第23話

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2026/01/12 22:47 更新
バスが本部のロータリーに到着すると、僕たちはぞろぞろと降りた。

その瞬間、

モブ兵士
琴沢補佐、司令官がお呼びです
琴沢鈴音
……えぇ。着いたばかりなのに?
モブ兵士
“至急”だそうで

琴沢補佐はため息をつきながら、わたを白羊さんへ預けた。

琴沢鈴音
じゃあ頼む。
すぐ戻るつもりだが……いや、たぶん戻れんな
朝日桜夜
(え?)
琴沢鈴音
匂いがする。地上の雷獣、数が増えすぎてる。
どうせ増援に呼ばれたんだ
白羊
……気をつけて
琴沢鈴音
お前もな


軽く手を上げると、そのまま早足で司令部へ消えていった。

――そして、その日のうちに戻ってくることはなかった。











天霧隊長が私たち新人をまとめて案内してくれた。

第一隊の笹田さんとは違って、口調は静かだけど圧がある。

天霧玲奈
ここが第二隊の専用エリアです。
部屋割りは後ほど配布します。
まずは各班に分け――

ガラッ!!


突然、扉が開いて先輩が飛び出してきた。

モブ兵士
班長!! モニター室、もう一回だけ点検してほしいんすけど!!
天霧玲奈
今説明中です
モブ兵士
あっ……すみませんッす!




霧島ルイ
あ、この人クセ強いタイプだ……
朝日桜夜
第二隊、平和そうに見えて騒がしいな……


その後も、

仕事は早いけど声がデカい先輩

情緒が迷子の先輩

ゲームのやりすぎで目が赤い先輩

天霧隊長に怒られ慣れてる先輩

などなど、濃いメンツが勢揃いしており、
“真面目だけの隊じゃない” ことを思い知らされる。

天霧玲奈
静かにしろ、新人が困惑するだろ!
先輩達
はい隊長!!!(慣れすぎてる)




海坂ナギ
なんか……思ってたのと違う
朝日桜夜
わかる……真面目で“静かな”隊だと思ってた
霧島ルイ
天霧隊長だけ静かで周りうるさいんだな


僕はふと、第一隊の白羊副隊長を思い出す。

(琴沢補佐がいない白羊さん、大丈夫かな……
“わた”抱えてたし……寂しくないのかな)

そんなことを考えていると――

天霧玲奈
次は新人研修。ついてきてください


気を抜く暇もなく動かされていく







 





























その日の夜。

朝日桜夜
琴沢補佐、まだ帰ってこないんだな…
霧島ルイ
白羊副隊長も第一隊でバタバタしてるって噂だし
海坂ナギ
大丈夫かしら、雷獣いっぱいって言ってたし


大丈夫……だよね。
あの実力だし……でも、心配になる



そんな不安を抱えたまま、第二隊での生活が始まっていった。









その日の午後。訓練が終わったばかりのタイミングで、突然館内放送が鳴り響いた。



『全訓練生および新人隊士は至急、中央モニター室へ集合。

地上班からのリアルタイム映像が入ります』

霧島ルイ
…リアルタイム?え、戦闘ってこと?
海坂ナギ
ほんとに!?見れんの!?
朝日桜夜
(うわー……本物怖そう。でも見たい)
僕たちは急いで駆け足でモニター室へ向かった。







部屋はすでに満員で、第一〜第四隊の隊士や、新人たちでぎっしりだった。

白羊副隊長も前の方に立っており、腕を組んでモニターを見つめていた。
“わた”は白羊の腕の中でぐったりしている。(少し不安そう)

天霧玲奈
まもなく、地上班の戦闘が映ります。静かに
笹田時
いやー、また無茶してなきゃいいけどな…あいつ


その「あいつ」が誰かは言われなくても全員が理解していた。






画面が一気に切り替わり、
砂嵐の向こうから姿が映し出される。



ガアアアアアッ!!



