前の話
一覧へ
次の話

第43話

32:君と選んだ景色
13
2025/08/14 02:57 更新
レイカ
……これで全部、終わったね
舞台挨拶のカーテンコールを終え、
楽屋のソファでぐったりしていたら、
トウガが隣に腰を下ろして、缶のお茶を差し出してくれた。
レイカ
ありがと……
受け取りながら、
私の肩は自然とトウガの肩にもたれかかる。
誰にも見られてない、2人だけのこの場所では、
少しくらい甘えても許される。
トウガ
舞台、バズってるらしいよ。
泣けるって。
“共演者2人が本当に付き合ってる説”も、めちゃくちゃ出てるし。
レイカ
え、バレてない……よね?
トウガ
さあ?
トウガはいたずらっぽく笑った。

前は、こんな表情する人だなんて思ってなかった。
レイカ
それにしても……
私は彼の胸元に顔を埋めるようにして、
ぽつりとこぼす。
レイカ
よく、ちゃんと気持ち伝えてくれたよね。
トウガ、逃げると思ってた。
トウガ
逃げたかったよ。
でも、お前がユウトと楽しそうに笑っててさ……
レイカ
うん
トウガ
心臓が、焼けそうに痛かった。
あぁ、これが“好き”なんだって。
……だから、絶対、失いたくないって思った。
その言葉に、胸の奥がまた熱くなる。
レイカ
今でも信じられない。
私が、トウガと付き合ってるなんて
トウガ
…なら、信じさせてやるよ
彼の腕が、静かに私の肩を抱き寄せる。
トウガ
これから、何度でも
レイカ
……ねえ
トウガ
ん?
レイカ
いつかさ、もしも普通に街歩ける日がきたら、
一緒に旅行とか行きたいな。温泉とか。
トウガ
いいよ。
……いや、てかもう、ロケのついでにでも行こうぜ。
レイカ
はやっ
2人で笑い合う、この時間が愛おしい。

カーテンコールの光よりも、舞台の拍手よりも、
この何気ない一瞬が、何より輝いて見える。
レイカ
——ねえ、トウガ
トウガ
ん?
レイカ
私ね、担降りしたの、ちょっとだけ後悔してる
トウガ
は?
レイカ
だって……
推しじゃなくなった分、“彼氏”として好きになるの、
大変だったんだからね
少しだけ意地悪にそう言うと、
彼は驚いた顔をしてから、
すぐに噛みしめるように笑った。
トウガ
……じゃあ、これから一生、後悔させてやる
レイカ
うん。期待してる
握った手の温度が、何よりも確かであたたかい。

“推し”から、“恋”へ。
そして、恋から“愛”へ。

私たちの物語は、今、ここから始まる。

プリ小説オーディオドラマ