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第1話

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359
2019/08/12 08:09
9月1日。
長い夏休みも終わってまた学校生活が始まるこの日。
今日は会議の準備があるとかで午前授業。
僕が足早に教室を出て、下駄箱に向かうと自分の下駄箱の中に一枚の紙切れ。
"放課後屋上で待ってます"
筆跡から見て、後輩のあなただ。
また何か相談でもあるのかな。
そのまま靴に履き替えずに屋上へと急いだ。
屋上のドアを開けると、屋上にある椅子に座って目を瞑り音楽を聴くあなたの姿。
イヤホンから音漏れするくらいに大きく鳴る音楽は僕が物音を立てようと搔き消すほどだ。
あなたの横に立つと、片方のイヤホンをあなたから奪って自分の耳に掛ける。
またか。
あなたが聴いていたのは"今日は酔えば"という曲。
あなたとの出会いは去年の10月だった。
文化祭の準備をサボってロロと2人屋上に来た時。
君は今日みたいに椅子に座って目を閉じてひたすら音楽を聴いていたんだ。
あなたはカナダから来た子。
4個上の兄がいるんだ。
ジェミニヒョン達コンゴンズと仲の良いマクヒョンの妹。
マクヒョンから見せられていたから写真で見たことはあった。
だけど、話したことはなくて。
でもマクヒョンから度々聞いていた。
"僕の妹がなかなかクラスに馴染めなくてよく屋上にいて、音楽を聴いてるんだ"って。
マクヒョンが言ってた、あなたは辛いことがあると目を瞑って音楽を聴くって。
その時あなたが涙を零したんだ。
きっと辛かったんだろうな。
マクヒョンと違ってなかなか韓国語が上達しなかったあなたは、1人でこうやって全てを抱え込んでいたんだと思うと、
僕は無意識に抱き締めてたんだ。
そこからが、あなたとの、接点。

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