❲ オークション会場 ❳ < あなたの下の名前( カタカナ ) 視点 >
オークション会場に居た悪者の人々が悲鳴を上げ、
辺り一帯がざわめき合い騒然の化す。
地獄もさながらの景色である。
黒に赤紫色のインナーを入れた髪を揺らせて
私の前にふわりと着地したのは、
ザリ こと ヴェザリウス、お父様の護衛係の青年だ。
昔、お父様が訪れた遥か遠い国で拾った孤児らしく、
元々は私の国の言葉と別言語で話していた。
けれどザリ自身がこちらの言葉を勉強したからか、
少しであれば話せるし、通訳も出来るので、
別言語を話せない私にとっては頼れる存在である。
ザリの指差す先にはウィルとベンタの姿。
ヒットマンを名乗りつつ銃を振り回すウィルと、
敵に一切の容赦の無い攻撃浴びせるベンタは、
どこからどう見てもヴィランにしか見えないだなんて
本人達には言わないでおこう。
そして2人もザリ同様に遥か遠い国で拾われ、
銃術と武術、戦い方に違いはあれども
立派なお父様の護衛 兼 戦闘員なのである。
こんな荒れた場所で笑い話が出来てしまう私達も
中々に狂っているのかも知れない。
でもこの場所だと、それすら霞むのだ。
人を金で売り買いしている人間なんぞに比べれば、
私達の方がマシだなんて思えてしまう程に
愚か極まりない話だ。
そんな言葉を発せば、ビクリと肩を震わせる彼ら。
睨む様にこちらを見る仲間想いの子も居れば、
身を寄せ合って震えあっている子も居るのを見るに、
さぞ捕まった場所が悪いのが見て取れる。
痩せこけた頬、骨と皮だけの細い手足、光の無い瞳。
彼らは確実に私達を、人間を信用出来ない、
過去でも、そしてこれからでも。
ふわりと横に着地したウィルが私の方を見て言う。
ベンタは…、まだ忙しそうなので
ウィルに頼もう。
ちなみにウィルには翻訳機を渡しているので
難しくない多少の会話なら翻訳してくれる。
そう言って彼らの方に振り返ろうとすると
青年の1人が長い爪をこちらに向け、迫ってきていた。
それは私の方に向いていると意識が判断し、
私は思わず目を瞑ってしまった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!