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第65話

[50]⏳🍀
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2026/08/31 06:12 更新
その日の夜。



午後十時を少し過ぎた頃。


高専は、昼間の騒ぎが嘘だったかのように静まり返っていた。


廊下を歩く生徒の姿もほとんどなく、窓の外から聞こえてくるのは、夜風に揺れる木々の音ばかり。


昼間、あれだけ騒がしかった場所とは思えないほどだった。




あなたの下の名前は、自室の机に向かっていた。


手元にあるのは、先ほど夜蛾から渡された任務報告書。

明日の早朝までに提出しなければならないため、眠気を堪えながら、最後の一行を書き進めていた。





あなた
……よし

ようやくペンをおく。
あなた
これで終わり……

小さく息を吐き、椅子から立ち上がる。


ぐっと両腕を上へ伸ばすと、凝り固まっていた身体から、ようやく力が抜けていく。



今日は、本当に長い一日だった。


昨日の任務についての説教。


草むしり。


そして、さっきまでの報告書。


あなた
……もう、寝よう


そう呟いて、机の明かりを消そうとした──その時だった。



コン、コン。



静まり返った部屋に、控えめなノックの音が響く。

あなた
……?

こんな時間に誰だろう。


一瞬だけ首を傾げたものの、すぐに扉へ向かう。

あなた
…はい……?



声をかける。


すると、木製の扉を隔てた向こう側から、聞き慣れた気だるげな声が返ってきた。

硝子
硝子
あなたの下の名前、起きてる?
あなた
……あれ、硝子ちゃん?

こんな時間に、硝子ちゃん?

少しだけ不思議に思いながら鍵を開け、扉を引く。
あなた
どうしたの?こんな夜遅くに────

そこまで言って。

あなたの下の名前は、ぴたりと口を閉じた。

扉の前に立っていた硝子は、いつもと変わらないように見えた。


眠そうな目。


気だるげな表情。


けれど。

よく見ると、その口元がほんの少しだけ引きつっている。
あなた
……?
硝子
硝子
ちょっと来て
あなた
……え?

返事をする間もなく、硝子が踵を返す。
あなた
待って、どこに?



硝子
硝子
五条の部屋

あなた
五条くんの部屋……?

その名前を聞いた瞬間。

なんとなく、嫌な予感がした。
あなた
何かあったの?

慌てて部屋を出ながら尋ねる。
あなた
もしかして、怪我したとか……?
硝子
硝子
いや、怪我じゃない。
それよりも、もっと面倒なことになってる
あなた
…………面倒?

その言葉だけでは、何も分からない。


けれど、硝子がわざわざ夜に迎えに来るくらいなのだ。


ただ事ではないのだろう。



もしこの場に七海がいれば、『五条さんが面倒なのは、いつものことでは?』と真顔で冷酷なツッコミをしていたに違いない。

そんな場違いな妄想が頭をよぎる。


硝子
硝子
とりあえず来て。見ればわかる
あなた
……わかった

何が起きているのか分からないまま。


あなたの下の名前は硝子の後を追って、静かな廊下を歩き始めた。




この時のあなたの下の名前は、まだ知らない。



これから向かう五条の部屋で。


本人史上、かなり上位に入るほど面倒な五条悟を見ることになるなど。






そして──



その原因が、自分の「縁談」にあることも。








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