ーソ連sideー
今日は恋愛相談。若干癪だが、俺と同じくライバル関係の
恋人を持つアメリカ…そして湿度高めの関係をずっと維持
している日本に相談を聞いてもらうことにした。
だが…少し失敗だったかもしれない。
ニュージーランドとかの方が良かったな、これ。
やっぱりな。話にならねぇ。
そりゃそうだろうけどさ。“自由”を愛するアメリカと、
もう見てられないくらいドロドロの関係を築いてる日本と…
俺、コイツらに相談するなんてどうかしてたわ。
よっぽど過去の俺疲れてたんだろうな。
でも聞かないことには始まらねぇよな…。
話を最後まで聞け。日帝に作法習った身だろお前。
身内の湿っぽい話を急にぶっ込んでくるなよ。
その時、日本がふふ、と上品に微笑んだ。
だが、その瞳の奥には光がない。
茶碗を見つめるその視線は、どこか逃げ場を失った
獲物の諦念を孕んでいる。
我が息子は一体何があったんだ。あの子そんな特定の何かに
気合い入れるタイプだっけ。
アメリカが首を傾げ、露わになった項をさする。
その無防備な動作にすら、どこからか向けられている
「重圧」が反応しているようで、
部屋の空気が一瞬だけ澱んだ。
その直後、誰かのスマートフォンが振動する。
たぷたぷと日本の細く白い指がスマホの画面を叩く。
不意に日本が溢した“中国への恐怖”。
それを聞いて、俺は眼帯を弄っていた手をピタリと止めた。
疼く右目で日本を直視した瞬間、
彼の背後に、一瞬だけうごめく巨大な「赤い鎖」の
幻覚が見えた。
「日本、お前……」と言いかけて、言葉を飲み込む。
自分もまた、ナチに対して同じような渇望を
抱いているのではないか?
ナチの肋骨の数や、鼓動の間隔をすべて数えて、
俺のものだと刻印したいと思ったことはないか?
アメリカのカラリとした、心地いい風を孕んだ声で
急速に現実へと意識を戻す。
しかし、その声を聞いた瞬間、
俺はさらなる不協和音を感じた。
アメリカの項。露わになった白い肌に、
ロシアの視線が——ここにはいないはずの息子の、
執拗なまでの「熱」が、焼き印のようにこびり付いている。
アメリカが首を傾げるたび、
その「視えない重圧」が空間を歪めている。
アメリカだけが、自分に向けられた殺意に近いほどの愛情に
気づかず、無防備なまま笑っている。
…そんなもの、で片していいのだろうか。
彼の背後に一瞬だけ見えた赤い鎖には、
決して見逃さないとばかりに見開いた“目”があった。
…俺も、疲れているのかもしれないな。
最近はずっと真面目に仕事をしていたから…。
頭にこびり着きかけた嫌な幻影を、頭を振って追い払う。
ふと、何の気もなしに窓の外を見ると、
向日葵が一輪だけこちらを向いていたような気がした。
…おかしい。今、太陽は別の方角だし、
こっちは東じゃないから成花だとしても辻褄が合わない。
それは植物としての自然な振る舞いではない。
まるで意志を持って、太陽という光を拒絶し、
闇の中に潜む「主」を探しているような。
じゃあ、あの向日葵は…
危ない、ナチスが図書館から借りてきていた
『ひまわりの育て方』の本を盗み見て得た知識が、
嫌なところで変な誤解に繋がる所だった…。
そう言い訳をしなければいけない気がする。
気のせいじゃない。あの向日葵の真ん中、
種が詰まっているはずの部分が、さっき一瞬だけ、
瞬きをした。
その時、着信音。
日本のスマートフォンからだ。
彼のスマホから流れるのは、ただ、不気味なほど静かな
無音。
だが、彼は瞳を虚にしながら立ち上がった。
まるでマリオネットかのような、操られたような、
ぎこちない、でも正確すぎる動き。
季節はずれの牡丹が、日本を見ていたような気がした。
珍しくコイツにしては本当に悪いと思っていそうな顔。
これが杞憂であればいいのだが…。
そう思いながら、アメリカの二つに割れた影を見送った。
家に帰って少しナチから詰め寄られたが
「ただお前の惚気を話していただけさ」と
はぐらかしておいた。
向日葵の残影を夢に見ないか心配になりながら、
俺は浅い眠りにつく。
この時も…いや、夜だからこそ、絶対に眼帯は外さない。
窓の外では、月明かりを浴びた向日葵が一歩も動かずに
俺の寝室を見つめていた。
これってホラーだっけ











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!