターの電源がついた。
絵心「やぁやぁ、才能の原石共」
絵心さんによると、今から身体機能強化トレーニング
が始まるらしい。なんでも、上位の棟の一次選考が
まだ終了していないからだとか。
絵心「それからあなたの名字あなた」
あなた「はい…?」
絵心「お前、一次選考でまともに指示を出したり戦略を立てたの、最後の試合だけだろ」
バレてる…そうだとは思ったけど。
絵心「よってペナルティー。今日から俺と一対一で戦術、フォーメーション、など現代サッカーについての講義を行う。拒否権はない」
蜂楽「えぇ⁈一対一⁈あなたっち、大丈夫なの?」
臥牙丸「そういえば、マネージャーとかの経験がないんだってな…なら仕方ないかも」
絵心「よってアナリストの提出レポートは廃止。データは自動送信されるようにしておく。選手のサポートに
徹しろ。あなたの名字あなた以外はマネージャーの経験があるはずだから分かるだろう」
…ちょっとは楽になると思ったのになぁ。残念。
学校だけで講義って十分なのにね。
絵心「ってことで。あなたの名字あなた、今からモニター室に来い。以上」
いつもどおり、言うだけ言って、彼はモニターから
消えてしまった。
蜂楽「ねぇねぇ、思ったんだけど、あなたっちがいないってことは、スポドリもタオルも、全部俺たちでやらないといけないってこと?」
潔「そう、なるよな…」
千切「まあ、しょうがないだろ。あなただって講義受けるんだし」
みんなの言葉に少々申し訳なくなってくる。
ただ仕方のないことだ。どうしようもない。
あなた「じゃあ私、行ってくるね。みんなも頑張って」
にこやかに。笑顔で。でも無邪気な少女ではなく、
しっかりした面影は残しつつ。影は消しつつ。
私は太陽、私は太陽、私は太陽、私は太陽、私は太陽
私は太陽、私は太陽、私は太陽、私は太陽、私は太陽
私は…………..
あなたside end.
帝襟アンリ side
アンリ「絵心さん、あなたちゃんに講義ってどういうつもりですか?贔屓とかになってまた抗議が」
絵心「黙れ、アンリちゃん。今からすることは一次選考を突破したやつなら誰でも知ってるようなことだ。実際、他のやつらは試合ごとに指示を出したりフォーメーションを考えたりしている。やってないのはあいつだけだ」
アンリ「でも…あなたちゃん、なんか、変わって、ませんか…?倒れる前と後で少し、その…」
なんと言ったらいいか分からないが、圧倒的に違う。
違和感を感じてしまうのだ。無意識に。
絵心「うん、そうだね。あなたちゃんは変わった」
__________まるで“別人”みたいにね。
アンリ「な、何か、分かるんですか、絵心さん!」
絵心「うん、分かるよ。あなたの名字あなたから一体何が変わったのか。どうして変わったのか。大体想像がつく」
アンリ「じゃあ」
絵心「言わないよ」
教えてください、そう言う前に絵心さんは私の言葉を
遮った。淡々と。冷静に。
アンリ「な、何でですか⁈もしあなたちゃんに危険なことがあったら…」
絵心「さすがにそんなことになったら俺が何とかするよ。でも、あなたちゃんがどうしてこうなったかは、俺は言わないし、今後言うつもりもない。どうしても知りたかったら自分で考えなよ」
アンリ「で、でも。私超能力者でもないし、そんなの分かりま…」
絵心「俺はもう、十分ヒントを出している。ずっと、俺が一貫して言ってることさえ分かればアンリちゃんも、原石共も。きっと分かるよ」
ヒント…そんな、何も分からない。何も分からない。
絵心「あなたちゃんの話はここで終わり。あなたちゃんと一緒にミーティングルームに移動してそこで講義するから準備しといて」
アンリ「…分かりました」
絵心さんが一貫して言ってること…みんなでも、
分かること…難しいな。
あなたちゃんの過去にも影響とか、してるのかな。
選手の中に誰かキーパーソンでもいるのかな。
アンリ「難しいな…」
あなたちゃん。本当にすごいと思う。周りにも愛されて
努力もできて。才能もあって。
本人は気がついてない先天性の才能も。後天的に
身につけたであろう実力も。そのどれを取っても。
誰にも代わりができない人材。
私は、そんなことを思いながらミーティングルームを
整えていた。でも一向に答えは出ないまま。
彼女に正解を告げられる人物が現れるのだろうか。
この青い監獄に、咲いた、輝いた星の種を。
無事、咲かせることができたなら。
また
ainaです。今回もサイレントで。いきたいのですが、1つだけお礼をさせてください。

碧桜🩷🧸🩵@低浮上さん、スポットライト、ありがとうございます。これからも頑張りますね!
それではまた次の物語で貴方をお待ちしております。
追記
絵心さんが言っていた“一貫していること”がかなり大ヒントとなってます。よかったら考察してみてね。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。