残された時間だなんて
一生を悪女として終えるなんて
いやだよ 神様 猶予をちょうだい
ヒロインをずっとみがいてあげてきたんだよ
でも でも
医者には
わたしは他人に見えるんだよね
正直立ち直る事なんて絶対できないと確信してた
ヒロインのためにずっと働いてたんだよ
そうか
裏で働いてたのが悪かったのか
じゃあこれからは表で役立とう!
自棄になってそんなことを考えているうちに、
妄想が膨らんだ
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それはわたしがヒロインの世界
みんなはわたしの方を向いて優しい笑みを浮かべて
わたしをかばってくれるの
わたしが寂しいって言ったら誰かが飛んできて
わたしがいるよっていってくれる世界
世界はわたしのためにあるみたいで
わたしは世界のためにあるみたい
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くっだらない妄想をしてるときに
冷たい冷たい不器用な涙が浮かんできた
だって皮膚がんって対策のしようのないものだと
思ってたから
ホクロみたいなのがあるなーとおもったら
それがメラノーマだなんてさ
医者じゃないんだからさ わかんなかったんだよ
わたしが悪いわけじゃないんだよ
足の裏にできるなんてさ 見つけにくいでしょ
だからさ わたしはさ 悪くないんだよ、絶対
うちは母も皮膚がんでこの世を去ったから継母だ
優しくって本当のお母さんみたいなひと
ずっとつっけんどんにあしらってきたけど今日は
すごく甘えたい気分だった
世の中は不公平だよ
その後はあんまり覚えてなかった
すぐ部屋に入ってお母さんに泣き泣き今日のことを
話した お母さんはすごく真剣に聞いてくれて
話を聞き終わったら何かを言った
あんまり覚えてないけど。
それからすぐ寝ちゃった
お母さんは「ゆっくり寝てね」みたいな事を言って
すぐ部屋を出た すぐに何か音がした
ドアに耳をおしつけて聞いてみると それは声で
お母さんがお父さんに泣きながら話していた
ベッドにごろんと大の字に寝ころぶ
死への恐怖はなかった
わたしはまたこの地によみがえると信じていたから
夕ご飯を食べて 存分に友だちとLINEをして
その日は家族以外誰にも癌のことを話さずに寝た













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!