『追憶の片鱗』(_1話)
幼少期のある夏、男児なら誰しもが興味を持つであろうカブトムシ。それをとるために家の近くの山へ来ていた。
近いと言っても家から20分はかかる山で、もう山に入る頃には汗だくになっていた。でも僕は好奇心旺盛な方だったため、暑さなんて苦にせずどんどんと山の深くへと足を運んだのを覚えている_。
どのくらい探しただろうか、立派なカブトムシはそう簡単には見つからず、もう空はすっかり茜色に染まっていた。帰ろう。そう思って下山しようとした、その時だった。
先程まで五月蝿い程に鳴いていた蝉の声が一瞬止んだ。
実際に音が止んだのかは分からない。世界に音が無くなったようなその感覚に子供ながらに恐怖を感じ、咄嗟に後ろを振り返った。
すると先程まで気配もしなかったはずなのに、自分よりも少し年上に見える少年が立ち、じっとこちらを見つめていた。
宝石のように輝く彼の瞳に吸い込まれるように見つめていると、ニコッと笑顔でこちらに近づいて来る。
『こんにちは、こんな所で何してるの?』
優しく言ってきた彼に素直に
「カブトムシ取りに来たんだ!」
って答えたことを覚えている。その言葉を聞くと目を輝かせ『一緒に探してもいいか?』と言ってきたことも、覚えている。
もうその日は遅かったため
「また明日ね!」
という言葉を残しその場を後にした。
次の日、彼と友達になれるかもしれないと明るい気持ちで同じ場所に行くと彼が居た。
『来たぁ!』
昨日と同じく輝いた明るい笑顔で僕に近づくと手をギュッと握られた。
僕も嬉しくなって笑顔で返すと彼も嬉しそうに笑っていた。
『僕の名前は伏見ガク!サクッとガクって呼んでくれよな!』
「僕は、剣持刀也!、、好きに呼んでいいよ」
と自己紹介をした彼は酷く嬉しそうで、まるで初めての友達を手にしたようだった。
それから一緒に遊んで、友達になって。
遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで…?。
__?僕は、、、。今までどうやってガクくんと成長した?あれ、おかしい。記憶はある。共に過ごした日常も、彼と過ごした時間も覚えているはずなのに…。
どこかモヤがかかっているかのような感覚。じゃあ今までこんなことに気が付かなかった?
何故、今こんなことを考えてるんだっけ。
なんで、こんな昔のこと思い出してるんだっけ_?
『刀也さん_¿』
next_











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。