バスが本部のロータリーに到着すると、僕たちはぞろぞろと降りた。
その瞬間、
琴沢補佐はため息をつきながら、わたを白羊さんへ預けた。
軽く手を上げると、そのまま早足で司令部へ消えていった。
――そして、その日のうちに戻ってくることはなかった。
天霧隊長が私たち新人をまとめて案内してくれた。
第一隊の笹田さんとは違って、口調は静かだけど圧がある。
ガラッ!!
突然、扉が開いて先輩が飛び出してきた。
その後も、
仕事は早いけど声がデカい先輩
情緒が迷子の先輩
ゲームのやりすぎで目が赤い先輩
天霧隊長に怒られ慣れてる先輩
などなど、濃いメンツが勢揃いしており、
“真面目だけの隊じゃない” ことを思い知らされる。
僕はふと、第一隊の白羊副隊長を思い出す。
(琴沢補佐がいない白羊さん、大丈夫かな……
“わた”抱えてたし……寂しくないのかな)
そんなことを考えていると――
気を抜く暇もなく動かされていく
その日の夜。
大丈夫……だよね。
あの実力だし……でも、心配になる
そんな不安を抱えたまま、第二隊での生活が始まっていった。
その日の午後。訓練が終わったばかりのタイミングで、突然館内放送が鳴り響いた。
『全訓練生および新人隊士は至急、中央モニター室へ集合。
地上班からのリアルタイム映像が入ります』
僕たちは急いで駆け足でモニター室へ向かった。
部屋はすでに満員で、第一〜第四隊の隊士や、新人たちでぎっしりだった。
白羊副隊長も前の方に立っており、腕を組んでモニターを見つめていた。
“わた”は白羊の腕の中でぐったりしている。(少し不安そう)
その「あいつ」が誰かは言われなくても全員が理解していた。
画面が一気に切り替わり、
砂嵐の向こうから姿が映し出される。
ガアアアアアッ!!
空を裂く叫び。
巨大な雷獣が、電気の尾をひきながら雲のすぐ下を旋回していた。
その雷獣の周囲を――
ひとつの黒い影が、信じられない速度で飛んでいた。
その乗り物は、トンボのような透明な羽を高速で震わせ、
足元からは強力なエア噴射で姿勢を保っている。
しかし琴沢は、
まるで体の一部のようにバランスを取り、
雷獣の懐へ滑り込んでいた。
その瞬間――
琴沢が一撃。
画面の端で、
雷獣の身体が一瞬だけ光の軌跡を引き、
そのまま空中で崩れ落ちた。
第一隊で、普段あんなにぐーたらしてるのに…
嘘でしょ……?これが“本気モード”なんだ…
淡々と司令部に報告すると、乗り物を降りた
その場の空気は完全に静まり返っていた。
白羊は胸の前で“わた”を抱きしめ、小さく息を吐いた。
砂煙がゆっくりと晴れていく。
倒したばかりの雷獣の残骸が、風に吹かれてかすかに揺れた。
鈴音は剣を地面に「トン」と突き立て、
そのまま柄に片手を乗せて、
ヤンキー座りの姿勢で腰を下ろした。
息はほとんど乱れていない。
むしろ「やっと終わったか」というような、
いつもの落ち着いた顔。
肩を軽く回しながら、空を見上げる。
雲の切れ間から差し込む光に、
剣の刃がほんの少しだけきらっと反射した
そこで、ふと視界の端に“黒い箱”が映った。
岩の上に置かれた、天窮機関本部のモニターカメラ。
鈴音は立ち上がり、
剣を軽く振って血と汚れを払い、
そのままモニターのレンズに視線を向ける。
数秒だけ静かに、
そして――すっと口元をゆるめて微笑んだ後、ピース(✌)をした
「――終わったよ」
という無言の合図。
その笑みは、
新人たちが見た戦闘の迫力とはまるで違う、
柔らかくて、どこか優しいものだった。
そして鈴音は剣を背に戻し、
無線に一言だけ。
次の瞬間、
噴射音と共に乗り物が浮かび、
鈴音の姿は空へ跳んだ。
白羊副長は腕を組んだまま、小さく微笑んでいた
笹田はモニターをじーっと見ていて、
ほんの少し、誇らしげ。
なんだかんだ言って一番心配してるんだな……
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!