2人は手をひらひらさせながら、キッチンへと行ってしまった。
父の怒鳴り声で恐る恐る目を向けた。
父は顔にシワが出来るほど凄い形相で私を睨んでいる。
颯太くんの後ろに隠れていた私の元に、父の腕がぬっと伸びてきた。
それを見て恐怖で動けなくなり、呆気なく父に引かれてしまう。
それを遮るように、颯太くんが父の手首を掴んだ。
父の言動が気持ち悪すぎて、私の身体が、心が… 父の全てを否定しているように感じる。
自然と目元に涙が溜まり、視界がボヤボヤとする。
私は颯太くんの背中側の服を掴み、下を向いて身を縮めた。
颯太くんは父の手首を握る手に力を入れたのか、父が思いっきり顔を歪めた。
ドンッ…!!
痛みに悶絶した父は、反対の手で颯太くんを突き飛ばした。
颯太くんは体のバランスを崩し、後方にあった棚に勢いよく腰を打った。
更に、棚の上に置いてあった植木鉢が彼の頭部に落ち、痛そうな音を響かせる。
ゴンッ!!
私は父に反抗し、どうにかして父の手を振り払おうとした。
だが、私の力では成人男性の力には及ばないようで、ピクリとも動かない。
それでも、こんな人のところに帰りたくない、という思いは強いため、力を振り絞って抵抗した。
私が何を言おうと、父は意地でも "ともりは死んだ" と思い込んでいるようだ。
その場から逃げ出したくなった私は、力で及ばないと分かっていても、全力で抗って無理やり父の手を振り払おうとした。
父の言葉で思わず動きを止めた。
次の瞬間、私の視界の中で、父が片手を振り上げたのが見えた。
恐怖に覆われた瞬間













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!