第56話

♦️豹変
1,301
2021/09/20 08:16 更新
その日はやけにお酒くさかった。

彼の所有物となって暫くこの場所に住んでいるけど、こんなに酔っ払ってる彼を見たのは初めて。

いつもこの部屋に帰ると私を求めてくるジンの様子が少し違ったように思う。
you
ねぇ、大丈夫…?
Jn
あなた、今日はこれに酔おうよ
彼がベッドの上で差し出したのはあの花びら。

ガラスケースから取り出して口に挟み私に近づいてくる。


寝る前に渡されることが多いのに今日は何をするつもりなんだろう?

そしてこの花は一体どんな力を持ってるの?

ジンのことだから、このまま眠らせてくれる訳ではないはず。

花びらを咥えたまま至近距離まで来て、私の顔を挟み込んだ。
you
ね、え…これは何?
Jn
何って、僕の花だよ
you
それは知ってる。そうじゃなくて…
これを食べたらどうなるの?
Jn
…それは食べてからのお楽しみ。
喋る為に指で挟んだ花びらを、ジンが再び口に咥えた。
you
待って、なんかこわい…
近付いてくるジンの身体を手で抑えて、地下室以来初めて彼に抵抗をした。
Jn
大丈夫。
you
この花…綺麗だから食べるの勿体ないよ。
今更無意味な会話をして話を逸らそうとしたけど、ジンの顔が段々曇ってくる。

だけどこわいのは本当だし、今日は彼の様子がおかしい気がする。

これで何とかこの行為をかわせれば…
そう思うと、止まらずに口は動き出す。
you
そうだ、今度この花を見てみた…、、
Jn
駄目だっ…!
突然声を荒げた彼に心臓が止まるかと思うほど驚いた。

大きな声を聞いたのも、こんなに焦っているのも初めて見たかもしれない。

真っ赤な顔をして怒る彼の口からひらひらと花びらが舞った。
シーツの上に落ちるのを見ると同時に我に帰る。
you
ご、ごめんなさい…、
ただ…花が気になって……
少し息の荒くなったジンが一度ごくんと唾を飲み込んだ後、ギシッとベッドの音を立てて膝立ちになる。
そのまま私を見下ろしてから顎を掴んだ。
Jn
…奴隷は奴隷らしく、、
僕の言うことだけ聞いてればいいでしょ
久しぶりに聞いた "奴隷" という呼び名。

耳に入ってくると、以前は心地良かったはずが今は痛い。
自分の存在を認識するのがこんなに辛いのは、私自身が変わってしまったからだろうか?


だけど私をそう呼ぶ彼の表情も、すごく苦しそうだった。

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