パキ…パキッッ、グシャッ……
悪夢から目が覚めると白い部屋の中にいた
酸素が頭にまわらない、胸部をぐっと握りしめる
いつから居たのか、君は慌てて駆け寄ってきた
僕の手をぎゅっと握って、しゃがんでくると
真紅の瞳と目が合った
彼の肩が少し上がるのを見て息を吸う
下がっていって息を吐く
繰り返し10回くらいでやっと呼吸が安定してきた
薄暗い白い部屋に荒い呼吸音だけが響く
君は拳をぎゅっと握りしめた
何も言えなかった、図星だったから
いつもなら手足も震えてもっと長いのに
今日は1分も満たずに落ち着いた
あぁ、でたよまた泣きそうな顔
なんでそんな顔するか未だに理解できない
そう言って点滴を引き抜こうとしたが
察知した彼の手によって止められた
お互いに譲らない、無言の圧をかける
長い長い沈黙、部屋いっぱいに緊張が走っていた
それを破ったのはガラガラとドアを開ける音だった
入ってきたのは老人の医師
起きた時にきっとナースコールを押していたのだろう
そして、その顔には見覚えがあった
4歳の頃、個性が発現したか検査しに来た時の担当だ
今だに覚えている
「諦めた方がいいね」
この言葉も全部、鮮明に
再開の嬉しさなんてものはなく
ただ無心で応えた
それを聞いてドクターはニッコリと微笑んだ
白く丸い錠剤を机に置かれ、もう1つ出てきたのは
真っ赤なカプセルだった
それは昔見たのと同じだった
それは、「個性が出る魔法の薬」と聞いた
あの頃はよく飲んでいた、毎日毎日祈りながら
でも成長していくにつれ
ただ絶望を薄めるための気遣いなのではと思っていた
ドクターはそう言って点滴を抜いた
そして薬を2つ置いて仕事へと戻って行った
僕はその後ろ姿をただぼーっと見つめる
彼が手にとったのは赤いカプセル
あの説明では何なのか全く分からないだろう
答えたくなかった
面倒臭いのもあったけど取り上げられそうだから
でもこの感じだと結果は変わらなそうだ
その一言で察したのか
目を大きく見開いて苦虫を噛み潰したような顔をする
個性が出る可能性が0.01%でもあるなら
子供騙しの薬でも欲しいと思ってしまう
僕はバカなのかもしれない
結局、薬は返して貰えず帰る支度を終えては
荷物を奪われ手を引っ張られる
彼は何を思ってやっているのだろうか
いくらなんでも手を繋ぐほど子供じゃない
恥ずかしいし腹が立つ
しかも彼と繋いでいるということが一番の不満だ
そう言いきった、一切の迷いなく
むしろ握る手に更に力が入った
言ったのは君だからなと思いながら
もう放っておくようにした
昔もこんな風に繋いでいたことを思い出す
あの頃は君も優しくて母もいてヒーローに憧れてて
幸せ…だったなぁ
離さないと言ったのは君だ
だから僕は気づかないフリをした
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!