自宅に帰り着き、本当に連絡をして良いのか迷ったけど私は思いきって風磨くんにLINEを送ってみた。
すると、すぐに既読になり返事が返ってきた。
思わず叫んでスマホを落としてしまった。
スマホを拾いながらグイッと自分の頬を引っ張ってみる。
スマホを胸に当てベッドに飛び込む。
そして、風磨くんから受け取ったバックステージパスをかざして改めて見てみた。
📱ピピピピピピ…
電話口でキャッキャと無邪気に話す皐月の声を聞いているとなんだか現実に戻されていく感覚に陥った。
たまたま出くわしたファンと話して関係者用のパスをくれて、それは風磨くんにとってはただのファンとの交流であって他意は無い…。
チケットが取れなかったと嘆いた私への彼の優しさだ。
そして私みたいな状況のsecondzの人達はきっと沢山いる。現に一番近い存在の皐月がそうだ。
風磨くんに渡された時も思ったけど“自分だけそんな良い思いするの?”という罪悪感が再び芽生えてきた。
こうして私はある決意を固めた。
~翌日~
目覚めると風磨くんからLINEが届いていた。
私はうっとりとそのLINEを見つめたがパンッと自分で自分の頬に平手打ちした。
そして、ベッドから出ると顔を洗い、いつも通りのメイクを施し、風磨くんに言われた通りの華美じゃない服に袖を通した。
決して自分が“secondz”であることがバレないように。
15:20~
自宅を出て5分で会場周辺に到着。
すごい人だかりに圧倒されつつ、MAPを見ながらひたすら歩を進めた。
会場周辺は昼公演が終わり興奮冷めやらぬ様子で家路に着くファンと夜公演に参戦するファンのみんなで溢れている。
推しのメンカラでお洒落している子たちが可愛くて可愛くて…とにかく羨ましかった。
テラ推しの私は本当だったら水色で身を包んでいたはずだったが…今日は黒い服を着ている。
一人で自嘲気味にボソっと呟くと、いつの間にかほとんど人気のない会場裏に到着していた。
風磨くんのLINEに書いてあったドアを見つけると、周りに誰も居ないことを確認して私はそーっと扉を開けた。
恐る恐る中を覗くと…長身のイケメンが腕を組み、壁にもたれかかって立っていた。
首にはネックストラップを下げ“入館許可証”と印字されているIDケースが吊り下がっている。
そして、そのイケメンは扉が開いたことに気付きバッとこちらを見てきた。
長身スーツイケメン男子は私を中に通すとガチャンとすぐにドアを閉めた。
そりゃそうだ、中に国宝級アイドル達が居るんだもんね。
そう、私は華美に見えないように日頃会社に着ていくようなオフィスカジュアルなスーツを着て来ていた。
私はバッグから取り出すと鈴木さんに両手で差し出した。
鈴木さんは自分がしているのと同じようにケースにパスを入れて首からかけるよう促してくる。
私は鈴木さんに深々と頭を下げると元来た道を急ぎ足で戻った。
後ろから鈴木さんが呼んでくれてるのも分かってたけど振り返ってもう一度だけ会釈をして、その後は脇目も振らず自宅に帰った。
風磨はスマホを確認したがあなたからの返信は何も来ていなかった。
朝、自分が送ったLINEにリアクションが付いているだけ。
風磨は溜め息をつきながらドカッとその場の椅子に腰掛けた。
そう言って風磨が立ち上がったが、それを無言で鈴木が制止した。
風磨は事の経緯を鈴木に話した。
二人だけの秘密でメンバーには話さないことも約束した。
風磨はそう言って本当に反省しているのかしていないのか分からないお辞儀をして楽屋を出ていった。
鈴木は風磨から教えてもらったあなたの連絡先を目を細めて見つめた。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。