第17話

押入れ
117
2025/12/21 10:01 更新


※くそモブが出ます



その日、翔の家に来たのは翔の友達だった。

モブ
久しぶり〜
サムライ翔
あぁ、久しぶりやな


玄関でそう言い合う二人の横で、KAITOは翔のうしろに、隠れるように立っていた。

知らない人。

声が大きくて、距離が近い。 


KAITOの耳が無意識にびくっと動く。

モブ
お、この子?


友達は屈んで、KAITOの顔を覗き込んだ。

モブ
へぇ〜、これが噂の。
かわいいじゃん


一気に近づく顔に、KAITOは一歩下がる。

KAITO
…えと…


翔はすぐに間に入った。

サムライ翔
かいくん、人見知りやから。
あんま近づかんといて
モブ
いやいや、緊張してるだけでしょw


友達は笑って、軽い調子で手を握る。

モブ
名前は?


KAITOは翔の服の裾をぎゅっと掴んで、小さな声で答える。

KAITO
……KAITO…
モブ
へぇ〜、KAITOね


その名前を、まるで面白いものを見つけたみたいに何度か繰り返す。

モブ
遊ぶの好き?
遊んでやろうか?


KAITOは答えず、ちらっと翔を見る。


翔は小さく頷いた。

サムライ翔
無理せんでええよ


その一言に安心して、KAITOは首を横にふる。

KAITO
…いまは、…いい…


友達は少し意外そうな顔をした後、肩をすくめた。


そして、嫌味ったらしく口を開く。

モブ
おとなしいなぁ…
翔にちゃんと遊ばしてもらってる?
KAITO
も、もらってるもん…
サムライ翔
(…やっぱ友達こいつ、嫌いやなぁ)


翔はその友達をあまり良く思っていなかった。


できることなら、今日だってKAITOに合わせることすらしたくなかったのに。



部屋に入ってからも、友達は何度かKAITOに声をかけた。

モブ
これ、見て〜
モブ
ほら、こっちおいで


でも、その距離感が少しだけ近い。


KAITOは返事をしながらも、少しずつ翔の近くへ寄っていく。


最終的には、翔の膝にちょこんと座った。


友達はそれを見て、冗談めかして笑う。

モブ
翔にべったりだなぁ


KAITOは否定せず、翔の腕に軽く触れる。


翔は自然に、KAITOの頭を撫でた。

サムライ翔
ここにおってええで


その一言で、KAITOの肩から力が抜ける。


友達はその様子を見て、軽く笑った。

モブ
守りすぎじゃね?


翔ははっきり返す。

サムライ翔
守るで。当たり前やろ


その言葉に、KAITOは安心したように翔の顔を見る。


友達はその場では、それ以上もう何も言わなかった。


ただ、その目が一瞬、押し入れの方を見たことには翔もKAITOも気づくことはなかった。



しばらく経ち、不意に翔の携帯が鳴る。

サムライ翔
ごめん、電話や。
ちょっと出てくるな


翔はそう言って立ち上がった。


短い用事のつもりだった。

サムライ翔
すぐ戻るから、ここおってな


KAITOの頭を軽く撫でてから、部屋を出る。

KAITO
…うん


KAITOは素直に頷いた。


でも、翔が部屋を出て行ってから、なんだか部屋の空気が変わったような気がした。


さっきまであった安心が、すっと薄くなる。


友達はソファにもたれかかって、KAITOを見た。

モブ
翔、ほんと過保護だよねぇ


冗談っぽい声。


でもさっきよりも距離が近い。


KAITOは無意識に翔が座っていた場所へ近寄る。

KAITO
…翔、すぐもどる…
モブ
そりゃそーでしょ


友達は軽く笑って、部屋を見回した。

モブ
ここって随分広いよね
モブ
一人だと退屈じゃない?


KAITOは小さく首を振る。

KAITO
…だいじょうぶ


そう答えながらも、耳はぴくぴくと動いていた。


友達はその様子を見て、何か思いついたみたいに口を開く。

モブ
かくれんぼ、できそうだね
KAITO
かくれんぼ…?


KAITOは視線が落ち、胸の奥がざわざわする。

モブ
そ。翔がいない間に、ちょっとだけ


友達はそう言って、押し入れの方を指差した。

モブ
ほら、ここ。
ここなら隠れられそうじゃん?


KAITOは暗くて狭い中を想像して、足が止まる。

KAITO
…こわ、い


友達はそれを聞き、一瞬きょとんとした後、笑いを浮かべる。

モブ
なんだそれw
モブ
すぐ出れるからさー!


その笑い声がさっきよりも大きく聞こえる。

KAITO
(…翔…、はやく…)


その時、廊下から翔の声がかすかに聞こえてきた。


電話はまだ終わっていなかった。



押し入れの前で、KAITOはぴたりと足を止めた。


暗い戸の隙間。


そこからひんやりとした空気が流れてくる気がして、背中がぞわっと震える。

KAITO
……


友達が入るよう促す。

モブ
ほら、入ってみて!
モブ
翔が帰ってきたら探してもらえるから!


KAITOはぎゅっと拳を握った。


喉がぎゅっと詰まって、思ったより小さな声が出る。

KAITO
…いや…


自分でも驚くくらい、か細い声。


でも、確かに言った。


友達は聞き返す。

モブ
ん?なんて?