空を裂く叫び。
巨大な雷獣が、電気の尾をひきながら雲のすぐ下を旋回していた。

新人たち
うわっ
新人たち
こんなの倒すの……?
その雷獣の周囲を――
ひとつの黒い影が、信じられない速度で飛んでいた。

朝日桜夜
…あれ、もしかして
霧島ルイ
琴沢補佐だ…


その乗り物は、トンボのような透明な羽を高速で震わせ、
足元からは強力なエア噴射で姿勢を保っている。

しかし琴沢は、
まるで体の一部のようにバランスを取り、
雷獣の懐へ滑り込んでいた。

新人たち
…速い…
新人たち
いや速いどころじゃねぇだろ、あれ!!
その瞬間――

琴沢が一撃。

画面の端で、
雷獣の身体が一瞬だけ光の軌跡を引き、
そのまま空中で崩れ落ちた。
霧島ルイ
…勝てねぇ
堀(モブ)
いやいやいや!そんなサラッと倒す?
海坂ナギ
というか乗り物操作うますぎ…
みなみ
なんか……かっこいい……


第一隊で、普段あんなにぐーたらしてるのに…
嘘でしょ……?これが“本気モード”なんだ…
琴沢鈴音
─終了

淡々と司令部に報告すると、乗り物を降りた

その場の空気は完全に静まり返っていた。
天霧玲奈
…以上が、現在の地上戦況です。
新人諸君、これが“実戦”です


白羊は胸の前で“わた”を抱きしめ、小さく息を吐いた。
白羊
……いつも通り
笹田時
うんうん



砂煙がゆっくりと晴れていく。

倒したばかりの雷獣の残骸が、風に吹かれてかすかに揺れた。


鈴音は剣を地面に「トン」と突き立て、
そのまま柄に片手を乗せて、
ヤンキー座りの姿勢で腰を下ろした。


息はほとんど乱れていない。
むしろ「やっと終わったか」というような、
いつもの落ち着いた顔。

琴沢鈴音
……ふぅ。
今日は無駄に数多かったな

肩を軽く回しながら、空を見上げる。
雲の切れ間から差し込む光に、
剣の刃がほんの少しだけきらっと反射した



そこで、ふと視界の端に“黒い箱”が映った。
岩の上に置かれた、天窮機関本部のモニターカメラ。

琴沢鈴音
…ん?


鈴音は立ち上がり、
剣を軽く振って血と汚れを払い、
そのままモニターのレンズに視線を向ける。


数秒だけ静かに、
そして――すっと口元をゆるめて微笑んだ後、ピース(✌)をした


「――終わったよ」
という無言の合図。




その笑みは、
新人たちが見た戦闘の迫力とはまるで違う、
柔らかくて、どこか優しいものだった。


そして鈴音は剣を背に戻し、
無線に一言だけ。

琴沢鈴音
“増援、任務完了”。帰る

次の瞬間、
噴射音と共に乗り物が浮かび、
鈴音の姿は空へ跳んだ。
朝日桜夜
…今の、笑ったよね?
あの琴沢補佐が……?
みなみ
めっちゃ優しい顔してた……
霧島ルイ
は?
いや無理無理無理、あれ絶対幻覚だろ。戦闘直後だぞ?普通もっと荒れてんだろ!?
海坂ナギ
……あれは、
“本物のプロ”ってやつよね



白羊副長は腕を組んだまま、小さく微笑んでいた



笹田はモニターをじーっと見ていて、
ほんの少し、誇らしげ。

笹田時
……はぁ、あいつ。
勝手に行動しやがって……
みなみ
怒ってるんですか?
笹田時
まぁ、ちゃんと帰ってくりゃ文句はねぇよ


なんだかんだ言って一番心配してるんだな……
参謀長
……相変わらず、帰還報告が雑だな
白羊
“微笑み=報告”だと思ってますから……
参謀長
誰だよ、そんなことを教えた奴は
白羊
笹田班長です
笹田時
ギクッ
参謀長
はぁ…
ちゃんと教えろと前言ったよな…
笹田時
いや、あいつが俺のを見て勝手に覚えただけで…
参謀長
じゃあ、お前がしっかりしろ
笹田時
はい…すみません







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