前の話
一覧へ
次の話

第7話

第六話
299
2025/09/19 13:42 更新

(なまえ)
あなた
………ぅ“う“…

夕暮れの涼しげなにおいと妙な身体の痛みを感じ、わたしは重いまぶたを開ける。

作業が終わり、安心したと同時にエネルギー切れしてしまったのだろう、気づけばわたしはデスクに資料を広げたまま眠りについていたらしい。

これはまずいと思い、がばっと身体を起こす。

ぱさり

静かに布の擦れる音がして、何かが床に落ちた。
(なまえ)
あなた
タオル、ケット…?わたしこんなの掛けてたっけ…?

記憶にないものがそこにあり、わたしは頭をひねらす。思い返してみるが、昨日(ほとんど今日)は作業が終わりそのまま眠ったので、こんなものを掛ける余裕もなかったはず。
(なまえ)
あなた
………もしかして、ミランくん…?

そういえば昨日は忘れ物を取りにミランくんが来たはず。あ、鍵返してもらったっけ?

ふとデスクに視線を移すと、丁寧に感謝のメッセージが書かれたメモといっしょに鍵がおかれてあった。
(なまえ)
あなた
…こういうとこマメな人だなぁ、ミランくんって…

そうつぶやいて、ふっと笑みをこぼす。
と、急に電話のベルがじりじりと小刻みに音を立てる。
(なまえ)
あなた
はいはーい

くるくると数回指を回し、受話器に向ける。
ひゅうと受話器が自然に浮かび上がり、わたしの元へと進んでくる。
(なまえ)
あなた
『もしもし?』
???
📞『あ〜!もしもしあなたクン!』

その声の主は、意外な者だった。
(なまえ)
あなた
『え、あ、貴方様は__…』
???
📞『あー!また堅苦しく喋ってない〜?』
???
📞『もっとゆるぅく話しなよ!
…まぁ、あなたクンが若いってのもあるけどさぁあ!』
(なまえ)
あなた
『すみません…まだあまり慣れてないものでして…』
(なまえ)
あなた
『ところで、そちら側からお電話なんて珍しいですね、どういったご用件でしょうか?』
(なまえ)
あなた
『…………ギルザレン様』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『やぁやぁ、ちょっとね〜、あなたクンと久々に話したいなぁ〜ってね!思って!』
(なまえ)
あなた
『えぇ?特に面白い話題はありませんケド…』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『いーのいーの!なんかまた平和なんたらみたいなやつで疲れてるでしょ?こう言ってなんでもないコト話すのも大事なんだからぁ!』

言動がまるでおじいちゃん。
かわいらしいヴァンパイアだな〜なんて思う。
(なまえ)
あなた
『たしかに、大切ですよね笑』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『それでね、これヴァンパイアも違う人から聞いた話なんだけどさぁ!』
(なまえ)
あなた
『なんでしょう?』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『人間たちがね!誰でも魔女に対して武力行使をしていいって言う“対魔女武力行使許可条例“って条例と、この星から魔女という種族自体を撲滅させる、“魔女撲滅組織“を作ったらしくて…』
(なまえ)
あなた
『…え?』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『それで、あなたクンのとこの使い魔ちゃんとか魔女ちゃんたちは大丈夫かなって…』

うそ、うそだ、

だって、わたしたちは人間に何もしてないじゃない?
(なまえ)
あなた
『そんな、ことが…?』

強いめまいがする。
なんで?なんで?
最善を尽くして頑張ってきたはず。

なのになんで、なんで?

わたしの思いは、祈りは、何も伝わらなかったの?
(なまえ)
あなた
『…どうしよう、どうしたらいい、?どうすれば、どうすれば___…!!』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『あなたクン?あなたクン、落ち着きたまえ』
(なまえ)
あなた
『ギルザレン様………』
(なまえ)
あなた
『わたし、わたし、頑張って、』
(なまえ)
あなた
『がんばってきたんです、今まで、何百年も、ずっと』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『うん、うん、知ってるよ、ヴァンパイアも。』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『いっしょに付き添ったりしてたからね、あなたクンが小さい頃から。』
(なまえ)
あなた
『わたしが、指導者だから、みんなをまとめなくちゃだから、1番強いから、だから』
(なまえ)
あなた
『頑張らないと、って』
(なまえ)
あなた
『ずっと、ずっとそうやってきたのに』
(なまえ)
あなた
『わたしはただ、争いなんてしたくなかっただけなのに……!』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『あなたクン……』

はぁはぁと荒く呼吸をしながら、わたしは早口で捲し立てる。

こんなことが、あっていいはずがない。
なぜそこまでして人間は、わたしたち魔女を煩わしく思う?
(なまえ)
あなた
『ここから、どうすれば、もう誰も死なずにいられますか?』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『え…?』
(なまえ)
あなた
『わたしは、もう、死んでいく仲間を見たくない。尊敬していた魔女が、先輩の魔女が、本来その方が指導者になるはずの魔女が、目の前でわたしを庇って死んだんです。まだ幼くて、のろまで、最弱のわたしを庇って、死んでいったんです。』
(なまえ)
あなた
『わたしよりも永く生きていた彼女は、もちろん前指導者のことも知っている。指導者がどんな仕事をするのかも、きちんと知っているはず…!』
(なまえ)
あなた
『なのにわたしに、次はあなたの親しい人からの呼ばれ方だよ、って、ぼろぼろになった顔で、体で、言って…くれて……!!!』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『…うん、うん………』

先ほどの条例やらなんやらの話は、心に深く残っていた傷跡を思い出させる。
その傷跡は、思いを全て他種族の指導者にぶちまけるほど心の臓に深く食い込み、えぐっていく。

自分の親と同じくらい尊敬していた、先輩の魔女。

かわいらしい見た目に反し、魔力は膨大、強さも半端じゃない。

魔女の中の魔女な彼女は、わたしの大きな憧れの存在であった。
記憶の中の彼女はいつもツインテールをしていて、リボンを巻き、ふわりとスカートをゆらす。
その仕草が、もどかしいほどにうつくしい。
(なまえ)
あなた
『ギルザレン様…ごめんなさい、わたし、もう、どうすればいいか……』

言いかけた時、ふっと背後に気配を感じた。
???
『あ〜もしもしギルザレン様〜?』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『お!この声は___…』
魔使マオ
魔使マオ
📞『ウチウチ、魔使マオ〜』
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『マオクン!』

いつのまにか、マオちゃんがいたらしい。
わたしから受話器をそっと取るとギルザレン様と何やらお話を始めた。
魔使マオ
魔使マオ
📞『それじゃああなたの親しい人からの呼ばれ方はウチに任せて
ギルザレン|||世
ギルザレン|||世
📞『あぁ………よ、………も……

頭がぐわんとしてきて、周りの音が聞こえなくなる。
何を話してるのかもわからない。
目の前が……ぼやけてきて____……
いつのまにかわたしは、また眠ってしまったようだった。

プリ小説オーディオドラマ