KAITOは視線を落としたまま、もう一度声を絞り出す。

KAITO
…はいりたく…ない…


耳が伏せて、尻尾も不安そうに揺れる。


理由は説明できない。


ただ、嫌という感覚が胸の中にある。

モブ
大丈夫、大丈夫
モブ
こわくないよー
KAITO
…せまいの、にがて…


小さく、でも確かに続けた拒否。


それでも友達は深刻に受け取らない。

モブ
ちょっとだけだから!
モブ
このくらいへーきへーき!
KAITO
…翔に、…まって…って…


それは、翔を待つという意思表示だった。


友達はため息まじりに言う。

モブ
待ってたら、つまらないでしょ


一歩一歩距離が近くなる。


KAITOは後ずさるように下がる。

KAITO
…いや…


KAITOの声は、もう震えていた。


それでも友達は軽い調子のまま言う。

モブ
はいはい、すぐ出すから


腕を取られて、抵抗する間も無く暗い空間に押し込められる。

KAITO
…や…っ


——パタン。


戸が閉まる音。


その瞬間、KAITOの頭の中が真っ白になる。



狭い。
  

暗い。


逃げ場がない。


息を吸おうとしているのに、上手く吸えない。

KAITO
…っ、…はっ…


呼吸が浅く、早くなる。


胸が苦しくて、どうすればいいのかわからなくなる。

KAITO
…しょ…


声が途切れる。


名前を呼びたいのに、言葉にならない。

KAITO
(…こわ、い…)


頭がくらっとして、手足に力が入らなくなる。


押し入れの中で、KAITOはその場にしゃがみ込んだ。

KAITO
…たす…け…


押し入れの外で、友達は背を向けたまま言う。

モブ
…え、そんななる?


中の様子も、ちゃんと見ようとしない。

モブ
ちょっと怖がらせすぎかもしれないけど…
モブ
ま、そのうち落ち着くでしょ


悪びれる様子はなかった。

その時、廊下から足音が聞こえてきた。

モブ
うわっ!…おかえり
サムライ翔
…かいくん?


返事がない。


嫌な予感がして、慌てて部屋を見回す。


しかし、KAITOの姿はどこにもない。

サムライ翔
かいくん!?
どこ!?返事してや!


その時、押し入れが目に入る。


ためらいなく押し入れの戸を勢いよく開ける。


そこには、小さく丸まって、必死に息をするKAITOがいた。

KAITO
…は…、ひゅ…
サムライ翔
かいくん!


翔はすぐに抱き上げる。

サムライ翔
大丈夫か!?しっかりしぃ!


胸に抱いて、震える背中を一定のリズムで撫でる。

サムライ翔
ゆっくりでいい、吸って…吐いて…


言葉も動きも、全部KAITOのペースに合わせる。

KAITO
はっ…ん…


しばらくして、呼吸が落ち着いてくる。

KAITOは、翔の服をぎゅっと掴んだまま、涙目になって小さく声を出した。

KAITO
…しょ、…こわ…かった…


翔はその言葉を聞いた瞬間、席を外してしまったことを後悔した。

サムライ翔
…ごめんな、もう大丈夫やから
俺がおるから


そう言って翔は、その小さな体を腕に抱いたまま、ゆっくり立ち上がった。


視線がまっすぐ友達に向く。

サムライ翔
…お前、何した


声は低く、静か。


でも、明らかにいつもの翔じゃない。


友達は一瞬たじろいだ後、軽く笑って手を振る。

モブ
いや、ちょっとした冗談だって
モブ
こんなことになるとは——


その言葉が終わる前に、翔が一歩距離を詰めた。

サムライ翔
冗談?


その一言だけで、空気が張り詰める。


翔はKAITOの背中に手を回し、守るように自分の方に近づけた。

サムライ翔
この子、嫌って言ったやろ


友達が目を逸らす。

モブ
…小さかったし、ちゃんと聞こえな——
サムライ翔
聞こえんかったで済む話ちゃう


翔の声がさらに低くなる。

サムライ翔
無理矢理入れたせいで、かいくんは
こうなったんやで?


腕の中で、KAITOはぎゅっと翔の服を掴む。


翔は一瞬視線を落として、KAITOに聞こえないように、でもはっきり言った。

サムライ翔
…震えてんの、見えてへんのか


友達は言い訳を続けようとする。

モブ
そんなつもりじゃ——
サムライ翔
そんなん関係ないわ
サムライ翔
かいくんはな、遊び道具ちゃう
サムライ翔
怖がらせていい存在でもない


友達の顔から、ようやく余裕が消える。

サムライ翔
二度と、かいくんと俺に関わんな
モブ
翔——
サムライ翔
出ていけ


声は荒げていない。


だからこそ、完全な拒絶だった。

サムライ翔
今すぐや


友達は何も言えず、重たい沈黙のまま部屋を出て行った。



扉が閉まった後、翔はしゃがみ込んでKAITOをぎゅっと抱き直す。

サムライ翔
…ん、怖かったな


KAITOは小さく頷く。

KAITO
いやって…いったの…
サムライ翔
うん。ちゃんと断れて、えらいで


KAITOの頭を優しく撫でる。

サムライ翔
悪いんは、全部あっちやからな
KAITO
…あとね…翔がおこってくれて…
…うれしかった…


恥ずかしそうに呟く。


それを聞いて、翔はとても嬉しくなった。

サムライ翔
何があっても、守るからな


その言葉に、KAITOの体から少しずつ力が抜けていった。

わっふる🈂️🔥
普段の倍以上長くなっててわろた

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