目黒side
俺も行かせてよ
あれじゃあ阿部ちゃんが君だけのものになっちゃうじゃん
ねぇ佐久間くん
君の望む最後とはかけ離れているよ?
いいの?ここで終わっても
君はいつまでも彼を縛り付けるの?
自分に言い聞かせるように
彼に言い聞かせるように発せられた声
普段の君からは考えられないほど力強くて、でも震えていて
力強くて震えてるなんて矛盾してるって分かってるけど、それ以外の言葉が出てこない
君はそう言ってるけれど俺にはそう見えやしない
君の瞳から溢れる涙がその証
まぁたぶん君は気づいていないんだろうけど
俺の幸せは
君が幸せになること
俺のことはどうでも良い
ただ君が幸せになってくれれば
たとえ俺が幸せにできなかったとしても君が幸せならそれでいいんだ
ねぇ佐久間くん
やっぱ俺には阿部ちゃんを幸せにできる権利はないみたい
ごめん、約束守れそうにないよ
絶対に断らないでというかのような君の言葉は
君の決意を表しているようだった
阿部side
「君は相変わらずクールだね」
「ははっ、僕のことをお忘れなんですね」
「じゃあこうしたらどうですか?」
マスクを外した顔は俺のよく知るあいつに限りなく似ていた
本当に本人のようで本人だった
俺がもう二度と会いたくないあいつに酷似していた
「思い出した?」
「あるよ、多分君が思ってるの当たってる」
「今日も大好きな佐久間くんのために来たんだ」
「今日で何回目?」
「佐久間くんの調子全然よくなんないねー」
「君があのとき気づいていればねー」
「大丈夫?落ち着いてよ」
「君の自業自得なんだからさ、今更そんなこと言ったって遅いよ」
「ねぇ殺し屋の君に選ばせてあげる」
「あっダメだよ?今殺しちゃ」
「彼が頑張ってきたものが全部無下にされちゃうよ?」
「人殺し君に1つ提案してあげようかなと思ってね」
「誰にでも選ぶ権利はある」
「でも幸せになれる権利は誰もが持ってる訳じゃない」
「君も知っている通りね」
「だから君には幸せを選んでもらいたくてね」
「君に2つの選択肢をあげる」
「1つは今ここで僕を見過ごすこと
そうなればさらに事件は起きるだろうね」
「もう1つは今ここで僕を殺すこと
君は僕を殺したくて仕方ないんだろうから今すぐ
にでもこっちを選ぶんでしょ」
「でも世の中そんな甘くない
俺はここに勤める医師で、さらに佐久間くんと、
そこで眠ってる彼女、佐久間くんのお母さんなん
だけどさ、彼女の治療も担当してる」
「彼女の治療はもう10年はやっているのかな」
「賢い君ならこの意味が分かるよね?
彼女は脳死状態でさ、こうやって生きてるだけ
でも大変」
「つまり、僕が死んでしまえば、彼女の治療をできる
人はいなくなってしまう」
「君はどっちの幸せをとる?
同じメンバーの幸せ?それとも世の中の人の幸せ?」
「君に残された幸せは2つだけ
それ以外選ぶ権利なんてない」
「さあ君はどっちを選ぶ?」
「そっか、ありがとね人殺しくん」
俺が異変に気づいていればこんなことにはならなかったのかな
あの時点で気づけるはずだったのに
俺は自分の幸せ以前に他人の幸せさえもわからなくなってきた
──────────────────
(2週間前)
バァッン…ドサッ
手に生ぬるい何かが触れていて
ふと見たその手は…真っ赤に染まっていた
彼の血の出方はあまりにもおかしくて
今のだけでこんなになるなんて思えなかった
つまり彼はずっと前から怪我をしていて
それに気づいていながらも任務をしていたんだ
俺に気づかせないように
もっと早く気づいていれば良かったのにな…
俺はいつだって間違えてしまうから
そしてまた今回も…
あれからまた不可解な事件が立て続けに起こっている
絶対に犯人はあいつだろう
でも俺はあいつを止めることはできない
だから俺はまた1人、また1人と幸せな人を消している
あの時俺は、1人の幸せを選んでしまったから
佐久間はあれからしばらくして目覚め
あいつを捕まえようと躍起になっている
俺は佐久間に一生言えない秘密をつくることにした
君が幸せを必要としている限り俺は嘘をつき続ける
ねぇ佐久間
俺ようやく佐久間の言葉の意味が分かったよ?
悪人を殺して良い人なんて誰もいないけど必要って言葉の意味
そうしないと誰かが幸せになれないからだったんだ
幸せって不幸せ
誰かが幸せなら誰かは不幸になる
それが両方の人だっている
でも
誰が不幸になるかを俺たちが決めなきゃなんないんだ
そして俺は君だけの幸せを選んだんだ
数億人の幸せを犠牲にしてまでも
たとえ俺がもう二度と幸せを見つけられなくなったとしても
君のおかげで俺は初めて1つ幸せを見つけられた気がした
そして俺は初めて'幸せに縋りたい'と本気で思った
俺の幸せは今後もないだろうから
─ end ─
皆さん、はじめまして。
(多分そのような人が多いのかな)
見てくださりありがとうございます。
一応解説しておきますね。
時系列的には、
「幸せって何?(河童ちゃん)」→「幸せの裏側(河童ちゃん)」→「幸せって不幸せ①と②の前半」→「幸せを見つけたい(河童ちゃん)」→「幸せって不幸せ②の最後」
て感じです(いや分かりづら)
私に闇堕ちがかける程の文章力はないので書かずに
めめの「彼が笑えなくなった」って言葉から
彼は怪我で眠っているということにさせていただきました
それから阿部ちゃんを引き止めた人は
実は阿部ちゃんとさっくんの敵であり
さっくんとそのお母さんの治療を担当している医師という設定に。
最初の「知れたら良かったのかな…痛みを」という言葉ですが、これはさっくんと捉えても阿部ちゃんと捉えても良いことにしました。
さっくんは怪我しても痛くないと言っているので、体の痛み
阿部ちゃんは幸せがわからないと言っているので、そこから心が分からないということにして、心の痛み(つまり、苦しみ)を表しています
河童ちゃんの「幸せの裏側」でもそういう描写がありました
あと、今回の小説、一応nmmn小説となっていますがあまり恋愛の要素は書きませんでした
多分めめは阿部ちゃんのことが好きというふうに表現したんですが阿部ちゃんはさっくんに好きというよりは依存の感情を持っているというように表現しました
それから、私のこだわりとして
絶対に好きという言葉を使わないっていうのがあります。(阿部ちゃんを呼び止めた人は使っていますが、本人は使ってない)
だから伝わりづらかったんだと思います。
他にも色々伏線をはったんですが、これ以上解説するのは大変なので、分からないことがあればコメントしてください。
なくてもコメント欲しいですけどね。
以上、ENでしたー。
河童ちゃん(沼から抜け出せない河童様)へ
こうやって好きな作品のAnotherstoryを書けて嬉しかったです
ありがとうございました
(また書きたいな)











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!