第70話

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2023/09/27 02:20




翔太side




足を引きずりながらずっと歩いていた


足を止めてふと顔を上げると


なんだか見覚えのある景色が見えた


もうそろそろ着くという希望を持ちながら歩いていると


遠くから僅かな声量で


自分の名前を呼んでいる声が聞こえた気がした




「はは笑…幻聴まで聞こえてきた感じ?これ」




そう思っていたが、今度は明確に


自分の名前を呼ばれたのがわかった


もちろんその声は、俺の大好きな人だった


そうわかった瞬間できる限り急いで


向こうからこちらに近づく影の方へ向かった













小野寺side




走っていくと、視界ではっきり彼の姿を捉えた


そしてまた走るスピードが上がる




「翔太!」


翔「あなた!」



ボロボロ立っているのも精一杯そうな彼に


思わず抱きついてしまったが


それでも彼はきちんと受け止めてくれた



「翔太、良かった無事で…」


翔「当たり前だろ笑あなたに会うまでは死ねねぇから…余裕だったわ」


「ほんと?」


翔「……嘘、ほんとはここまで来んの諦めようかなって何回も思った」


「でも来てくれた、ありがとう…」


翔「うん、…てかお前泣くなよ笑」


「ごめん、でもなんか安心して…」


翔「いいよ、好きなだけ泣いて、俺たくさん迷惑かけたから」


翔「あー俺も安心した、こうしてんのすげぇ落ち着く、人って温けぇな」


「……翔太、おかえり」


翔「ん、ただいま」


「翔太も温かいね…」


翔「ほんとか?こんな雪の中歩いてきたのに…てかわざわざこんな薄着で外出てくるとかお前バカじゃん」


「そうだね、翔太の事になると考えるより先に体動いちゃって」


翔「まぁー分からなくもない、俺がここまで来れたのこの雪のおかげ」


「雪?」


翔「俺達が会った日のこと覚えてる?」


「もちろん」


翔「俺達が会った日もこうやって雪降ってたなって思って、そしたら今までのあなたとの思い出沢山出てきて、こんなとこで負けてらんないなって……でも本当は家まで行って俺が迎えに行ってあげたかったのに。なんで来ちゃうんだよーこれじゃ前となんも変わらねぇじゃん笑」


「いいじゃん笑予定より早く会えたよ?」


翔「そうだな笑」


「帰ろ、家。皆待ってるから」


翔「そうするか」


「ねぇ?手繋がない?」


翔「えっ俺の手やばいよ?いいの?」


「へーき!私がこうしたいの」


翔「あっそ笑ならいいや、行こっか」


「うん、行こ」



こうやって手を繋いでるだけで幸せだった


やっと会えたこの手はもう絶対に離さない

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